第十四話 「慎吾」
目が醒めると、いつもより病室が暗く、頭痛がした。外には雨が降っていた。
ここで一つ気づいたことがあった。あれだけリアルな夢を見ているというのにも関わらず、毎日目醒めは最高なほど良いのだ。今日の夢は悪夢と言えるほど辛い夢だったが、体はほとんど異常はない。
だからこの頭痛は夢のせいだけではないだろう、多分僕が偏頭痛持ちだからだ。
今日は特にやることもないので早く彩夢に会いに行けるかもしれないな。明日も予定は何もないし、時間は結構あるな。
と思っていた矢先、診察に行くと、
「もう大丈夫ですね、退院しちゃって大丈夫です。」
とお医者さんから言われた。予想外だ。
てっきりあと3日4日かかるものかと思っていたのだが...。そうなると学校に時間を取られてしまうな...。
「ありがとうございました、お世話になりました...。」
気落ちしながらもお礼を言い、病室へ戻った。明日の午前中に退院だそうだ。
結構のんびりできていたんだけどなぁ...。少し残念に思いながらパソコンを開く。
そういえば最近全然作曲できてないな、3月に投稿してからまだ一つも投稿できていない。そろそろ出さないとな...。
そんなことを考えているとノックの音がした。
コン、コン......なんだろう、いつもと違う感じがした。ちょっと力強い感じ。
「どうぞー...。」
扉が開くと同時に、
「よう!」
力強い声が小さい部屋に響いた。
学校での友達は慎吾しかいない。何故なら僕がクラスメートと関わるのを好まないからだ。
だから友だちといってもかなり無理矢理だった。あっちから一方的に話されて何も言えないままなんやかんやあって仲良くなった記憶がある。部活は運動系らしい。現役バリバリの陽キャなのだ。
「ん、慎吾、どうした?」
「いやお前が入院したって言うから来てやったんだよ!」
「あ、そうか、ありがとな。」
「相変わらず無愛想だねぇ、でも元気そうだな。」
「ああそうそう、明日には退院するんだ、タイミングがよかったなー。」
「えっ、そうなのか?随分と早いじゃないか。二週間くらいかかるって言ってたじゃねえかよ。」
慎吾は驚いて僕にそう聞いてきた。
「今さっき診察に行ったんだけど、もう大丈夫だってさ。」
「ほーん、よかったじゃねえか。」
僕は、「まあな」と頷いたが、実のところはまだここに居たかった。この病院に来てからいくつも面白いことが起きて退屈しないのだ。あの夢には少し悩まされるが、内心では楽しんでいる自分がいる。
「ほんっっと感謝しろよな、今日せっかくの休みをお前に使ってやってんだから。」
別に気にしなくていいのに、とは言えない。大切にされて悪い気はしない。
「ありがとな。」
「おうよ!」
僕と慎吾はその後も話し続けた。
───数時間後───
「じゃあまたな〜。」
「ああ、今日はありがとう。」
「いいってことよ!」
そう言って病室から出ていった。
しかし驚いた。興味ないから部活のこととか聞いていなかったがまさか一昨日に大会で優勝してるとか考えもしなかった。そんなに運動神経いいのかあいつ。
そんなことを思いながらパソコンに向かっていると、もう16時だ。そろそろ会いに行こうか。
僕は光が届かない今日、君の光を取り戻すために足を踏み出した。
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