第7話 アルフヘイム星

 エリザベスは、結局店が休みであることを教えられなかったので、お見舞いがてら、もう一度会いに行こうと思ったが、警察病院の場所が分からなかった。

 仕方なくエリザベスは、オカマ仲間に相談したら、警察に聞けばと言われた。警察署にお店の電話を借りてかけたら、場所を教えてもらえる。

 エリザベスは、警察病院に行くと、昨日病院であった警察官と出会えた。アイマクの居場所を聞くと教えてもらえる。

 病室に着くと、警察官がひとり警備していた。

 警備の警察官は、エリザベスを不審そうな顔で見る。

「この人は、アイマクさんの知り合いだ。大丈夫だ」

 エリザベスは中に入れてもらえる。

「面会は私が監視させてもらいます」

「面倒かけて申し訳ないですね」

 アイマクは警察官に言った。

「仕事ですから」

「ところでなんでラルゴに命を狙われたんだよ」

 エリザベスが聞いた。

「刑事さんにも話したんだけど、僕が研究している人類史のことが関係しているみたいだよ」

 アイマクが言った。

「そんなことで、なんで。あいつはただのショーパブのウェイターだぞ」

「理由はわからないけど、ただ、彼は、君の悩みを聞いてあげるために、僕を利用したんじゃなくて、僕を殺す標的かどうかを判断するために、君の悩みを利用したことだけは確かのようだよ」

 エリザベスはアイマクのセリフを理解できなかった。アイマクはその様子を見て取る。

「まあ、たぶん僕を殺すことを諦めていないと思う」

「お前、そんな恨まれていたんだな」

 エリザベスが言った。

「いや、さっきも言ったけど、恨まれているんじゃなくて、人類史が原因だから」

 アイマクがツッコむ。

「人類史が原因ってどういうことだ」

「たぶん、神官エルフのことが絡んでいると思うんだけど、命が狙われる理由まではわからないね」

 エリザベスは、アイマクの説明に全く納得いかなかったが、これ以上聞いても何も理解できないと理解した。

「一つ聞いて良いかい?」

「なんだよ。難しいことは無理だぞ」

 アイマクは苦笑する。

「ラルゴって、ノーマルかい、それともエルフかい?」

 エリザベスは少し考え込む。

「知らん」

「それが分かれば、ある程度、絞れるんだけどね」

「そもそも、ラルゴとどうやって知り合ったんだよ」

 エリザベスが聞いた。

「立ち食いソバ屋で、ソバ食っていたら向こうから話しかけてきたんだよ。で、世間話をしていたら、人類史を研究していると教えたら、あんたの悩みを聞いてやってくれってね。言われた。一杯奢ってくれるというから相談に乗ることにしたんだけどね」

「それで、ノコノコ良く付いて来たな」

「理由は良く解らないけど、僕の行く場所、行く場所に現れては、奢ってくれたりしたからね」

「そう言うの危険だと思わなかったのですか?」

 刑事が口を挟んだ。

「いやあ。全然思わなかったよ。悪い奴はそう言うのが上手いんだよ」

 アイマクは苦笑する。

「エリザベス。お見舞いありがとうね。あ、あと僕に血を分けてくれたんだってね。ありがとう」

 アイマクが素直にお礼を言ったので、エリザベスは戸惑う。

「俺みたいなオカマの血は嫌だと言ったら殴ってやるところだ」

 アイマクは苦笑すると、傷口に響き唸る。

「君は命の恩人だからね。これでも恩に感じているよ」

「ああ、そうかい……そうだ。今日は、店休みだって言いに来たんだった」

 突然エリザベスが思い出して言った。

「そうだったのか。でも、まだ、宇宙移民局からの返事はなかったよ」

「なんだ、まだかよ」

「残念だったね」


 一週間後

 アイマクは退院になった。

 そして、宇宙移民局からの返事が、来たのは昨晩だった。返事を受けたことを、警備の警察官に話したら、気を利かせてエリザベスに連絡を取ってくれた。そのため、退院を出迎えてくれることになった。

「来てやったぞ」

「わざわざありがとね。あ、それと、アルフヘイム星のリング城に病院があって、そこにシェレンと言うエルフの医者がいることが分かったよ。たぶん、彼女なら、君を性転換できるんじゃないかなぁ」

「本当か」

「今のところはね」

 意味あり気に言った。

「今のところとは、どういう意味だよ」

「アルフヘイム星に行くには、大分お金かかるよ。その費用は準備できるかい?」

「どの位かかるんだ?」

「ちょっと待って」

 アイマクは、スマホを取り出すと検索する。

「ざっと調べたけど、およそ百五十クレジットぐらいかかるみたいだね」

「そ、そんなにかかるのかよ。たけーな」

「それにプラスして、手術費用も掛かるだろうから、簡単じゃないと思うんだけど」

「性転換手術に五百万クレジットかかるらしいから、ずっと貯金してたんだが、さらに百五十クレジット追加かよ」

「まあ、お金では協力できないけど、必要な情報を調べるのは、手伝ってあげるよ」

「なんだよ。やけに親切だな」

「一応、この前、殺されずに済んだのは君のおかげだからね」

「そうなのか? 救急車を呼んだのだって結局お前が自分でやったじゃないか」

 アイマクは笑う。

 自分が声をかけたおかげで、アイマクがラルゴに殺されずに済んだことをエリザベスは理解していなかった。アイマクは無理に教えるのはやめておくことにした。

「あと、性転換手術の費用が、五百万クレジットと言うのも、きっとノーマルの場合の費用でしょ。エルフだとどの位かかるかは、わからないわけだから、すこし多めにお金を貯めた方が良いと思うよ」

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