第四章 診断

第1話 予約

 最初の三日間は、手続きや新入社員の仕事の進め方や注意事項などを教える座学の講義などを受けさせられた。それからさらに二日間、健康診断や体力測定や簡単な工具の使い方などの講習を受ける。そしたら、もう初心者でも大丈夫な現場へ配属された。そこから先は、現場で仕事を覚えるという事だ。

 そして、エリザベスが、カモシカ建設に就職してから、一週間が過ぎた。

 その間、エリザベスは、会社から与えられた社宅の一室を自宅として使っていた。社宅と言っても、ちょっとしたマンションであり、かなり豪華な造りで一人で住むにはかなり広かった。新入社員はみんな、まずここに住むことになる。

 その社宅のエリザベスの自宅へ、住民コードの通知書と健康保険証が送られてきた。

 早速、エリザベスは休暇をとって病院に行こうとした。それで、現場監督に休暇を申し出ると「試用期間中は休暇を取れないぞ。休みの日に行け」と言われた。

「休みの日じゃ病院も休みじゃないのか?」

 地球では当たり前のことである。

「休みの日でも、予約を取れば診察してくれるぞ。サクラちゃんの知り合いなんだろ?」

「まあ、一応」

「なら大丈夫だろ」

 エリザベスは、昼休みが終わる前に急いで電話する。

「こちらリング城病院です」

 サクラが出た。

「エリザベスだ。平日は行けないので、休日に予約をとりたい」

「症状はどんな状況でしょうか?」

「おまえ知っているだろう」

「ああ、珍獣になっちゃう病ね」

「そんな病気あるか。性同一性傷害だ」

 エリザベスは思わず大声を張り上げる。そのため、工事現場の他のメンバーが一斉にエリザベスに注目する。なんとも痛い状態だ。

「とにかく予約を取りたい」

「それでは、今度の土曜日の午前十時ではいかがでしょうか?」

「ああ、それで良い」

「それでは、お待ちしております。歓迎はしませんけど」

「なんだと!」

 エリザベスは電話を切る。

「あの女ムカつく」

「サクラさん。性格キツいからなあ」

 電話の様子を見ていた現場監督が言った。

「知っているのか?」

「まあ、建設会社で働いていると、危険が付き物だからね。病院にはいろいろ恩がある」

「それで知り合いなのか」

「ルックスはあの通り美人だから、色目を使う男も少なくないんだが、全員返り討ちにあっているよ」

 現場監督は、苦笑交じりに言った。

「あんな性悪な女に色目を使う方がどうかしている」

「おまえも手厳しいな。オカマってみんなそうなのか?」

 エルフしかいないアルフヘイムでは、オカマはエリザベスしか存在しない。それだけで、エリザベスは有名人だった。

「そんなの知らないよ」

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