耀夜は後悔していない

 それでもなっとくしかねる様子のに対し、それにな、と一息置いてから告げる耀かぐは、がおだった。

「本当にだと思うんだったら、ならもっと早くから全力で止めてくれるだろう? だから構わないのさ。は今、本当に私がこうかいしていないかをかくにんしたかっただけだし、私はこうかいしていない」

 きょかれたは、くつくつと笑う耀かぐの笑い声で我に返った。

「社長、おたわむれが過ぎますよ」

「すまない。のそんな顔は、めっに見ないから」

 二人が視線をもどした先の画面では、必死の形相でおんを追うけい員の姿が映っている。もし、おんらえている組織があまの考えている通りだとすると、絶対におんには反応する、と事前に聞いてはいたが、まさか本当にらいいてくるとは。

 ちなみにふうが陽動に参加するのは、おんの救出が相手に気付かれた後の予定だ。おんに見た目はそっくりなふうまどえば、追っ手もかくらんされるだろう、という作戦である。同じく楽しいことが好きなあまが陽動に参加できなかったのは、こうざき博士が対外的には故人であることに加え、せつないかぎかいじょう作業にはあまとくしゅ能力、器用すぎる指先がひっだったからに他ならない。

 そのあまふくむ救出班もちょうど、おんとらわれている部屋の前までとうちゃくしたようだった。

「どちらも順調なようだな」

「そうですね。ここからが勝負です」

 耀かぐが再び笑い、げんな顔をした。

「私に散々注意しておいて、だって十分んでいるじゃないか」

「そ、それは」

 そっぽを向くの耳はすっかり赤く染まっており、ますます耀かぐは笑った。ひとしきり笑った後、ちょうせんてきな目付きでモニター群をめる。

「その通り、ここからが正念場だ」

 おんとらわれている部屋のとびらとなると、今までで一番セキュリティシステムが厚く配置されているだろう。また、それをとっしたとして、救出されたおんの状態だい、脱だっしゅつの難易度がおおはばに変わる。本人が歩ければ良いのだろうが、おそらくそれは望めない。最悪の場合は、かのじょりょうようばいようそうごと持ち出す必要があるのかもしれなかった。

「うまくいくと良いが」

 さきほどと全く同じ言葉をつぶや耀かぐ

「きっとだいじょうですよ」

 もまた、同じように言葉を返した。

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