選ばれしものは光が見えない 続き

我々はミストロードの手前に来ていた。


それは霧や森林に包まれる道のりだった。


そのミストロードの先にある神殿は川を渡ることでしかたどり着けない。


この煩わしい道の周りには、魔物が良く来るという。



「この場所…いつ来ても、精霊に観られている気がする…試されるのように…」



母が神殿側からの溢れる圧倒感に対して、焦燥感に晒されている



「あの伝承が本当なのであれば、納得です。この儀式はこれまで何千人、何万人もやっていますが、あの方の予兆がない。勇ましき者の誕生…」



「勇者が訪れるという伝承か…」



父の話が打ち消されるかのように、霧の方から覆いかかるような気配を感じていた。



「流石に、信じる気には慣れないな。が、ありえなくはないことだ」



そう言うと、その場にいた騎士や貴族たちの空気感が一気に変わっていた。



昔、人々が発見して以来、ずっとこのような険しい道になっていると言われている。右も左も分からないまま、長い間、深く入ろうとする者がいなかったらしい。



そしてこの道に来たものは当初、迷い込むばかりだった。その危険性を伝えるべく、


「一度霧に迷い込む者、その繁吹とともに消えうる」ということわざまで生まれたという程だ。


そのため、周りには目印となるようなものを置いている。



その特徴を持つミストロードはある特定の冒険者券、騎士などの職柄しか認めていない。なので、戦闘の訓練など行っていない人は必ず騎士や冒険者に付かないと行けない。そして、危害がなるべくないよう、川の道で進むようにという原則である。



ミストロードに進めるための基準と決まりがあり、それは、必ず複数の船で行かなければならない。


理由の一つは、安全のため、二つ目の理由が、複数の赤ん坊たちが神殿で儀式されるようにするためということらしい。



僕はまだこれが厳密に何の儀式かは知らないが、重要であることは間違いない。言葉から察するに、勇ましき者を崇拝する儀式?になるのだろうか。



我々は出航の準備に出かけるのだが、魔物の叫び声微かに響き渡る。


しかし、ラルフェットが気にしていたのはそんなことではない。



「今日は王子様も同行なさるんですよね?大丈夫なんでしょうか?」



ラルフェットはゼアドールの言ったことが引っかかっているかのように、考え込んでいた。



「お前が王子の心配か?はははは!気にするな!


腐っても、王の子供、何かあれば、兵が蹴散らすだろう。まあ、くつろぎたまえよ、ラルフェット」



「左様でございますか。


といわれましても、決して、テルト様のご家族を危険には晒すことは出来ません」



「堅いなお前さん、でもだからこそ頼れるというものか。ただ…約束してくれ、何があっても自分をそこまで追い込むな。俺は何度もそういう奴見てきたが、その人達は、深く暗いところにいた…」



ラルフェットは思いつめた表情で下を見る。彼の決意に迷いはないが、そこには何となく冷静とはかけ離れたような冷たい様子が伺えた。彼は一体何をもってそういう表情をしているのだろうか?



「は、以後気を付けます…」



すると、後ろから、大勢の兵が歩み寄ったのが見えた。


そこには、半端な態度の金髪の若い人が立っていた。


何かの行事のように、兵は敬礼とともに、列を整え、その金髪の人が道を通れるように並んでいる。



「これはこれは、テルト様、いえ伯爵。お会い出来て光栄です。と言っても、何年か前にお会いしているんでしたっけ?」



彼は自信満々に父を見つめていた。その見た目は今まで見た中で、地位が高そうな人物だった。ただの血筋で上がってきたような人ではなく、その自信は自分自身のものから湧き出るようなイメージだった。



