発見された手記の中の四頁目 夜光

 そんな事があり東次郎はその数日後に下校中父と遭遇し、他愛もない会話を続けているが心の奥底ではうまく現実を飲み込めない部分があった。

 時間は経ち夕暮れ時、東次郎と寛治郎は夕飯をリビングで食べていた。

 普段通りなら二人でテレビでも見ながら何か話していたが、今ではすっかり黙々と食事を進めていた。

 いい加減父の言っていた能力について問いたださない限りこの心のうちにある曇りは晴れないだろうと思った東次郎はようやく決心し、口を開いた。

「父さん、父さんが前言ってた能力のことなんだけど」

「ああ、そのことか。よし、いいだろう。一度しかやらないからよく見ておけよ。」

 寛治郎が席を立とうとしたその時、恐らくトラックか何か大型車両のエンジン音が聞こえた。

 東次郎はこれに関して何も感じていなかったが父の寛治郎は違った。寛治郎は人差し指をたて口に当てた。その瞬間、沈黙と、緊張が走る。

 外から車両のドアがバタンと閉められる音が聞こえた。それを聞くなり寛治郎は小さな声で二階に上がりなさいと東次郎に言った。

 東次郎も父の様子をみる限りただ事じゃないと確信し、すぐさま二階へ上がっていった。

 二階にある自分の部屋に入った東次郎は父に渡された錠剤と拳銃のことを思い出し、机の引き出しからそれらを取り出した。

 その時、下から大きな音が聞こえた。それは前に廃工場の隣の建物から聞こえてきたような、痺れるような音だった。銃声だ。

 一発目の銃声が聞こえた数秒後、再び銃声が連続で聞こえたのと同時に何かが物に当たるような激しい音が聞こえた。

 東次郎は肩をすくめながら音が止むのを待った。東次郎からしたらとても長い時間が流れていたように感じられていたが机の上の時計を見ると2分も経っていなかった。

 恐る恐る部屋のドアを開け、廊下から顔を出した矢先、彼の視界に映っていたのは父ではなくヘルメットのような、マスクのようなものを被った男だった。よく見てみると右手には父にもらったもののような拳銃を握っていた。

 命の危険を直感した東次郎はすぐさま部屋のドアを占め、向こうが撃ってきた時、当たらないようにドアから向かって部屋の左側へ身を運んだ。

 この判断は間違いじゃなかった。東次郎の予想通り向こうは銃をこちら側に撃ち込んできた。

 父はどうなってしまったのか、もし殺されたならば自分もここで死ぬのだろうか、東次郎は目の前の現実が恐ろしすぎて到底受け止めきれるものではなかったが、とにかく今の状況を打破すべく、目の前の光景に集中した。

 銃弾によって穴の空いたドアを見た瞬間、東次郎の脳内にはこれまでに感じたことのない危機感と、ある一つの選択肢が流れ込んできた。

 そして東次郎はどうにか父の言っていた事が本当であると信じ、数日前に渡された赤と白のカプセル型の錠剤を飲み込んだ。

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