第2話 休日受付

 エリザベスが予約を入れた日。

 エリザベスはリング城病院の受付に行く。患者は一人もおらず、受付にサクラもいない。ベルを鳴らすとすぐにサクラが出てきた。

「あ、ナカムラ・ケンジ」

「ナカムラ・ケンジいうなあ!」

「それじゃあ、珍獣」

「もっと悪いわ」

 サクラは、受付の席に座る。

「さっさと保険証をだせ」

 エリザベスは渡す。

「ナカムラ・ケンジ。問診表を記入しろ」

 サクラはそっけなく言った。

「看護士がそんな態度で良いのか!」

 エリザベスが文句を言う。

 するとサクラがギロリと睨みつける。

「ご、ごめんなさい」

 サクラの殺気にエリザベスが恐怖を感じた。仕方なく問診票を記入し、サクラに渡す。

「珍獣になっちゃう病以外は、至って健康のようだな」

「そんな病気はない」

「無駄口を叩かず診察室へ行け」

「診察室って、どこにあるんだよ」

 サクラは席を立つ。

「ついてこい」

 サクラは病院の奥への通路をサクサク進む。エリザベスは仕方なく、ついて行く。サクラが診察室と書かれた扉の前に立つと自動で開く。

「シェレン先生。珍獣がきました」

「珍獣いうな」

 シェレンは診察室の椅子に座っていた。

「おう。良く来たな」

 そう言うと、シェレンは振り向く。

 診察室は、清潔感のある綺麗な部屋で、机にはパソコンが二台とモニターを始めとするいろんな機材が整然と並んでいる。

「早く女に戻してくれ」

「戻してくれは変だろう。お前は元から男なんだから」

 サクラがツッコミを入れる。

「うるせえ。俺は女だ」

「その言葉遣いや態度からすると、性同一性障害とも思えなかったが、本人がそうだと言うならそうなのだろう」

 シェレンが椅子を指差す。

「とにかく座れ」

「で、女になるので本当に良いのか?」

「ああ、頼む」

「性格の方を男に矯正する治療もあるし、その方が安全だぞ」

「俺は女だ。それは譲れない」

「なるほど、アイデンティティと言いたいのだな」

「この珍獣にそんなこと言ってもわかりませんよ」

「うるせい。俺だってアイアンチャティぐらいわかるわ」

 シェレンとサクラが、意味が理解できなくて固まる。

 サクラがエリザベスをド突く。

「アイデンティティの意味もわからない癖にわめくな」

「う、うるせえ。なんか文句あるか」

「文句ある。頭が悪いくせに賢い振りをするな」

「二人ともジャレるな。こっちは休日出勤で気分が悪いんだ」

 シェレンが面倒そうに言った。

「休日出勤は私も同じです」

「俺だって、平日に休みが取れたらそうしたかったよ」

 エリザベスが愚痴を言った。

「試用期間は、休暇が取れないのはどこでも同じだ」

「地球ではそんなことないぞ」

「アルフヘイムはそういうもんなんだ」

 サクラは譲らない。そしてサクラの言う事は事実であった。

「とにかく、私の治療方針を聞いてくれるかな」

 シェレンが機嫌悪いのを隠そうとしない口調で言った。

 サクラはその様子を見て黙る。

「わ、わかった」

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