第3話 強さの秘密

「ところで私からも聞きたい事があるんだけど」

 ヒスイが言った。

「なんだよ。急にあらたまって」

「サクラさんのパンチを喰らってから、どのぐらいで復活できるの」

「そ、そんなのわからないよ」

 エリザベスが答える。

「噂では、何度も殴られているのに、その都度すぐに復活するって聞いたから」

 ヒスイが聞くと、他の土木作業員達も聞きたがる。

「あいつ性悪で凶悪だから、何度も殴られたが、それが何だって言うんだ」

 エリザベスが不思議に思って聞く。

 土木作業員達が『そいつはすげえ』とか 『とんでもない、タフガイだ』とか言って驚いている。

「確かに私も彼女と話をするのは苦手かな」とヒスイは言うと苦笑し「でも、強さは本物よ」と続けて言った。

「でもよ。俺が復活すると『チッ』とか舌打ちしやがるんだぜ。嫌なやつだよ」

「と言う事は、サクラさんが復活を待つぐらいの短時間で復活するのか。本当に復活早いわね」

 ヒスイが妙な感心する。

「う、うれしくねえ。一度あの女を殴ってやりたいんだが、全然当たらないんだ」

 エリザベスがヒスイに訴えかけるように言った。

「彼女のディフェンスは神業的だからね。私は直接戦ったことないからちゃんとわからない。でも、あの攻撃を見切って紙一重で避けるあの技は凄かったわね。私でも攻撃が命中するか自信がないわ」

 ヒスイが言った。

「あの女、ヒスイより強いのか?」

 エリザベスが聞く。

「そうね。多分互角ぐらいじゃないかしら」

 ヒスイが考えながら言った。

「あの巨大ペンギンを剣の一撃で倒せるヒスイと互角なのか?」とエリザベス。

「そうね。彼女は素手のパンチ二発でオシリペンペを昏倒させたからね」

 ヒスイは笑いながら言った。

「あの女をギャフンと言わせたいのに」

「エリザベスには無理よ。私でさえ、彼女の正確無比な動きの謎を解かないと、迂闊に出れないし」

「正確無比な動き?」

 エリザベス以外の土木作業員達も驚きの声を上げる。

「あの正確無比な動きは、最初優れた動体視力を持っていると思ったんだけど、違うのよ。あのメガネ、度が入っているらしいしね」

 土木作業員達は呆気にとられる。意味がわからなかったのだ。

「シェレンにも聞いたが、正真正銘の近眼らしいぞ」

 エリザベスが言った。

「近眼ってなんだ?」

 アルフヘイム生まれ、アルフヘイム育ちのエルフには、『近眼』と言う単語は殆ど耳にする事はない。耳にすることのない単語の意味を知っている者は皆無と言って良い。仕方なくエリザベスが近眼の意味を教える。

「な、なんだって。それってものすごく恐ろしい病気じゃないのか。モノが見えなくなるなんて」

 土木作業員の一人が言った。

「遠くが見えなくなるだけで、それほど怖い病気じゃありませんよ」

「とにかく」とヒスイは、大きな声で注意を引き、話を元に戻す。

「近眼なのに、超人的な動体視力を持っているって言うのも考えづらいでしょ」

 エリザベスはヒスイの説明に同意する。それ以外の土木作業員達は置き去りにされた。

「それじゃあ、正確無比な動きの正体はなんなんだよ」

「それがわからないから強いのよ。わかった所で対処のしようがないかも知れないけど」

 エリザベスはガッカリする。

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