父は普段の振る舞いしながら、冷静に一礼をした。



「お久しぶりです殿下、すっかりと大きくなられましたな。ご立派です。王様のご様子はどうですか?」



「父上でしたら、相変わらずです。今演説しているところでしょう。自分の子どもがの大事な時に…、全くしょうがないお方です」



「そうでしたか、元気で何よりです。それに、きっと第二王子もあなたのようにご立派に育てることでしょう」



「そうだと良いですがねぇ…」



王子の少し後ろではたくさんの船が並んでいる。そしてその中には赤ん坊もたくさんいて、その泣き声がこのミストロードの入口で少しだけ響いている。



王子は霧がかる様子をみながら、そして彼の耳で響くなきごえのもあってか辛気臭そうに景色を見ている。



「しかし、なんと物騒な場所だな。目障りな霧と魔物しかいない上、神秘的なような景色はもはや存在せぬ。果たして神殿は本当に大したものなのかねぇ?」



父は深く考え込んで、疑問に思っていることを露にしているようだった。



「いえ、そう判断するのもまだ早いでしょう。それより、出発の準備が終わるようなので、いきましょうか?」



王子は赤ん坊の様子を見て、また乗り気のない反応をする



「ではじっくりそうさせてもらおう、ではまた神殿でよろしく頼みます、テルト伯爵」



そして王子に駆けつけてきたのはある騎士だった。



「セルウィン殿、準備が整っています」



「うむ、丁度いい。今行くところだ」



その騎士はなんと赤褐色の髪をした女騎士だった。その麗しい姿を見て、惹かれることしかできなかった。



___いや…それもそうだろう!ここに来て、男の夢を堪能できるのも僕は運が良い!


その綺麗な髪にこの鎧、尊い…とても良いコンビネーションだ。そして、彼女の美脚を強調するかのように、より男の心燃えさせてくれるその絶対領域。正に素晴らしい。後は騎士というギャップと彼女のその見た目に心奪われること間違いなし!是非とも僕のコレクションに欲しい…



って僕は一体、何を変なこと言っているんだ!こんな不親切なことを考えてはならない。気を取り戻そう…



「うん?」



そして、何気なく彼女を見つめていたら、その騎士も僕の方に視線を寄せた。彼女はほっとすることもなく、ただ、赤ん坊の顔を見て、頭を傾げた。きっと赤ん坊がじっと見してくるのが初めてなのだろう。


___こんな風に簡単に笑顔を見せてくれないところにも一ポイントだ。



ってまた変なことを考えてしまった…今のはただの惑わせだ!



「何をしている、さっさと行くぞ」



「は、ただいま」



そしてその女騎士は王子とともに去っていった。


あの王子どうやら僕が生まれる前から父と長い付き合いのようだ。そして、その運命もまたこれからもあるのだろう。第一印象としては、思ったよりも短気ではなくて、何というか…ただ性格が悪いと直感的に感じた。そうであったとしても、その第一印象のみならずでは判断するのは間違っているのではないかと心の中で思う。これからきっと、彼の本性が見えてくるかもしれない。



こうして、我々はミストロードに出発するのであった。





ミストロードに行く最中、我々は険しいとまで言われるミストロードに導かれるように道を進んだ。


いざ霧の中に入ると、とても不思議な気分だ。ここにある霧が、どうやっても解けそうにないと感じる。それでもこの霧の中に進みたいと思える何かに近づきつつある、そんな気がしてしまう。



すると、身の覚えのない記憶が映像に浮かびあがる。



___その日は霧が濃くて、走っている女がいた、そして、彼女は僕を抱え込んである場所に急いでいる。その周りには、…車という乗り物があって、その女の足音、エンジンの音と激しい雨の音だけが響き渡っていた。



ここまでしか記憶が見せてくれた…これは明らかに、夢とは違う映像だった。でも、僕はこのような所に一度も行ったことがないはずなのに。いや、多分勘違いだ。きっと何かの白昼夢かなんかだろう。



「ここで残り半分で神殿に着くことでしょう」



ラルフェットが確認していたのはろうそくの微かな印だった。


その印はある特定の騎士などが把握している。きっと少数に知られるような仕組みを作るためにやっているのだろう。ということは、ラルフェットはここを何度も通ったことになる。一体どんな試練を乗り越えればこんなことが出来るのだろうか?



