絡繰子の業

 のんしんだいかされた後、わなから救出されたてん使耀かぐに頭を下げた。

「改めて、のんが世話になっている。自分はおん。我々のことは、どう説明したら良いものか。からくりのことは、ごぞんか?」

からくりのこと? そうどうにん、夜空にまぎれるあんやく者、存在すら定かではないゆうれい、の三人組のことか」

 耀かぐの答えを、おんは否定した。

のんが作り上げた都市伝説ではない方の、からくり。まあ、我々ほど派手に動いている者は他にはいないから、知らなくても無理はない」

こうざきあま博士の作品群、というのは調べたことがあるわ。まるで、人間のように動き、感情を持つ機械にんぎょうたちのことではなくて?」

 口をはさんだのはふうせいきょうはくし、おんわなけたかのじょは、現在は逆に、こうそくされている。それでもおもしろい話が聞けそうとあれば、首をまずにはいられない様子だ。

 おんが続きをうながすような仕草をしたので、ふうおくをひっくり返す。

からくりはそれぞれにコードネームと得意分野を設定されているのよ。全部で十体ばかり、いたかしら。でも、こうざき博士がなぞの死をげて、今はもう新規に作られることはないし、ぞんの作品もゆく不明になっているものが多かったはずよ」

「世間的には、おおむねそのようなにんしきだろう」

 色々とかる言い回しをするおんに、耀かぐかくにんする。

「つまりお前たちは、機械にんぎょうだというのか」

「今は、そうだな。人間では、このようにつばさを収納することなどできまい」

 かすかなどうおんと共におんつばさが折りたたまれ、背中からどうたいにしまいまれていくのを横目に、耀かぐさらなる質問を重ねる。

「まるで、かつては機械にんぎょうではなかったかのような言い方だな?」

「その通りだ」

 うっすらとみすらかべ、おんは言う。

からくりは全員、元人間だった者たち。機械になってなお、人間の心を持っている者。だから、のんに接するときは、一人の人としてあつかってもらえると、大変がたい」

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