第5話 殺人鬼

 アイマクはお酒を飲み終えると、店を出ていく。

 ラルゴの奢りだったので、滅茶苦茶飲んで行った。

「エリザベス。アイマクの兄さん。明日か明後日来るって言っていたけど、明日お店お休みだって教えたかい」

 エリザベスの同僚のオカマが言った。

「そう言えば、教えてないな」

「急いで教えてやりなさいよ」

 エリザベスは面倒くさそうにする。

「さっき、アイマクの兄さんの電話番号聞かなかったのかい?」

「電話持っていないのに聞くわけないだろ」

「いつもみたいにお店の電話を使えば良かったのに」

「そう言えば、そんなこと思いもつかなかったよ。しかたない。ラルゴに行ってもらうか」

 しかし、楽屋にはすでにラルゴはいなかった。店内を覗き見るがいないようだ。

「しかたない。俺が行くか」

 エリザベスは店を出ていく。


 アイマクは、店を出ると街をしっかりした足取りで歩く。酔っ払いとは思えないしっかりした足取りだ。

「アイマクさん。あなた酒に強いっすね。見た目全然酔っているように見えないっすよ」

 店からラルゴは、アイマクをつけていた。

「どうしたんだい。いまさら金払えって言われても払わないぞ。奢ってくれるって話だったんだからな。ま、その代わり、アルフヘイムにちゃんと医者がいるかは確認出来たら、エリザベスに教えるから」

「あなたも律儀なかたっすね。あんな不細工なおっさんにさ。あれが性転換しても化け物にしかならないだろ」

 ラルゴがそう言うと、アイマクは怪訝な顔をする。

「そういう言い方はないんじゃないか。ま、君の言い分にも一理あるけどね」

「でも明日は店に来なくてもいいっすよ」

「どうして?」

 ラルゴはすっとアイマクに近づくと、ナイフをアイマクの腹に刺した。

「な、なにをする」

「あ、エリザベスには俺から、伝えておくっす。だから死んでくれ」

 そう言うとラルゴはもう一本、ナイフを取り出すと構える。

「アイマク~」

 エリザベスがアイマクの元にやって来る。

「ち、じゃまが入りやがった」

 アイマクは左ひざをつく。

 ラルゴは逃げ出す。

「お、おい。血が出ているぞ」

 アイマクは、ナイフが刺され傷口から血が出ていた。

「救急車を呼んでくれ」

 アイマクが言った。

「救急車。救急車!」

 エリザベスはその場でアタフタしている。

 アイマクは、エリザベスに頼れないとわかるとスマホを取り出し、自分で電話をする。

「お、俺はどうしたら良い」

 電話をしているアイマクを見てエリザベスが言った。

「僕の側にいてくれるかい。犯人が戻ってきてトドメを刺そうとするかもしれない」

「俺が刺されたらどうするんだよ」

「犯人は、君が僕を呼ぶ声を聴き逃げて行った。二人以上いたら、襲ってこないよ」

「犯人の顔を見たのか?」

「ラルゴだよ」

 エリザベスは驚く。

「なんでラルゴが」

「理由なんか、僕が知るはずもない」

 エリザベスは、アイマクをジッと見る。

「お前、本当に刺されているのか」

「滅茶苦茶死にかけているだろ」

「そうは見えないけどな」

 エリザベスがそう言うと、アイマクはそのタイミングで突然倒れた。

 しばらくすると救急車が来た。

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