発見された手記の七頁目 幹線道路
半夜、東次郎は微睡みの中から目を覚ました。
どうやら彼は車の中らしく対向車のライトが眩しい。辺りを見てみると前の運転席にはハンチング帽を被りワイシャツの上にベストを着たウルフヘアーの男が座っており、助手席にはコートを羽織ったロングヘアーの女が座っていた。
そして流れるように自分の隣の席に目を向けるとそこにはショートヘアーの女がこちらを見ていた。「あ、起きた」
よく見てみると彼女の歳は東次郎に近いような雰囲気だった。
「とりあえず自己紹介からだよね。とは言ってもコードネームだけどね。」
「あのっ、ぼ、僕はなんで車の中にいるんですか」
困惑する東次郎には気にかけることもなく隣の席の女は話を続けていた。
「私のことはミアって呼んで。それで運転してる外国人のおっさんがエド。」
運転席で信号が変わるのを待っているエドは左手をあげ挨拶の仕草をした。
「そしてエドの隣の無愛想なのがタカセだよ。」
東次郎は唐突な自己紹介など頭に入るわけもなく再び今の状況を聞き返した。
「いや、あの、これはどういうことなんですか。」
「えっと、東次郎君だっけ。君の話はお父さんから聞いてるよ。あの馬鹿がランナーズのことを君にバラしたうに私たちのことホイホイ話しちゃったらしいじゃん」
「ええまぁそうなんですけど」
東次郎はとりあえず返事をするしかない様子だった。
「そしたらそれを聞きつけたうちの組織裏切ったやつが制裁だなんだって君の家まで向かっちゃったらしいんだよね。」
「さっきのってそういう事だったんですか?」
正直どういうことであるかは全く掴めてない。
「あの…父はどこにいるんでしょうか?見た限り車内にはいないですし…」
東次郎がそう聞くとミアは少し深刻そうな顔をした。
「本当に気の毒なんだけど東次郎君…君のお父さんは死んだんだ。」
段々数時間前の記憶が東次郎の頭の中に蘇る。
そうか、あの時父は死んだのか。
あまりにも突飛な事実に東次郎は驚くことすらできなかった。
「本当に申し訳ない…私たちがあと数分駆けつけていれば助かったかもしれないのに」
「いや…いいんです…元はといえば僕が1週間前父の後をつけてしまったのが悪いんですから」
そして車内に流れる沈黙。東次郎は窓の向こう側に光るシンキョウトの街を見ていた
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