詩音の謎

「救い出す、とはまた、おだやかじゃないな」

 耀かぐはそう言いつつもひざをつき、しんだいすわのんと、視線の高さを合わせようとする。かれたせいが、あわてて室内にあったを用意したので、礼の言葉と共にこしけた。

 その間にのんは、ふうの同席をこのまま続けてもらうか、いったん席を外してもらうべきかを考える。心情的には席を外してもらいたいが、ちゅうはんな情報からさらに独自の行動をされてもやっかいかと思った。なので、もくにんすることとして、耀かぐが再びのんの話をく体勢になるのを待った。

「待たせたな。さて、救い出すとは、おんの妹だという、おんのことか」

「ええ。おんは今、とらわれていて、そのゆくすら定かではないのです。私にできるのは、かのじょつうしんを続け、かのじょの負担を少しでも減らして、意識をつなめておくことだけで。でも、それも私にしか今のところ、できていないから」

「それがおんの言っていた、アナタを経由しないと届かないってこと?」

 口をはさんだふうを、のんこうていした。

「今は、私もばんぜんの状態ではないので、おんも意識をまいぼつさせているでしょうね。仕事が仕事なだけにゆくは厳重にかくされているし、もし居場所がわかったとしても、簡単にむかえに行く訳にもいかなくて。あま兄さんは軽くだっかんしてくれば良いじゃんなんて言ってくださいますけど、おん兄さんが気にむと思います」

 ふむ、と耀かぐうなる。

のんつうしんして手助けできる、大層な仕事か」

 のんは申し訳なさそうな顔をした。何せ、今から明かすことは、特大のばくだんだ。

ふうさんがここに来られる前に話していたことを、耀かぐさまは、何処どこまで覚えていらっしゃいますか」

「ザイオンサーバーのことだな。からくりに注目していて、意に沿わぬことにはていこうするが、のんには場所をあたえた。そこまでは覚えているぞ」

 げんな顔で話題のてんかんに答えた耀かぐの表情が、固まった。そう、不思議な物言いだと、かんがあったのだ。この言い様では、まるでザイオンサーバーが、意思を持って生きているようではないかと。

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