第36話 決戦の終結

 じりじりとアンネリーゼに近づくオットーの舌なめずりの顔。しかし、鐘楼の窓から突如として現れたセレスティアの姿に、オットーの目が見開かれた。

「なんだと!?」

 アンネリーゼがオットーの視線の方向を向く。

「セレスティア!」

 彼が女王に手をかける瞬間、セレスティアはアンネリーゼを抱き上げ、大きな翼を広げて飛び立とうとした。

「ゲルトルーデ、捕まえろ!」

 その異形の腕がひゅんと空に伸びてゆき、女王の片方の足首に巻き付く。

「離せ!」

 レオンが叫び、剣を振り下ろす。戦では鉄製の甲冑を貫く彼の剣技を持ってしても、ゲルトルーデの装甲に傷をつけることさえできない。

「邪魔をするな、雑魚が!」

 オットーは短い詠唱で手のひらにつむじ風を作ると、レオンの剣を飛ばした。剣はアデルの近くへと落下し、石畳のすき間に突き刺さった。

 そして下を覗き込むレオンを後ろから押して、落下させた。

「レオーーーンっ!!」

 アンネリーゼが叫んで、天使の腕の中で暴れた。

「陛下ーーーっ!!」

 レオンが重力に引かれ、あっという間に落ちてゆく。

 風を切る音が耳をつんざく。(これは死ぬ……)、と目をつぶり、覚悟した瞬間、彼の体が突如宙に浮いた。羽毛のようにやわらかいクッションに包まれているようだ。そしてゆっくりと地面に横たわった。

  

 アデルはレオンの剣が落下したことで、次の展開に備えた。

「クララちゃん、元素魔法の準備、大気の層を作るよ!」

 アデルが足を肩幅に広げ、腰を低くした。リュートは肩から掛けられるようにストラップを結び、改良した。素早く軽やかなメロディをリュートで奏で、クララが声の高低でメロディを歌う。 

「Spiritus venti, cutis lenis!(スピリトゥス・ウェンティ、クティス・レーニス)風の精霊、優しき肌よ!」

 レオンが落ちてくるのが見える。時間にして5秒に満たない。突然、強い上昇気流が起こり、不可視の分厚い空気の塊がレオンの体を支える。アデルとクララのメロマギアが間一髪間に合った。

 レオンは静かに地面に横たわった。何が起きたのかわからない。

「レオンさん、大丈夫!?」

 アデルの顔が覗き込んでくる。レオンはぽかんとした顔で呆然としている。

「……君が、助けてくれたのか?」

「よかった……頭、打ってない?」

「ああ……それより、アンネリーゼは!?」

 レオンが上を見上げた。以前として、ゲルトルーデの手に捕らえられ、セレスティアと綱引きをしている。


「だめ、このままじゃ、あなたの足が千切れてしうわ!」

 セレスティアはこれ以上引っ張ることができない。ゲルトルーデにこのまま近づき、攻撃を加えるべきか、しかし、もう片方が伸びてきたら彼女の魂が奪われてしまう。

 その時、鐘楼への階段を上ってきた人物がいた。ノーラ、ではない。

「ゲルトルーデ!」

 息を切らした声でクラウスが叫んだ。

 ゲルトルーデ本来の意識がその声に一瞬だけ反応し、彼女の動きが止まる。アンネリーゼをつかんだ手が緩む。

「ゲルトルーデ、私だ。わかるだろう?」

 クラウスが近づく。恐ろしい異形に変化しても、クラウスには生前の美しい彼女に見えていた。

 オットーが嘲笑う。

「無駄だ。彼女はもう、おまえのことなど覚えていない」

 クラウスはオットーの言葉を無視し、ゲルトルーデに近づき、両手を広げて抱きしめようとする。しかし、ゲルトルーデの手が彼の胸に突き刺さり、魂を抜き取り始める。

 クラウスが目を見開き、苦悶の表情に変わる。

「ゲ……ゲルト、ルーデ、愛してる……」

 ゲルトルーデは彼の胸を貫きながら、抱き寄せた。その悪魔の黒い瞳から涙を流す。

「なんて悲しいふたりなの……」

 セレスティアは天使による救済を与えることを考えた。

「そして、オットー、あなたはやってはいけないことをした。天の裁きを受けなさい」

 クラウスがゲルトルーデの腕の中で息絶えた。しかし、彼は力尽きたのにその抱擁は固く、彼女を抱きしめて離さない。ゲルトルーデがしばし、抵抗するほどにその意思は死してなお強かった。


 ノーラたちが螺旋階段を上っていくと、壁に奇妙な文様が刻まれているのに気づく。

「待って」ノーラが手を上げる。「これは……術式よ」

 ヒルデが近づいて確認する。

「踏むと爆発する仕掛けだ。オットーの奴、こうなることを予想していたんだな」

「こんな狭い場所で爆発したら、塔全体が崩壊するぜ。全員で上がるのは危険すぎる」

 ステラが言う。

 ノーラは素早く決断する。

「そうね、私とルナだけが上がる。ステラは二人を連れて下に戻ったほうがよさそうね」

 ヒルデとエマは同行を望んだが、女王の命が最優先だ、と諭され、来た道を戻る。

 ノーラとルナは術式を見つけては、上書きし、慎重に階段を上っていく。頂上から、クラウスの断末魔が聞こえた。

 

 アンネリーゼはセレスティアと手をつなぎ、宙に浮いたまま、クラウスの最期を見届けると、オットーを睨みつけた。

「種族の特性では決してない。ノーラがいい例だ。人間にも悪魔にも劣らない邪悪な者、非道な奴はいる。おまえはそいつら全員を鍋で煮詰めたような醜悪さだ!!」

 アンネリーゼが嚙みつくと、オットーは不敵に笑い、クラウスの亡骸を抱えると、羽ばたくセレスティアたちに向けて、投げつけた。

「醜悪とは、私にとって誉め言葉だよ、女王様!」

 寸でのところで避ける天使。「なんという冒涜……」

 クラウスは城の前の人工池まで飛んでいき、湖面に落下した。

「アンネリーゼ、手を放すわよ。安心して、私に触れていれば飛んでいられるから」

 セレスティアは手に光の弓、ルミナークを出現させた。神のささやき『ディヴァインウィスパー』を番える。狙いはゲルトルーデ。左手の人差し指に矢の先端を乗せ、弦を絞る。

 セレスティアが弓を引き絞った瞬間、ゲルトルーデの目に人間らしい光が宿る。

「待って!撃たないで、私は正気よ!」

 ゲルトルーデの声が響く。

 セレスティアの手が震える。

「え?」

 ゲルトルーデの姿が揺らぎ、一瞬、彼女の人間だった頃の姿が重なって見える。「お願い、私を助けて……」

 セレスティアの決意が揺らぎ、弓を降ろそうとする。

「もしかして、本当に……」

 しかし、アンネリーゼが彼女の肩を掴み、前後に揺らす。

「しっかりしろ、セレスティア!そなたは幻影を見せられているのだ。本当の彼女ではない!私には変わらず化け物に見える」

 オットーが不敵に笑う。

「さすがは女王陛下、鋭いお目付きだ」

 セレスティアの頬に汗が垂れる。深呼吸をし、再び弓を構える。

「そうね、ありがとう、アンネリーゼ」

 矢が白く輝きはじめる。

「Sagitta lucis, penetra tenebras!(サギッタ・ルーキス、ペネトラ・テネブラス)光の矢よ、闇を貫け!」

 眩い光の矢が放たれる。だがゲルトルーデの前には不可視の壁があるようで、矢が直撃した周りに虹色の時空の波紋が広がる。防御壁に阻まれ、矢は銀色の欠片に飛散してしまう。

「そ、そんな!くっ……」

 セレスティアが歯を食いしばる。

 アンネリーゼが無言で前に出て、光の弓をつかむ。

「さて、同盟を活かすときだな。私も手伝う、二人の力を合わせれば、きっと……」

 セレスティアは頷き、アンネリーゼと共に弓を構え直す。

 その時、弓から突如として生き物のような鼓動を感じた。眩い光に包まれた弓は、まるで意思があるかのように形を変え始めた。弓は太く大きく広がり、その姿は天空を跨ぐ虹のようになる。弦は星々を繋ぐ銀河のように輝き、矢じりは太陽のごとく眩しい。

 セレスティアは驚きの表情を浮かべる。

「この弓にこんな力が隠されていたなんて……これが本来の姿なのね。一人では成しえないことを成しえる、今の私にはわかる!」

 アンネリーゼも畏敬の念を込めて呟く。

「まさに天地を貫く力だ……」

 二人の力が一つとなり、巨大化した弓が引き絞られる。その光景は、まるで天空の女神が世界を救うために立ち上がったかのようだった。

「行くわよ、アンネ」セレスティアの声に、アンネリーゼが「行こう、ティア」と互いの愛称で呼び合った。

「Lux caelestis, sana omnia bona, et mala omnia dele!(ルクス・カエレスティス、サナ・オムニア・ボナ、エト・マラ・オムニア・デレ!)天の光よ、すべての善を癒し、すべての悪を滅しよ!」

 放たれた矢は、まるでハレー彗星のように尾を引きながらゲルトルーデに向かって飛んでいく。その光は、周囲の空間さえも歪ませるほどの力を帯びている。

 防御壁に当たると、まるでガラスが砕けるように、一枚、また一枚と層を破っていく。

 オットーの顔から笑みが消え、焦りの色が浮かぶ。

「まさか、このわたしの術式が……」

 最後の一枚を砕き、矢はゲルトルーデの胸を貫いた。貫通点から全身にヒビが広がってゆく。その下から人間であったころの美しいゲルトルーデとクラウスが生まれたままの姿で現れた。

 そしてもう一人、かつてゲルトルーデを殺めたトーマスが、顔を苦悶の表情に歪めて砂となった。

「さあ、来るのです、ゲルトルーデとクラウスの魂よ」

 セレスティアは懐から小さな天球儀、エターナルスフィアをとり出した。星々や銀河が見え、軌跡を残しながら動いている。

「それは?」

 アンネリーゼが尋ねた。

「これは小さな宇宙よ、時間の流れが異なるもうひとつの世界、この世界ではありえなかったことがありえる場所」

 二人はすでに霊体となり、天球儀に吸い込まれた。

「さあ、安らかに眠りなさい。新たな目覚めの時まで」

 セレスティアは慈愛に満ちた眼差しで、優しく球を抱きしめた。

 その瞬間、セレスティアの意識にゲルトルーデの記憶が流れ込む。彼女の人生、クラウスとの愛、そして悲劇的な最期。オットーによって歪められ、苦しめられた魂の叫びがセレスティアの全身を震わせる。

「あ……」

 セレスティアは息を呑む。

 アンネリーゼが心配そうに尋ねる。

「どうした、セレスティアよ?」

 セレスティアの目に涙が浮かぶ。

「彼女の全てを感じたわ……」

 突然、オットーの怒号が響く。

「貴様ら!私の最高傑作を……!」

 彼が羽を生やし、セレスティアに襲い掛かる。

「させるものか!」

 その時、ノーラたちが階段を上ってきた。その助走のまま、ノーラは全力を込めた電撃を放つ。オットーの片翼に直撃し、一部を穿つ。電流が彼の全身を痙攣させた。

「ぎゃあ!くそ、疫病神め!」

 片翼だけでふらふらと墜落してゆくオットーを、ノーラとルナも羽を生やし、飛び降りて追尾する。

「私たちも追いましょう」

 セレスティアはアンネリーゼを背負いながら、落下地点を目指した。

 下ではアデルたちが、すでに傷ついたオットーを取り囲んでいた。

 ノーラとセレスティアらが合流し、オットーの逃げ道はついに塞がれた。


 オットーは傷ついた翼を抱えながら、周囲を警戒する目で見回した。

「くっ……こんなところで、終わるわけにはいかん」

 ノーラが一歩前に出る。

「いいえ、もう終わりよ、オットー。観念なさい」

 オットーは苦笑いを浮かべる。

「終わり?まさか、私にはまだ魂の深淵を知るという大義が残っている。お前たち凡人には理解できんだろうがな……」

「知りたくもないね」

 ステラが吐き捨てる。 

 オットーがコートの中から取り出したのは、古びた銀色の回転式拳銃だった。まだアデルの世界の歴史には登場しない代物である。コルト・シングル・アクション・アーミー、通称『ピースメーカー』。それを魔改造したもの。

「笑えるな、私がピースメーカーという銃を使って、おまえらを殺すこの皮肉」

 はじめ、彼は自分を一番邪魔したエレオノーラに銃口を向けた。

「もう、魔力が残っていないものでね、人間の武器を使わせてもらうよ。私は寂しがり屋なんだ、誰か一人を道連れにする」

 アデルがノーラの前に立って手を広げた。

「アデル!わかってるの?あれは銃よ」

 ノーラが驚く。

「オットー、もうその汚い口を閉じなさい!お父様を操っていたのも、あなたね」

 アデルが低い声で、そして今までに見せたことのない鋭い眼差しでオットーに睨む。普段のアデルからは想像もできない凄みにノーラが戸惑った。

「……そうか、初めからおまえが鍵だったんだな」

 彼の目に、一瞬の感慨が浮かぶ。

「おまえの父、ヴァルターを選んだときから、エレオノーラを引き寄せ、ここまで因果の糸が伸びていたというのか。だが、それを今断ち切る!!」

 銃声が響き、弾丸がアデルの胸、いや母の贈り物のペンダントに命中する。

 アデルが衝撃で背後に吹っ飛ぶ。

 そしてその瞬間、世界が文字通り停止する。

 

 アデルは、自分が死んだものと思ったが、目が開いた。弾の衝撃で胸の当たりの骨が傷んだ。折れているかもしれない。しかし、それを気にしている場合ではなかった。

 周囲を見るとアデルに手を伸ばしているノーラやセレスティアが叫んだままの姿で固まっていた。エマやクララが目を覆って、しゃがんでいる。ヒルデやルナがオットーを抑え込もうと、飛んだまま宙に固定されている。

 割れた母からのペンダント、時の止まった世界。彼女は素早く理解し、母に感謝した。

「ありがとう、お母さん、そばにいなくても見守ってくれているんだね」

 これは壊れることで、時を制する魔法が発動するよう術式が込められていたのだ。それが偶然、銃弾からアデルの命を救った。

 (この効果がいつまで続くかわからない)、アデルは息苦しさに耐えながら、周囲を眺め、静止した仲間たちの姿を確認する。 そして、ベルティーユの腰に止まった縄に目が留まる。

(あれはベルティーユさんの縄……バウンティハンターの対悪魔の特別な縄だと聞いたわ)

 非常時のために、縄から脱出する術と、人を拘束する結び方を彼女からレクチャーしてもらったことを思い出す。

 アデルは慎重にベルティーユに近づき、その縄をそっと拝借する。時間に固定されていた縄がアデルが触れることで、自由に動ける彼女の物理法則に従う。

 アデルは縄を手に、オットーに近づく。彼の銃口からは煙が立ち上り、それさえも止まっていた。アデルのいた場所を見てあざ笑っている。アデルはオットーに近づき、ベルティーユから教わった通りの手順で相手をきつく縛り上げる。縄が青白く光り、オットーの魔力を完全に封じ込める。

