二章

二通目

 親愛なるアリスへ


 君が眠って今日で百日になる。


 季節はもう夏に差し掛かってきたよ。


 この時期になると毎年、君が僕を賢者に、と頼んできた日のことを思い出す。


 「賢者」だなんて、いかにも堅苦しいお役目が僕に務まるものかってあの時は思ったけど、結果的にはこうして君と旅をして、世界を救っただなんて言われているんだから、人生わからないものだね。


 君と魔王が眠りについて、世の中はもっと騒がしくなると思ったけれど、意外とそうでもないな。


 皆、急に訪れた静かな世界にどう馴染んでいけばいいのかまだわからないのかもしれない。


 そういえば、今日は村で祭りをするんだって。


 懐かしいな。君は祭りが好きだったね。


 君が目覚めたとき、まだ祭りの習慣は残っているかな? 


 もし残っていれば、また一緒に回ってあげないこともないよ。


 ちゃんと待ってるから。


 それじゃあ、また次の手紙で会おう。


 おやすみ、アリス。


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