第3話 治療方針
「とにかく、私の治療方針を聞いてくれるかな」
シェレンが機嫌悪いのを隠そうとしない口調で言った。
サクラはその様子を見て黙る。
「わ、わかった」
さすがのエリザベスも気圧された。
「まず、健康状態を検査する。健康である事が確認できたら、遺伝子検査を行う。遺伝子検査結果を元に遺伝子操作方法を決定する」
シェレンはここまで言うと、エリザベスの表情を窺う。
「遺伝子操作って意味をわかっているか?」
シェレンはエリザベスが理解していないと見てとると確認の為に尋ねた。
「トウモロコシを虫に喰われ難くしたり、病気にかかりにくくする奴だろ」
「確かにそれも遺伝子操作だな。だが今の話は、前にも少し話したが、男が男であるように決めている遺伝子がある。それを女が女であるように決める遺伝子と取り換える。それが君に施そうとしている遺伝子操作だ。そして、これ以外に君を女にする方法を私は知らない」
「それでかまわない」
「考えなしに答えないで欲しいな。遺伝子操作に失敗したら、どんな副作用があるのか想像もつかないんだぞ」
シェレンの言葉に、さすがにエリザベスも絶句する。
「副作用もなにも、元から珍獣ですけどね」
サクラがポツリと言った。
「珍獣いうなあ」
エリザベスが怒る。
シェレンがサクラの頭にチョップを入れる。
「真面目な話をしている時に、チャチャを入れるな」
シェレンがサクラをたしなめる。サクラは舌を出す。
「失敗の確率はどの位あるんだ」
エリザベスもちょっと心配になって来て言った。
「正直わからない。前例がないからな」
シェレンは医者なので正直に言った。
「どの位危険かさっぱりわからんな」
エリザベスが言った。
「バカだな。もの凄いリスクがあるってこともわからんのか?」
サクラが言った。
「そ、その位わかるわ」
エリザベスが言った。
しかし、本当の所エリザベスは全く理解できていなかった。
「失敗したら、死んだり、化け物になったりするって事だ。簡単に言うと医学の進歩の為の礎として利用されるって事だよ」
サクラがここまで言うと、エリザベスは以前似たような事を言っていたのを思い出す。
「さすがに死んだり、化け物になったりはない。ただ、体にどのような副作用があるのか、想像もつかないと言う事だ」
シェレンが言った。
「副作用かあ……」
やっとエリザベスにも事の重大さがわかってきた。
「確かに危険が付きものだと言うことはわかった。でも、ノーマルの性転換手術もそれなりにリスクがあるって言われている。今更怖がっていても仕方ないだろう」
エリザベスは大まじめに言った。
「その顔で言われても、不気味だけどな」
サクラがツッコミを入れる。
「うるせえ」
「では、ここに誓約書がある。書かれている内容に同意するならサインしてくれ」
シェレンが誓約書を渡す。すると、エリザベスは読まずにサインを書こうとする。
「チェスト!」
シェレンがエリザベスの脳天にチョップする。
「な、何するんだ」
サクラの暴力は頻繁だが、シェレンは珍しいので驚く。
「誓約書にサインする時は内容をちゃんと読め」
「そ、そうだな」
エリザベスは言われたように読む。そしてサインをする。
「良しわかった。お前の覚悟はわかった。私も全力で取り組もう」
シェレンがそう言うと、資料をエリザベスに渡す。
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