第6話 輸血
アイマクは救急病院に運ばれた。エリザベスは救急車へ同乗し、病院にまでついて来ていた。
警察への通報は、病院の職員がしてくれた。
警察は、アイマクの治療中にやってきた。どっちにしろアイマクは気絶しているので、本人には質問できない。
エリザベスはアイマクから聞いた通り、ラルゴがアイマクを刺したらしいと警察に話す。しかしながら、エリザベスが直に刺されたところを見たわけではないと聞くと、警察は本人にも確認とると言った。
エリザベスと警察と一緒に治療が終わるのを待っていると、看護婦の一人がやって来て言った。
「どなたかA型の方はいらっしゃらないでしょうか? 今A型の血液型が不足しております」
「俺A型だぞ」
エリザベスが言った。しかし、アイマクはノーマルで、エリザベスはエルフである。
「血液型がわかる書類とかありますか?」
「まったくないな」
一刻も争うので、エリザベスは診察室に連れていかれて、血液型を調べられる。すぐにA型だとわかる。しかし、エルフだという事もすぐにわかる。
「俺がエルフだと問題なのか?」
「いえ。エルフとノーマル間での輸血は可能です。ただ、ノーマルにエルフの血を輸血すると、ノーマルがエルフ化する症状がでる場合があるので」
ノーマルのエルフ化とは、エルフはノーマルにはない、強力な傷の回復力を持っている。そのエルフの血を体内に入れることで、その強力な回復力をノーマルが持ってしまうことがある。それをノーマルのエルフ化と呼ばれていた。
ただ、普通に傷の回復力が強くなるだけなら誰も心配はしない。しかし、そのエルフ化にはいろいろな症状・副作用が付属してくるので、問題なのだ。ノーマルが本当にエルフになってしまうわけではない。
警察官の中にA型が居ないか確認したが、結局いなかった。看護婦はエリザベスを連れて、医師の元へ連れていく。
「しかたないので、エリザベスさんの血を輸血しましょう」
「しかたないって、いやいや輸血するなよ」
エリザベスが抗議する。
「エルフの血を輸血すると、副作用としてエルフ化する場合があるので、本来は本人の同意が必要なんだが、今気を失っているから同意をとれない。とはいえ、輸血をしないと死んでしまう。だから仕方がない」
「そういう意味か」
結局エリザベスの血を輸血して、傷口を塞いで治療は成功した。
治療が終わると、警察が本人から話を聞けるか、医者に質問する。
「命には別条ありませんが、意識がないので無理ですね」
治療をした医者が答えた。
「犯人がまだ命を狙っている可能性があるが、警備はどうなっていますか?」
「私に聞かれても。でも、 悪意を持った殺人鬼から、彼を守るのは無理ですね。ガードマンはいますが、殺人鬼をやっつけるのが仕事じゃありませんから」
「警察病院に移動は可能ですか?」
「難しくはないですよ。普通に救急車で運ぶ分には問題はありませんよ」
警察官は、電話ができる位置まで移動して、いろいろ確認の電話をすると、警察病院への移動が決まった。エリザベスはそこでお役御免になった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます