かくて耀夜は白華を構う

名乗らないなら名付ければ良い

 耀かぐの前でくるますわる少女は、使用人たちが用意したしらあいいろのワンピースに身を包み、じっと動かない様子も相まって、まるでにんぎょうのようだった。いろかみはさらりとして長く、せがちな目は、あさにもこんぺきにも見える、不思議ないろ。今までモデルにスカウトされたことがなかったら、うそだろうと言うしかないほどに整った顔立ちだ。今は表情をなくしているが、がおにできたらどれほど人目をくだろうかと思う。

 実は、そんなことを思っている耀かぐ自身も、一流モデル顔負けの美人だ。緑なすしっこくかみわえ、ひとみは左右でいろが異なる。くろべにこきのそれらはとても有名で、だからのんも、かのじょりゅうじんけいがいしゃの社長だと一目で判断していた。

「うん、れいになったな」

 満足気にうなず耀かぐは、自然な動作でのんの前にひざをつき、かのじょと目線の高さを合わせる。かつて人間にそのようなづかいを受けた覚えのないのんは、うろたえた。さっと周囲に目をやり、だれもそれを不自然と思っていない様子にさらこんわくを深める。後ずさりしたいのは山々なれど、くるますわっていては、それもかなわない。ひざの上で組んだおのれの手を見つめてしまったのは、仕方のないことかもしれなかった。

しょうかいおくれたが、私はりゅうじん耀かぐ。ここは私のしきだ。りゅうじんせいの者も多く働いているから、私のことは下の名前で呼んでもらった方が良い」

 うつむいてしまったのんに、耀かぐほがらかさをこころけながら話しかける。

さきほどは、少々あらをして、すまなかったな。お前のことは、何と呼ばせてもらったら良い?」

 人間に名乗るつもりは毛頭ないが、とっめいも思い付かない。のんは静かに、否定の意をめて首を横にった。数秒のちんもく

「お前、名前もないのか?」

 そのかんちがいはうれしくないと思い、のんしぶしぶ口を開く。

「人様に名乗れるほどのモノでもございません」

「しかし、呼び名がないのも不便だ」

 それでも名乗らないのんに、耀かぐたんそくした。

「わかった。それなら、私が呼び名を決めよう。うーん、そうだな、はっはっで良いだろう」

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