幕間 煌めく男子は雅な女子と

 「うん、全員行くと。」

 そうして俺はスマホの電源を切った。時計を見ると、14時を回っていた。

 俺は少し小腹が空いたので、コンビニに行こうとして財布を持ったところで、冷蔵庫の中の食材が切れていることを思い出し、スーパーに行先を変えた。

 スーパーはぶっちゃけコンビニよりも家から距離が近い。歩いて3分くらいだ。じゃあなぜコンビニに行こうとしたかって?それは、なぜか小腹が空いたらコンビニに行こうという思考が俺の頭に刷り込まれているからだ。

 まぁ、そんなこんなしながら俺はスーパーに着いた。俺はメモを取り出し、買わなければいけないものを目当てに買い物かごを手に取った。

 「あれ?煌雅じゃん。」

 「ん?あぁ巴か。」

 「やほー。煌雅も買い物?」

 「うん。確か巴も一人暮らしだっけ?」

 「うん。今年の春からねー。煌雅は1年からだっけ。」

 「あぁ。ていうかお前、月みたいに、それ以上にネコ被ってるよな。」

 そう、巴は実は月以上にネコを被っている。なんでも、人見知りで1年の頃一人でおとなしくしていたら、いつのまにか孤高のおひい様なんて呼ばれていた。

 「私の性格はお前が1番知っているだろ?」

 「あぁ。人見知りで臆病で短気だろ?中学校の頃の肝試しは傑作だったな。」

 「黙れ。あんなのを好んでやる奴らの気が知れない…。」

 巴は学校では上品なお姫様だと思われているが、性格を除けば正真正銘のお嬢様だ。…まぁ実際上品なところはあるのだが。

 「ていうか、何買いに来たの?」

 「あぁ、すっかり忘れてた。卵が切れそうでさ。あと冷蔵庫の中に何もなかったから買いに来ようと思って。そういうお前は?」

 「あぁ、私はお菓子にお菓子にお菓子だな。」

 「…お前その食生活直したほうがいいぞ。」

 「なんでだ?美味しいだろ。」

 「お前運動は?」

 「まったく。」

 「休日は何してる?」

 「家でダラダラ。」

 …ヤバい、ヤバすぎる。俺はここまで自堕落な人間を見たことがない。

 「いくら美味しくてもそれで摂ることができるのは糖質とカロリーと脂質だけだ。今太らなくてもいつか絶対太るぞ。」

 「えぇ!」

 (そうだった…。こいつこんなやつだった…。)

 俺は今更ながら思い出した。こいつの頭が良いのは勉強だけであって、それ以外のことは超ド級のバカだということを。

 「お前五大栄養素はわかるか?」

 「あぁ、炭水化物、タンパク質、脂質、ビタミン、ミネラルだろ?」

 「お前それ分かってて、なんでこんな食生活なんだよ…。まぁいいや。お前はまずビタミンを摂れ。野菜が足りなさすぎる。野菜摂らなきゃ肌荒れるぞ。そのあとはちゃんと他の栄養素摂れ。でなきゃ将来、腹出て肌も荒れてはげてるおばさんになっちまうぞ。」

 「ひぃ!そうなのか。ありがとう煌雅。」

 頭が良いから理解が早くて助かった。ていうかそんな食生活でよくこれだけの体型と肌、維持してたよな…。

 俺はちゃんと伝えたはずなのになぜかとても怖くなり

 「巴。」

 「ん?なに?」

 「お前家どこだ?」

 咄嗟にこんなことを聞いてしまった。

 「ここから3分くらいのところだけど…、なんで?」

 「いや、お前の食生活見てたらめっちゃ心配になってきてさ…、よければ飯作りにいこうと思って…。」

 「ホントに!ありがとう!」

 そう言うと、巴は食いつくように俺に感謝を述べてきた。

 「だったら、今から帰ろう!早く煌雅の手料理が食べたい!」

 「じゃあ待て。今から食材買って帰るから。」

 「あぁそうだったね。じゃあ早く買おう!」

 そう言うと巴はスーパーの中めがけて早歩きで行った。

 


 おまけ

 「うう…おいしい…。久しぶりにちゃんとしたごはん食べたよ~…。」

 「これからはちゃんとしたご飯食べろよ。…まぁアパート同じだから時々作りにくるけど…。」

 実は巴と俺は住んでいるアパートが一緒で巴が俺の階の1個下の階だった。

 「できれば明日も来て。」

 巴がそんなことを言い出した。

 「はぁ…、どうせまだ全然作れないから料理作って、か、料理教えてだろ?」

 「あたり!お願いね!」

 ため息をつきながらも明日のレシピを頭の中で模索している自分に少しだけ笑ってしまった。

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