かくて明らかになる

風薫の執念

 はっまっていた部屋はれいに片付けられており、生活感にとぼしかった。

「本当にここにめていたんでしょうね」

いまさらうそいてどうするっすか。疑うんなら、クローゼット見てくださいよ。服、入ってるっすよ」

 後ろ手にしばられているせいが完全にふてくされた顔でぼやくのを横目に、ふうはクローゼットの中身をあらため、としごろの少女向けの服が大半をめていることをかくにんした。

「なるほど、そうね。じゃあ次は、この部屋のかんカメラの映像よ」

 せいの表情がけわしくなる。

すがにそんなもん、ほいほい見せられないっすね」

「あは、けんのんな顔しちゃって。でも、もうおそいわ」

 ふうは眼鏡型のたんまつを装着した。セキュリティシステムの乗っ取りは無理でも、かんカメラの映像をぬすむくらいなら可能だろうという、かのじょなりの自負が、ふうの自信に満ちた晴れやかながおを裏打ちしていた。けれど、その表情はじょじょくもり、ついにはせいにチラチラと視線を向けるようになる。

「ねえ、せい

 かのじょの言いたいことを察しながらも、せいふうの呼びかけをわざと無視する。先に非友好的なたいに出たのはふうの方なのだから、精々同じように困れば良いとすら思った。

すでに映像が消去されているのは、どうしてよ」

 すがアンジェのじょうちゃん。ないなー。と、心の中だけで返事をするせい。記録の消去は確かに大問題ではあるが、相手のことを考えると、むしろそれだけで済ませてくれたのか、というかんたんの念すらある。もしごろ耀かぐの友好的なたいほだされてくれていたのだとすれば、なおうれしい。

 なおも未練がましく、たんまつの画面をにらけるふうだが、それで情報が出てくるはずもなく、せいも何も言わない。

「まあ、それなら仕方ないわね。せっかくだし、持ってきてる対からくり用のわなでもけようかしら」

 だいに出てゴソゴソと何かを設置しだした情報屋に、せいは思わずちんもくを破った。

ふうちゃん、どんどん立派な犯罪者になってるっすね」

「うるさいわね。そんなもの、からくりつかまえられたら、それでチャラになるじゃない。だいじょうよ、空から来ない限り、このあみかる事なんてないんだから。むしけが増えたと思って、感謝する事ね」

 うわあ、開き直った。他人の家に勝手に物をけるのは、のがれようのない犯罪こうであるにもかかわらず、感謝まで要求された。などと、ぼんやりげんじつとうするせいは知らなかった。

 ふうねらっているからくりの一員、おんが、部品を取ってもどってくると、約束しているという事実を。

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