四話
ついこの間まで魔王の
彼等は魔王出現前に築かれた文明における「貴族」の
文明が崩壊し、人類が集落に分かれ細々と生活していた間も、その権威は不思議と
文明の時代から各地で人々を治めていた
無論、その能力の低さから集落を維持できず
それが、あろうことか
ヴィルヘルムとしては確かに、あの十年を戦い抜いた自信と賢者としての
しかも毎度
はじめこそ、その意図を
それでもこんな会合にわざわざ出向くのは、それが他でもないヴィオラの頼みだったからである。
「本日もようこそおいでくださいました」
重鎮たちの一人、この会合の長を
――相変わらず胡散臭い顔だ、とヴィルヘルムは心の内で独りごちた。
「来ないとどんな目に
嫌味たっぷりに放たれた言葉を
彼は渋々それに従い、用意された席についた。
ヴィオラはというと、別室で待機していた。あくまで賢者の付き添い、という立ち位置らしい。
全員が着席すると、長がさっそく話し始める。
「ところで賢者様のご家族はご
また中身のない会話が始まった、とヴィルヘルムは
「どうだっていいでしょう、そんなことは」
「いいえ、大切なことです。家族はいいものですよ。
(――いよいよ本性を現したか)
こんな回りくどい言い方をしているが、要は妻を
――もう十分だ。これ以上彼らと話すことはない。
ヴィルヘルムは、なお話し続けている長を遮って告げる。
「はっきり言っておきますが、僕はこの中の誰とも
そう言い切ると彼は重鎮たちを睨み据える。
しかし彼らはこれを聞いても特段、動揺を見せる様子はない。
それどころか、含み笑いをしてヴィルヘルムを見ている。
いよいよ彼らの考えが見えなくなったヴィルヘルムは困惑を隠せなかった。
――賢者の
彼が険しい顔で思案していると、長は声を立てて笑う。
貴族たちの態度に
「なるほど、確かにそういった様にも取れてしまう話でしたね。何、なんのことはない。世の中がようやっと平和になって貴殿の身の回りもそろそろ落ち着いてきたでしょう? そこで貴殿もそろそろ、
「話が見えませんね」
自分たちとの姻戚関係を結びたいわけでもないのに、賢者の結婚相手について彼らが案じてくる理由がどこにあるのか、とヴィルヘルムは眉を
身の回りの世話なら、メイドでも雇えばいい。社会的な信用という点で
――まさかただの親切心でこんなことを言い出しているというのか。
相手の意図が一向に読めない不快さのもと、あからさまに
「――どうやら賢者といえど、こういった腹の探り合いはお得意ではないようだ」
「さっきから何が言いたいのです」
いよいよ
「では単刀直入に申しましょう。――貴殿にはお世継ぎを、
予想だにしなかった提案に面くらい、ややあってヴィルヘルムは、は、と息切れしたかのような声を漏らした。
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