動物たちのインディーズ・ロックバンドに転機が訪れ、メンバーそれぞれがぶつかり合いつつも、バンドのあり方や各々の幸せの形を見つめ直す……という、ぶっちゃけ動物キャラでなくてもよさげなストーリー。
しかし、バンドのメンバーはいずれもミャンマーに棲息する動物達であり、稼げるチャンスがあれば掴まずにはいられない、そのためにはロックさえも捨てざるをえない、といった彼らのセリフの端々から、ミャンマーの厳しい現状が窺えます。
昨今、世界じゅうのあちこちに困窮する人達があふれ、支援を求める声をマスメディアが連日伝えていますが、いくら日本が平和で豊かな国だからといっても、ひとりひとりが募金箱につぎ込める小銭の数には限度があります。
そんなとき我々にできるのは、ミャンマーを忘れないことでしょう。
あちらでもこちらでも火の手を上げておいて「今はそれどころではない」という状況を作り出し、衆目の注意を逸らす。悪い奴が謀りごとを滞りなく進めるのによく使う戦略です。だからこそ我々は、あっちの戦争が大変でも、こっちの戦争が大変でも、それらと同じように、ミャンマーで起こっていることを覚えていなくてはならないのです。
この作品は、ミャンマーの窮状に対して今すぐ何かをせよ、というほど押しつけがましくはありません。ただ、ミャンマーには多くの動物が暮らしており、人間社会が不安定になれば、動物達もあおりを受ける、と示すに留めています。そこが良いところだと思いました。