かくて歯車は集う

応急修理

 おんの持ってきた部品でひとまずの応急修理をほどこされ、のんが意識をもどす。

「お前、本当はのんというのか」

 開口一番、名前のことから切り出す耀かぐに、のんこんわくして、目をまばたかせた。

「その名前は、大切な、いただきもので」

「そうか。おんがお前のことを、のんと呼んでいたからな」

 おんの名前に反応して、バネけのにんぎょうのようにしんだいに起き上がるのん

おん兄さんはっ!」

「無事だから落ち着け、のん

 おんの声で多少落ち着いたものの、室内をわたしてふうの姿を認めると、のんけんしわが刻まれる。その容姿や職業から、最もおんにはせっしょくさせたくなかった少女に、出会わせてしまった。

 くちびるめるのんかたに、耀かぐがそっと上着を羽織らせる。その時になってのんは、おのれの姿が気絶前よりもうすになっていると気付いた。さらに言えば包帯が全てほどかれ、損傷の激しかった部位に至ってはじんこうまでもがされて、新しい部品が見えている。その意味するところは明白だ。

 機械のからだを持つことが、ばれた。というか、強制シャットダウン前の暴走したおのれの行動をかんがみるに、自らばらしてしまった。事実をさとって、のんの顔が一気に真っ青になる。

「無事じゃないのは、のんの方だ。結局、持ってきた部品だけでは足らなかった」

 おんにたしなめられ、ますますしょんぼりと縮こまるのん。その様子は、耀かぐが拾った当初と比べると、本当に感情豊かだ。身内が来て、多少なりとも安心したのだろうと、耀かぐほほましく見守る。

「どうする。いったん帰って、しっかり直してから改めてお礼に来るか? でなけりゃ、あまにぃもこっちに呼んでくることになるが」

 だんのんであれば、二重の意味でそくとうするであろう、問いかけ。けれど、迷うりののんに、おんみをかべた。

のんの好きにして良いぞ。我々の事情だって、無理にかくすほどのことでもない。言っただろう? たまにはワガママを言ってもらわないと困ると」

「で、でも、すがあま兄さんを呼ぶのは、ちょっと、その、問題ありすぎると、思うのです」

「そうか? えんかくで見張るよりは良い案だろう」

 頭をかかえてしまったのんをそのままに、おん耀かぐあおいだ。

のんがとても良くしてもらったようで、本当に感謝する」

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