ラルフェットがそう言った少し後に、耳が響いた。



「…………」



僕の気のせいかどうかは分からないが、それは、魔物の唸り声とは違う、直接囁くような声だった。


しヵし、周りをふと見てみると誰も気づいていないようだ。でも泣いている赤ん坊たちはこの声を聴いて泣いているのかもしれないが。



「そうか、しかし…こいつもなかなか泣かないなぁ。普通の子なら泣いてもおかしくはないぞ」



「それは当然です。セイレンはあなたのようにお強いのですから。それに泣かない赤ん坊も時々見ますわ。ね♪」



母は笑み浮かべて僕を揺らしながら言った。そして、赤ちゃん言葉で僕にかまっている。こればかりは慣れない…



「はは、照れるなぁ。でもそうか…強い子どもなのかもな」



父は感慨深いような表情をしながら思い詰めた。



「それより、最近の魔物の様子、妙におとなしくはないか?」



「確かにそうですね。でも今日に限っては好都合とも言えるかと思いますが…」



父はラルフェットの言葉に安心は出来ずにいた。魔物の活動が活発ではないという理由で不安がのこっているようだ。



「うん…だがどうしても気に掛かるのだ」



「案の定、もし身の危険があれば、この道には結界が張ってあります。そして、魔物だけであれば問題はないかと…」



「まあ、確かにそうだ。でも万が一の場合もあるだろう。気は抜けないか」



「そうですね。必ずセイレン様もご無事に儀式を終えることに励みます」



父は思わずはぁっと声に出した。そして、ラルフェットは申し訳なさそうにその反応に応える。


その表情に気づいた母は父に指摘をする。



「ほーら、ラルフェットが困っているでしょ?」



「ああ、すまん。安心したまえ、君の言っていることは信じている。…ただこの世の中が変わり続けているように感じるんだ。だから少しでも、疑問が浮かび上がるとだな…まあいい、忘れてくれ」



そう父が言うと、遠くから振動が聞こえてくる。そして、その音が2回、3回また聞こえると、今度は船も揺れていた。そして、その勢いに釣られるかのように、ろうそくの火も風を吹いていた。



「これは一体何事?」



母は僕を守るように固く体に寄せた。



「テルト様の読みが当たったようです、下がっていてください!」



ラルフェットが言ったその時、その大きな魔物は川の道の前に現れた。


彼は、船から素早く右の方に飛び降りて、ろうそくに沿って魔物に向かって走っていた。


そして、彼に続き、先ほど見かけた女騎士も後ろから左へと同じように進んだ。



それに気づいたラルフェットは彼女に合わせて攻撃する合図を出した。彼女も、それに気づいた。



二人の騎士が魔物の近くへ行くと、攻撃を仕掛ける。二人は、反対側に向かって魔物に飛んで行った。


一撃目で、魔物が声を荒げる。そして、魔物のほうから攻撃がかかるが、二人の騎士は見事にかわしながら、大きい隙を探して、また魔物に会心の一撃を狙った。



そして、船の安全も確保した状態で魔物を川の道から遠ざけるかのように、魔物に立ち向かう。



ここまでは作戦がうまくいっている。魔物を挑発し、そして川のそとにおびき出す。多分経験の豊富の者にしかできない技だ。



魔物を切りかかろうとするが、案外堅い。でも傷を負わせる程度までは追い込むことができた。



すると、魔物は怒りのあまり魔法らしきものを発動しようとしたその時、



「タイミングを合わせるぞ」



二人は攻撃を仕掛けて仕留めた。



魔物は大きな声を出して倒れた。


そして、ラルフェットたちは船の所に戻った。



「魔物は退治しました」



父はラルフェットにほっとした顔をした。



「礼を言う。ありがとう」



「いえ、当然のことをしたまでです」



ラルフェットは異変に気付いたのか、魔物の方向に向かって違和感を覚えるような表情をした。


しかし、両親に諭されないように平然を装った。





魔物を退治した少し後に、神殿の様子を見ることができた。



「もうそろそろ、着くようですね」



そしてミストロードの終点に到着すると、その神殿は少しずつ姿を現した。幾千年まっていたかのように。



「ここが、プロスターティス神殿です」



プロスターティス神殿、その神殿の姿は長い年月をかけて創ったような建物だった。周りには神と女神の像、並んでいる。


その影響は圧倒感にあふれ、でもどこか見守っている。そのような建物のように感じた。まるで人の意思を全て表したような姿だった。包み隠さず人間の本能を表現してくれるような集合体と僕は受けた。


