かくて月夜に騒ぎを起こす

真理亜は社長に物申す

 おんの救出作戦が実行に移されたのは、月がこうこうかがやく夜だった。

 陽動はおんふうが大半を務め、のんせいあませつおくまでとつにゅうする。それぞれのグループにはりゅうじんけいがいしゃの社員が護衛としてついているが、流石さすが耀かぐは現地には行かず、自宅に設けた本部で事の成り行きを見守ることになった。

 おんだいたいあつかいについては、数が予想より多かったこともあり、直前まで会議をふんきゅうさせた。ふうなどは、おもしろそうだから現地に置いてくるべきだと強く主張し、あまも賛同していたが、一方でほうかつ非道な組織に救済るのもおかしいとのことで、最終的に大手かつかくてき善良な、つまるところ、組織と敵対していそうなサーバー提供業者にお引き取り願おうという結論に達している。

「さて、うまくいくと良いが」

 耀かぐが目を向けたのはモニター群、そのうち二つはみょうに映像がれており、じっとめていると、いそうになるだろう。今までのんがハッキングしていたせつないかんカメラの映像に加えて、おんのんの視界もまた、このモニター群に転送されていた。あまの視界だけがないのは、あまこうしんで視線を動かすことが多いためである。のんに比べて、映像の動きが大きすぎるのだ。

だいじょうでしょう。からくりが強化された今、むしろ戦力じょうかと」

 は軽く言い切ると、声の調子を変えた。

「それにしても社長、良かったんですか」

「何がだ?」

 しんけんな様子に、耀かぐも居住まいを正した。

ほうしゅうを頂いているとはいえ、からくりおんも、せきもないようなろう者の集団です。しかも、多くの事件まで起こしている、犯罪者とも取れます。少々、かたれしすぎてはいませんか」

 何を問われるかと身構えていた耀かぐは、ひょうけしたように笑った。

いまさらな話だな」

 ふんぜんとしたの様子にまゆじりを下げながら、言葉を続ける。

「良いんだよ。かれは、切実に助けを求めていた。私には、かれを助けられる力があった。別に、それだけのことじゃないか。事件だって、好きで起こしたわけでもなさそうだし、もう我々に一言もなく起こせやしないだろう」

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