3

断続的に雨粒の数多と落ちるその音が、あるいは静寂を産んでいた。

特段やることもない土曜日の午後、ふらりと思いたって、私は家の戸を開く。

くたびれたビニール傘を開いて、一歩踏み出した。

さ゚ぁさ゚ぁ、雨粒が地面に追突する音がする。

近所のコンビニの前を通れば、ねこちゃんたちが寄り集まって雨宿りをしている。

雨にそっと、歌ってみる。

「〜、〜〜♪」

その声は、雨音に重なって、じんわりと、私が歌に込めた情感が、世界に溶けていく。

傘を放り捨てる。

体に触れる雨が愛しい。

いつしか虹がかかるまで、この身は青く濡れていて、声に飽和した雨音は、清に雨溜まりから響いていた。

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短文集 蛸田 蕩潰 @6262-334

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