その建物から感じる力は魂がそこで眠っているのではないかと疑うような存在感があるのも拭えない。おそらく、その一部が精霊の力と呼ばれるものだろう。



父はその神殿の様子を見て、しばらく眺めた。



「噂には聞いていたが…」



父はその先何も言えずただぼうっとしていた。



後ろから王子たちも到着し、先頭から順に入っていった。


我々は神殿から降りると、神父様とその付き添いがそこで待っていた。



「良くおこしになりました。さて儀式の準備をしましょうか」



すると、神父様神殿の中を道案内をして説明をしていた。



「この儀式は怪しむ者もたくさんいるかと思いますが、決してそのようなことはありません。


この儀式はこの世に生まれし者の道しるべを示すほかありません。最初から家系の繋がり、魔力鑑定、そしてその者が示す力を示してくれる儀式です。そのほかありません」



王子が気にしていたあまり、口に出した。



「力を示してくれるというのなら、我が弟も才能があれば分かるということだな」



「ええ、素質の話というだけですがね、最初は少なくても伸びる子もいるのは事実です。ちなみに、私は殿下の儀式も忘れたことはありませんよ」



王子は何度も聞いているかのように、呆れる表情をした。



「お世辞は良い、具体的にどうするのだ?」



「まずは複数の赤ん坊を同じ部屋に入れて儀式を始めます。そして、この真ん中にある4つの天秤が傾く時、儀式は終わります」



「なぜ複数なのだ?儀式なら一人ずつで良いではないか?」



「まあ、一人ずつやっていったら時間もありますし、そして、結果を分かる者にしかしないようにするためです」



「なるほど、大体は理解した、どうやって分けるのだ?」



「まずは皆さんの赤ん坊ここに乗せてください」



そしたら、付き添いの人たちは他の貴族も自分の子どもを石の台みたいなものに乗せた。


そうすると、上から光るものが降ってきている。感覚的にはほんのりしていて、包まれるような温もりを感じた。



僕は少しだけ精霊の声というのだろうか?を何となく聞くことができた。でも何を言っているのかはさっぱりだ。でも、何か始まる。そんな予感がする。



「おお、なるほど…この二人はどうやら魔力に恵まれているようですね…」



「やった!セイレンはやっぱりパワーの溢れる子でございますね!」



「わが弟もどうやら力に漲っているようだな」



セルウィンは当然のように笑みを浮かべる。



「今回は5人…いや10人も並外れた魔力を持っているようです…こんなの見たことありません」



次は別の部屋に分けて、それをしっかりと図る用意をしていた。



「ここからは本格的な鑑定となりますので、今度はこの部屋で第二の鑑定を始めます…」



すると、その部屋は真ん中に器らしきものがおいてある。きっとこの中にどのような力を持っているのかが知ることが出来る。



「では始めます」



神父はあまりの予想外の結果に慌てている様子だった。これは本当に予想外なことなのかは実感することは出来ないが、自分が少しでも可能性があるのは嬉しいのは確かだ。しかし、王子も僕のように高い魔力を持っているというのなら、きっと彼がこの国、の重要な人物になるのだろう。



部屋の壁に魔力らしき流れを中心に集まり、その集まった気力、エネルギーというものは


下から上へと流れていった。でもこれは自分から来る魔力というよりかは、もっと偉大な力から来ているとしか言うことができない。



すると、僕はすぐさま異変を感じだ。周りが消えて、そしてまた現れるような映像が浮かびあがった。完全に乱れて、自分の存在が複数の場所に散りばめられるかのように感じた。



これは一体…



その変な状況がまた続くかと思いきや、また視界が自然に戻った。そして下からとても大きな振動を感じ、もの凄いエネルギーを感じた。そうすると、一瞬時が止まるかのように、何かが通り過ぎるのを感じた。その姿ははっきりとは見えなかった。



段々と神殿が何かを伝えるように共鳴する。凄いとしか言えない…


その魔力というものの言語が僕に伝わってくる。



またあの声がしてきた。



「……………」



この声、やはり神殿から来ていたのか?この計り知れない存在いったい何なのだ?


