第4話 ヒスイ

 ヒスイと巨大ハムスターの戦いとなった。

 エリザベスは、三本の細い棒、つまり巨大ハムスターの髭にやられた土木作業員と一緒に戦闘区域から逃れる。

 巨大ハムスターは、ヒスイに唾を吐きかける。その唾は強酸で、命中したら酷い火傷を負う。その唾がヒスイに命中したかのように見えたが、唾は通り抜ける。残像だったのだ。

「ヒスイパンチ」

 ヒスイは必殺技名を言いながら巨大ハムスターの顎にパンチを決めた。

 巨大ハムスターはパンチの勢いで、地面を転がる。止まった所で、巨大ハムスターは立ち上がるが、顎の骨が砕け、口から血を垂らす。巨大ハムスターは鳴き声のような唸り声を上げる。

 すると巨大ハムスターはヒスイにお尻を向ける。ヒスイは円を描くように巨大ハムスターの横側に向かって走る。

 巨大ハムスターはお尻から、黒い物を放つ。

「気をつけろヒスイ。ウンコ爆弾だぞ」

 現場監督が叫ぶ。

「う、ウンコ爆弾って……」

 エリザベスは絶句する。

 ウンコ爆弾とは、当たると爆発し、ダメージを与えるだけでなく、ウンコの破片でばばっちくして精神的ダメージも与える最低最悪の攻撃である。

『プー!』

 巨大ハムスターはおならをした。

「クッサー」

 エリザベスは臭さに悶絶する。

「鼻を摘ままないと鼻が曲がるぞ」

 現場監督がエリザベスに言った。

「先に言ってくれー」

 エリザベスの抗議を余所に、巨大ハムスターは今度は股間をヒスイに向ける。

「な、なんて下品なケモノなんだ。レディに向かって」

 エリザベスはオカマである。レディではない。

「ヒスイは女の子だもんなあ」

 現場監督が言った。『レディ』と言う言葉をヒスイに向けられた言葉と誤解した。

「ヒスイって女の子なの?」

 エリザベスは言った。

「じゃあ、だれがレディなんだ」

 現場監督が悩む。

 そんな事を話している間に、巨大ハムスターは映像ならモザイクなしでは放送できない状態になる。

「気をつけろションベンビームの体勢だぞ」

 現場監督が警告する。

 ヒスイは、また巨大ハムスターの横側に向かって走る。

『ジョジョジョジョー!』と言う音を立てながら弧を描くようにビームが飛ぶ。

「お、おい。あれはただのションベンじゃないのか……」

 エリザベスが現場監督に聞く。

「あれがただのばばっちい汚い液体だと思ったら死ぬぞ。アレにあたるとビームに当たったのと同じようなダメージを負う」

 エリザベスは絶句する。

 事実ションベンビームが当たった岩や地面にビームで焼き切られたような跡が残っていた。

「普通のビームと違う所は、命中した所からアンモニア臭が漂うところだけだ」

 現場監督の言葉にエリザベスはコケる。

 横へ回り込もうとするヒスイを、巨大ハムスターはしつこくションベンビームで狙う。しかし、ヒスイは上手く避ける。

 暫く逃げ回っていたが、ヒスイは砂に足を取られ、バランスを崩す。

「あ、あぶない」

 現場監督が叫ぶ。

 そこに巨大ハムスターは、容赦なくションベンビームを撃つ。しかし、ヒスイの手前で地面に着弾した。

 一同が呆気にとられる。

「弾切れだ!」

 エリザベスはコケる。

「ヒスイキーック!」

 ヒスイはビームの発射口に必殺キックを決める。巨大ハムスターは泡を吹いて昏倒した。

 それを見ていた男たちは、顔をしかめる。男にしかわからない痛みが走っているはずだ。

「おーい。警備係。ヒスイにばっか活躍させるなー」

 現場監督が言った。

「それじゃあ、ヒスイは警備係じゃないんですか」

「ヒスイは優秀な土木作業員だから、なんでもできるぞ。だから警備係も兼任しているんだ」

「そ、そうなんですか。見かけはどう見ても子供なのに」

「そりゃそうだろ。肉体年齢では、おそらく子供だしな」

「でも、バカにしちゃいかんぞ。年齢は五十歳なんだから」

「ゲゲッ! 俺よりはるかに年上じゃん」

 エルフは見かけで年齢がわからない良い例である。

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