「これで……詰みよ。Schachmatt!(シャッハマット)」

 そして、オットーの手からピースメーカーを取り上げ、指をパチンと鳴らした。

 時は再び動き出す。

 アデルを助けようとした者、オットーを止めようとした者たちは重なり合い、頭をぶつけた。  

 皆が顔を上げると、銃を手にしたアデルが縄で拘束されたオットーをつかんでいる。

 自分の縄がなくなっていることに気づいたベルティーユ。

「私の縄、どうして……その縛り方はあの時、教えたものね?」

「どうゆうこと?」

 ノーラが尋ねる。

「お母さんのおかげなの」

 そう言って、粉々になったペンダントを握りしめた。魔力の残滓の暖かさがアデルの手に伝わる。


 オットーは縛られた体をもがかせ、怒りに歪んだ顔で叫ぶ。

「こんなことが許されるか!貴様ら、わかっているのか!これがどうゆうことなのか」

 ベルティーユが一歩前に出て、険しい笑みを浮かべる。

「わかっているさ、わかりすぎるほどにね」彼女は手配書を取り出し、オットーの顔に突きつける。「オットー、お前は我々と一緒に行く。悪魔界の深層監獄に素敵な独房が用意されているぞ」

 ステラが頷き、目を輝かせる。

「あなたは素敵な大物ね、オットー。顔は好みじゃないけど、私にお金を運んでくれるおじさまは好きよ」

 ルナが軽く笑う。

「感謝しなくちゃね、ノーラに。捕まえる手間が省けて、もっと価値のある標的を手に入れられたんだから」

 ノーラは複雑な表情で肩をすくめた。

「あなたたちが追手であることを忘れていたわ。でも、今更敵にはなりたくない。よかったわ」

 オットーの目が現実を理解し、大きく見開かれる。

「お前たち、馬鹿か?私の背後にはいるのは……貴様らなどすぐに殺されるぞ」

「おい、馬鹿が馬鹿って言うな!」

 と、ヒルデがオットーの頭を小突いた。全員が笑う。

「お前の後ろ盾も、芋づる式にすぐに片付けられるだろうよ。さて、尋問に耐えられるかな。立て!」

 ベルティーユがオットーを連行する。

「賞金は三人で山分けだからな」

 ステラとルナが念を押す。

「先に帰るよ、エレオノーラ。人間界は意外と愉快だ、すぐに戻ってくるよ」

 ベルティーユがノーラと握手を交わし、次にアデルとした。

「アデル、君はすごい魔女になるよ、きっと。私のためにかわいい魔女をたくさん育ててくれたまえ」

 と、アデルの頬にキスをした。

「その、悪気はなかったんだ、仕事だからな」「まあ、ちょくちょく遊びにくるよ」        

 ステラとルナ。始終不真面目な態度は相変わらずだが、腕はいい。ふたりはこれからもこの調子でやっていくのだろう。

 セレスティアがオットーの眼前に立つ。

「なんだ、天使。私が捕まってさぞいい気分だろうよ。だが、私の研究資料があれば、第二、第三のゲルトルーデが誕生するだろう」

 セレスティアは挑発に乗らなかった。

「あっそ。そのセリフ、最弱の奴が言うやつよね。本当なら、天界の裁判でケリをつけたいことろだけど、今回は譲るわ。永遠に地獄を彷徨いなさい」

 女王がオットーと対峙する。

「人間をなめるなよ、オットー。それが貴様の敗因だ。それと、私の魂は生憎それほど純粋ではないのでな、けっこう真っ黒だと思うぞ。残念だったな」

 バウンティハンターの三人は、悪魔界へのパスを通し、時空を歪めると、その中に入っていった。

 見送った直後、アデルは急に全身の力が抜け、その場にへたり込んだ。周囲の声が遠のいていく。アデルの名を必死に呼ぶノーラの顔が最後に見えた。

「お母さん、やったわ……」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る