下から霧も浮かびあがっている。その霧は自分を表すかのように表れた。でもこれはミストロードのような濃い霧ではなく、風のような感覚に近い。



その上、



そして、その様子を見て、神父が声を荒げた。



「こ、これは…まさかそんなはずが…」



「どうしたんです?神父」



「伝承通りの…勇ましき者の現れ、本物の話だったというのか!?」



セルウィンは少し小声で笑い、そして喜びを抑えきれずに笑った。



「これは、素晴らしい。この力、きっと我が弟に違いない!我が一族に勇者が誕生するぞ!」



両親はそれを見て、人生に一度の瞬間かのようにこの時を眺めていた。



そして、精霊などが集まってきて部屋中を照らしていた。こんな凄い儀式だとは知らなかった。やはり僕は凄い場所にいることを自覚した。魔物の存在のみならず、精霊とか魔力とか見たことのないものばかりだ。真ん中に膨大なエネルギー源は、希望を示すかのように暖かい光になって、消えた。


そのあとに、精霊もゆっくりと消えていった。



「私たちとんでもない物語の始まりを目撃したのかもしれない…なんということだ」



そして儀式はこうして終えた。





>一方、ミストロードでは…



セイレンたちの気づいていないところで、ミストロードに集まる賊と傭兵が潜伏している。



「こいつはすげぇ、やはり情報通りだったか…」



彼らは儀式の様子を観察していた。膨大なエネルギーが外まで流れているのを確認した瞬間に賊たちは確信する。



「へへ、こいつは儲かりそうだぜ。あの王族らに持っていけば、億万長者になること間違いなしだ!」



「じゃあ、野郎ども、仕掛ける準備をしろ。勇者を捕まえに行くぞ」



その賊たちは快感と欲望を満たすためにプロスターティス神殿で集まっていた。


そして、何が一番の問題かというと、儀式を受けた赤ん坊目当ての者が多数いるんだとか。


その理由はまだ明らかにはなっていない。そして、いつの時代から始まったのかそれも分からない。ただ、この儀式の噂はセイレンたちがいる地方で広がっているのが分かっていた。


