第4話 豪華な焼き肉

「それじゃあ、正確無比な動きの正体はなんなんだよ」

 エリザベスは、ヒスイに聞いた。

「それがわからないから強いのよ。わかった所で対処のしようがないかも知れないけど」

 ヒスイの答えに、エリザベスはガッカリする。

「ただ、一つだけ仮説は立てられるけどね」

 ヒスイが思いついたように言った。

「なんだよ。その仮説って」

「エルフは本来近眼にならないよね。そのエルフが近眼になったと言う事は何かそこに理由があるはずなのよ」

「その理由はなんなのか、わかるのか?」

「エルフの肉体は、環境に適応して進化する事はあっても、退化することはないの。ただ例外として、ある特定の環境下においては進化であっても、他の環境下では退化の変化があるのね」

「さっぱり意味わからん」

「つまりね。視力以外の、視力の代替となる能力が進化したから、その代償に視力が弱くなったんじゃないかと推測しているの」

 これでも抽象的なのでエリザベスには難しかった。

「望遠鏡と双眼鏡と両方持っていて、遠くを見なければならない場合どうする?」

「そりゃ、望遠鏡か、双眼鏡の気に入った方を使うかな」

「似たような機能を持つ道具が二つあっても一方は不要になるよね。それと同じような事が彼女の目に起きたんじゃないかしら」

 エリザベスはまだ首を傾げている。

「つまり、視力の代わりになる、『物を見る能力』を彼女が持っているんじゃないかしら」

「なるほど」

「その『物を見る能力』のお陰で、あのカウンターを急所に決める技を可能にしているんじゃないかな」

「だからあの女近眼になったのか」

「あくまでも仮説だけどね」

 土木作業員達が休んでいる休憩室に、休憩小屋の管理人がやってくる。

「賄い飯できましたよ~」

 土木作業員達が、「まってました」と言わんばかりに、賄い飯を取りに管理人の元へ集まる。

 エリザベスとヒスイも賄い飯を受け取りに行く。

「お、今日も焼き肉じゃないか。豪華だな。ほぼ毎日焼き肉だけど。赤字にならないのか?」

「その点は、問題ないよ。材料の肉には、元手が掛ってないしねえ」

 管理人がニコニコしながら言った。

「元手が掛っていないってどういうことだよ」

 エリザベスは聞く。

「今日はとっても豪勢だよ。いつもより良い素材の肉が手に入っているから」

 管理人が答える。

「そうだよね。いつもより、良い獲物を手に入れたもんね」

 ヒスイが意味ありげに言う。

「どういう意味だよ。獲物を手に入れたって。ま、まさか……」

 エリザベスは気が付いた。

「その通り、賄い飯の焼き肉は、襲ってきたモンスターのヒュージハムジロウや、お前に重傷を負わせたオシリペンペの肉だ」

「そうだったのかー」

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リングのホスピタル 天主 光司 @AmanusiKouji

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