第3話 性同一性障害

 エリザベスの怒りのボルテージは大分高まっていた。おそらく、相手がサクラでなければ手が出ているところだ。しかし、それは命の危険を意味したので堪えている。

「わざわざ遠い地球から来たんだ。治療が出来るかどうかだけでも答えてやろう。そうすれば、今後の方針が立つだろ」

 シェレンが助け舟をだすように言った。

「規則違反ですよ。治療ができるかどうかを話すのも立派な治療行為です」

 サクラは抗議する。

「う、うるせえ。かてえこと言うな!」

 エリザベスが抗議する。

「なーんーだーとー」

 サクラの目が真っ赤にギラリと輝く。

 エリザベスがデカイ体を小さくして恐れる。それを見て、シェレンがサクラの頭にチョップを入れる。

「何するんですか!」

 サクラはクルリと振り向きシェレンに抗議する。

「すぐキレるのは止めなさい」

「キレていません。威嚇しているだけです」

 サクラは、しれっと言う。

「本当に質の悪い性格だ」

 エリザベスのセリフにギラリとした目で睨みつける。

「ひー。ごめんさない」

「落ち着きなさい。そうだな。病名を聞いて、ここで治療できそうか、どうか答える程度ならどうだ」

 シェレンが妥協案を出す。

 しかし、サクラはしかめっ面を止めない。

「後で責任問題になっても私は知りませんからね」

 サクラはプイッとそっぽを向く。

「それじゃあ、治療可能かどうか教えてくれるのか」

「だが、病気の種類によっては検査入院が必要な場合があるぞ。そのことは先に言っておく」

 シェレンの言葉に、エリザベスは緊張し、唾を飲み込む。

「わかった。それじゃあ教えてくれ」

 シェレンは全然口を開かない。

「なぜ教えてくれないんだ?」

 エリザベスが聞く。

「アホ。病名を知らずに治せるのか、どうかなんてわかるか」

 エリザベスはコケる。

「すまん。緊張で忘れていた」

「どうでも良いから早く教えろ」

「見た目でわからんか?」

「不気味な物体になっちゃう病」

 サクラがボソリと言った。

「なにー!」

 エリザベスが怒るが、シェレンがなだめる。ケンカになったらサクラが勝つのは目に見えていた。

「とにかくお前の病気を教えろ」

「そ、それは」

「じらすな。さっさと言え。言わないと殴るぞ」

 シェレンの拳が、エリザベスの顔面を殴っていた。

「殴る前に言ってくれ……」

 エリザベスはバタリと倒れた。

「私はそういう態度は嫌いだ」

 シェレンは半分怒りながら言った。

「笑うなよ」

 復活するとエリザベスは言った。

「さっさと言え」

 エリザベスは不気味に恥じらう。

「性同一性障害」

 シェレンとサクラは唖然とする。

「そう言われてみると、その症状と思われる現象は認められるようだ」

 シェレンは、悩むように言った。

「先生。私の認識では、性同一性障害はノーマルだけの病気で、エルフはかからない病気だったはずです」

 サクラがシェレンに確認するように言った。

「確かにその通りだ。そんな症例は初めて聞いた」

 考え込む二人にエリザベスは焦れる。

「どうでもいいから治せるかどうか教えろ」

「安心しろ。治せるから。そんな事より重要な事がある」

 シェレンは考え込みながら言った。

「いくら女性化しても、お前の不細工な顔は変わらないってことだ」

 サクラは容赦ない。

 エリザベスは怒りでワナワナ震える。

「もう勘弁ならん」

 エリザベスが右ストレートを放つ。サクラは紙一重で避け、クロスカウンターで左コークスクリューブローを命中させる。

 エリザベスは窓を突き破って、外まで弾き飛ばされた。

「患者を殺す気か」

 シェレンは呆れて言う。

「大丈夫です。性同一性障害なら、肉体の疾患じゃないから」

「そういう問題じゃないから」

 シェレンは、ツッコミを入れる。

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