第3話 巨大ハムスター
エリザベスが新しい現場に慣れてきた。確かに結界の外はとんでもない砂嵐だし、結界が張られれば、または、結界の外で出なければ、いつもの現場とあまり変わらないとエリザベスは思い始めていた。
しかし、異変は突然起こる。
エリザベスが、空になった一輪車を押していると「ギャー」と悲鳴が響く。エリザベスが悲鳴が聞こえた方を見ると、茶色いモコモコしたような物が動いている。
「きょ、巨大なハムスターだー」
エリザベスが驚く。
モコモコしたボディに間抜け顔、ハムスターに似た姿をしている。極端に違うのは、大きさが二メートル近くあると言うことだ。
その巨大ハムスターの足元に悲鳴を上げた土木作業員が細い棒三本に突き刺され倒れていた。
「気をつけろ。そいつは危険だ。見かけに騙されるな」
近くにいた土木作業員が言った。
ボーとした表情で、何も考えていない感じの顔をしている。一見確かに危険に見えない。
「髭を動かし始めた。エリザベス逃げろ」
すると長さ五十センチメートルほどの長さの髭全部がヒクヒク動いていたが、急にすべての毛先がエリザベスに向く。すると鬼○郎の毛針のようにエリザベスへ飛んで行く。
「ギャー。こえ~」
エリザベスは悲鳴を上げながら、上手く避ける。
「いいぞエリザベス。そのまま避けながら逃げろ。戦いは警備係に任せるんだ」
様子を見にやって来た現場監督が言った。
「そんなこと言ったって、避けるのがやっとで逃げらんねえ」
エリザベスは言った。上手く避けているように見えるが、エリザベスにとっては避けるのがやっとだったのだ。
「良く頑張ったわね。ルーキー」
すると背も小さく華奢な子供が現れた。
「あ、あぶないぞ」
エリザベスが子供に言った。
巨大ハムスターが子供に向かって髭を飛ばす。
子供はそのうちの一本を素手で掴むように受け止めると、それを利用して他の髭を弾き飛ばす。髭はそれぞ五十センチほどの長さで弾力があってしなる。ヒスイはその髭を槍投げのように投げる。投げた髭は、巨大ハムスターの肩に突き刺さる。
巨大ハムスターは、「ギャー」と鳴き、髭を手で引き抜き、子供を威嚇する。すると全部飛ばしてなくなった髭がにゅるにゅるとあっと言う間に生えそろう。とんでもない速さで髭が生える。
「ヒスイ。一匹だけと限らないぞ。気をつけろ」
現場監督が子供に言った。子供の名前はヒスイと言う。
「わかっています」
そう言うとヒスイは、巨大ハムスターへ突っ込んでいく。
巨大ハムスターは、エリザベスや倒れている土木作業員から意識が離れ、ヒスイへと向かう。
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