この地方の各国々から「魔力に満ちている赤ん坊を捕らえよ」という指示が出されている。



「少し黙りやがれ…耳障りだ。やるなら確実に捕らえる、それが一番スマートなんだよ」



ある傭兵は仕切るように言う。



「てんめぇ!なんか文句でもあん_」



その傭兵は武器を賊の喉の前に止める



「今死にたくないなら黙っておくことだ」



賊は舌打ちをして、気を取り直す



「まあいい、この仕事の後になったら、お前らともどうせおさらばするんだ。ぜってぇ捕まえてやるぜ!」



「俺は王子の子を捕る、横取りする奴がいたら俺は容赦なく切り捨てるからな。契約ではお前らはいないことになっている」



「へっ、どのみち赤ん坊を捕まえたら、同じもんだろうが」



葉柄の仲間がそのリーダらしき人物に告げる。



「来ているようだ、旦那」



「ああ、出てきたら、徹底的に仕掛けるぞ。赤ん坊と王子以外は全員皆殺しだ!」



そして、神殿から動きがあるのを確認し、賊と傭兵たちは攻撃をする準備をしていた。


下では船を帰り道に用意することに





こうして儀式は終え、我々はプロスターティス神殿を出ることになった。


僕が分かったのは、恐らくあの部屋にいた10人の中から勇者と呼べるような存在がいるということだ。


しかし、それが自分という実感がない理由から、概ね王子のことだろう。



正直、勇者になるということがどれだけすごいかは自分は分からないし、その責任を終えるとも思えない…



「船の準備ができました。いつでも出られます」



「分かった、では帰り道も頼むぞ」



そして、しばらく船が進んでいると、ラルフェットは先ほどの違和感また察した。



「実はお二人にはまだ話していませんが、嫌な予感がします…念のため、この中に待っていてください」



「やはり今日に限って、魔物は恐ろしいということか」



「いや、それとは違うと思います…」



父は困った顔をしていた。その時だった。



「出撃だ!」



その声が出た瞬間無数の魔法と矢がこの船の方に向かっていった。その後に続き、その人たちは現れた。一体何事だ?こんな場所で仕掛けるなんて、頭おかしいんじゃないか?


賊らしき輩が儀式が終わるのを待ち、狙っていたというのか?


一気に魔法のここにやってくる!


と思った時、幸い母の魔法でそれははじかれた。



「何者が来ても屈しません。ね、あなた」



父は何かを気づいたように小声で笑った。



「ああ、その通りだ。後は頼んだぞ」



父は剣を出し、賊と傭兵たちを追っ払うことを覚悟した。


そして母は、船の防御に徹していた。その遠距離攻撃の数のあまりそうせざる終えなかった。



そしてラルフェットはうなづいて賊たちに向かって切りかかってきた。



「なんだこいつ、うわぁ!」



見事に賊たちを倒していくラルフェットだったが、今度は傭兵が彼の足止めする役割をしていた。


その傭兵はラルフェットが逃げないように剣と剣を合わせて、密着状態になっていた。



「ほう、強い奴らがいるとは知っていたが、こんなものがいたとは…俺らの仲間にならないか」



「こんな霧のある場所で勧誘か?どの道お断りだ。何が目的だ!」



「さあ、なんでしょうな。でも船にいなくてよかったのか?」



「しまっ!」



後ろを見たラルフェットは彼らの狙いが分かっていた。僕たちの方に賊たちはやってきて、攻撃を仕掛けようとした。



そして、ラルフェットがよそ見をしていたら、その傭兵は急所を狙って、彼が誤差で弾いた。



「まあ、楽しもうや、兄ちゃん」



ラルフェットはかなりの腕前だが、この傭兵もなかなか手強そうだ。一騎打ちをするなら、きっとラルフェットは勝てると信じているが、あの傭兵はそれを把握した上でただ、攻撃して逃げるの繰り返し…そのため、ラルフェットは良い攻撃を仕掛けることが出来ない。



「なかなかの手練れということは、元騎士か、冒険家か?」



その傭兵は大笑いした



「どちらも違うな、俺は傭兵として育ち、傭兵として死ぬのみ!」



というかラルフェルトがあの傭兵に足止めされているということは、こちら奴らが来る!



どうする?またこちらに魔法が来ていたが、流石に押しが強すぎのか母は限界だった。父も手助けをしていたが、防衛に徹することしか出来なかったために、もうすぐ押されてしまう。



別に僕の力では何もできないし、そもそも動くこともできない…



あの女騎士も向こうの方で苦戦しているようだ。


王子はどうなっている?もしかしたら彼も戦っているかもしれない。


でもこの数、彼に耐えられるのだろか?



それとも、騎士たちは何度も彼を非難させようとしているのか?



そう思っていた時、両親は限界に達していた。


船が狙われる!



魔力を一気に込めた賊の攻撃が我々の船を直撃した。



感覚的に時間がゆっくりなったかのように流れる。これはあの、走馬灯というやつなのか?


もう…これで終わりなのか?



まだ人生で6ヶ月しか立っていない…こんなはずでは!



___こんなときなのに何か記憶らしき映像が流れる。



あの霧深い日の続きだった。僕はこのような姿で、女の人に抱えられて急ぐようにどこかに行っている。でもなぜなんだ?その後ろに要るのは追いかけてくる怪しい連中、そして僕と一緒にいる女の人は僕を安全な所に連れている。



そして、安全な場所に行った時、ある男が気づいた。



「大丈夫か!一体どうしたんだ?」



そう男は言って、自分の家に案内をしていた。



そして、また記憶が飛び、今度は僕が…テレビなどの前を見ていて、さっきの男と女は幸せそうに僕を見ていた。顔はおぼえていない…実際こんな記憶があったことさえ、分からない。でもこうした記憶を見ているのであれば幸せだったのかな…___



いや…それが問題ではない!


