傍観者たち

おんのこと、のんから聞いたわよ。救い出してしいって、耀かぐお姉さまに、うったえていたわ」

 ふうの言葉に、おんいっしゅん息を止めた。そうか、といきには、様々な感情が乗りすぎて、逆におんの思いをかくしていた。

「それは、申し訳ないことをした。のんにはめっなことを言わないよう、よく注意しておく」

「アンタは、おんいたくないわけ?」

 のんのしたことは余計だったと言わんばかりの返答に、ふうく。それを受け止めるおんひとみは感情を映さず、がらだまのよう。

 ともいなとも答えず、おそらくは数秒。そう、と今度はふうてた。

のんの思いは、アンタにとってだったのね。わいそうに」

 おんは息をんだ。激情のあまりにこぶしにぎんだうでふるえ、おののくちびるから、やっと言葉をしぼす。

でなんか、あるものか。のんおんのことを思ってくれているのは、知っている。あまにぃが気にんでいるのだって。でもだからこそ、自分が簡単に助けを求めて、む人を増やすのが良いとは、思えない。あまにぃやのんがんるのならともかく、一体ひんみんがい、しかもだっかんすると世の中にめいわくける相手を、他のだれが助けてくれるというのか。その人たちにだって、めいわくな話だ。あまにぃものんも、簡単には表を歩けない。そんな状態で表の人間なんて、めない」

 何事かと、ふうだけでなく耀かぐまでおんの元に来る。いつの間にか、画面にぼっとうしていたはずのせいまで、おんに注目していた。当然、護衛対象がそろって動けば、も付いて動く。あまだけが、画面に顔をせている。必死に何かをかくすかの如く。

 ほぼ全員の視線を集めたおんに向かって、痛いほどのせいじゃくなどものともせず、ふうあざわらった。

「そう言って、あきらめたんだ?」

 言葉のやいばは、的確におんの心をえぐった。

 りつぜんとしていろを失ったおんに、ふうはなおも追い打ちをける。

「本当、わいそうよね。アンタに、すでまれているのんこうざき博士も、来ない助けを待っているおんも。アンタがおくびょうかぜかれてふるえている間にも、時間は過ぎていくっていうのにね」

 いっそやさしい口調から一転、腹の底からひびくような声でなじった。

あまえるところをちがえている場合かしら?」

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