僕の両親は、僕たちは一体どうなってしまうんだ!



そう心の中で叫んだ時、その人たちはやって来た。



「マグマイトフレーム!」



その攻撃が来た瞬間に6人の戦士がやってきた。一人ずつ力が違って、全員が輝くように見えた。


そして、船が壊れた瞬間にそのうちの一人が僕たちを拾った。



「え、英雄が来たぞ、アイアンナイツご一考だ!」



騎士と貴族たちがそれを聞いて喜びのあまりに叫んだ。


ここで戦況が一気に変わり、僕たちは救われた。



「なんだと!?聞いてないぞ!」



ラルフェットがそれを聞いた瞬間に、傭兵が驚いた瞬間に畳み掛ける。


彼は傭兵の剣を弾き飛ばし、切りかかった。でも腕に深い傷を負わす程度しか出来なかった。



「ぐっ!もうこれなら話はなしだ、消えるしかねぇ!あばよ兄ちゃん!」



「待て!」



ラルフェットは霧の中で逃げる傭兵を追おうとしたが、深追いが出来ずにいた。彼は自分の責務をしっかりと果たすことにすぐに移行した。



付け加えて他の船が攻められていた状況であったが、その戦士たちのおかげで彼らが立ち直った。



「我らが来たからにはもう安心だ!」



その戦士は賊を一気に倒し、今まで苦労していた分が一気に軽くなったようだった。


あの言葉に押されるかのように、賊と傭兵は撤退していく。



「撤退だ!撤退だ!」



そして、戦いが終わった。





「アイアンナイツご一考様方、我々を守って頂き、本当にありがとうございます!」



貴族と騎士たちが頭を下げて喜んでいた。



「俺からも礼を言う、感謝する」



父も彼らに頭を下げた。


アイアンナイツは彼らの行いに困っていたが、しばらくすると彼らミストロードから出る案内をしていた。



全くすごい一日だった…こんな体験するなんて思いもしなかった。それにこのアイアンナイツという人たち、なんて力だ。きっと彼らが我らの国を救ってくれるのだろう。そんな気がする。



ミストロードから出た時、


僕の母は「大丈夫セイちゃん?」と気にかかるばかりであった。


そしてラルフェットは両親に向かって頭を下げた。



「騎士として失格です…アイアンナイツのご一考がいなければ、僕は…」



「もう終わったことだ気にするな。これは誰も予想できなかったことだ。それに、自分たちが受け入れだ。お前の責任ではない」



ラルフェットが悔しい思いを噛みしめながら、父の言う通りにした。



「はい…」



ラルフェットは十分頑張ったと思うが、彼自身はそうは思っていない。きっとゼアドールに注意されたことも含めて、自分を許せないのだろう。



「しかし、あいつら一体…なぜ狙ってきたんだ?」



「恐らく王子や他の赤ん坊をさらう予定だったのでしょう…あの伝承を信じているものはアルメラス王国以外にもいます。注意すべきでした…」



「もう反省はいい、俺たちは生きている。でも厄介だな、ということ政権争いのためにさらおうとしたということか…無粋な奴らめ!」



ラルフェットが何かを思い出すかのように表情が暗くなった。



「その魂胆はより深いものにも感じます…でも今の時点でそれは何なのかは分かりません…」



話をまとめると、恐らくこの儀式を受けた赤ん坊と王子が狙いで、僕もそのうちの中に入るということだ。難しい話は分からない、でもなにか悪いことが起きそうというのは確かだ。


今の僕じゃあ何もできない、だからせめて情報を得るということに目を向けた方がよさそうだ。



何より引っかかっているのは、僕の存在だ。あの場所は一体なんだったんだ?こことはかなり違う様子だった。分からないことが多すぎる…



今僕にできることはこの人生に目を向けることだけだ…


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