発見された手記の中の三頁目 錠剤

 寛治郎は錠剤を東次郎を差し出すと話を続けた。

「俺達ランナーズはそこらのアブナイ連中や警察なんかより特異な能力を持ってるんだ。そのうち見せるがお前が俺の息子なら、この錠剤を飲むだけでその能力を引き出せるはずだ。」

 あらゆる情報が東次郎に流れ込んだ結果、当然ではあるがもうそれらを黙って受け止めるしかなかった。

「そしてこれ。」

 寛治郎がブリーフケースから取り出したのは正真正銘の拳銃だった。

「もし今回のことで俺の仕事がお前の生活に支障が出た時、いや、本当に命の危険を感じた時に使うんだ。」

 そう言うと寛治郎はまるでこれから東次郎が今後銃を使う前提のように銃の使い方の説明を始めた。 

「撃つ時はここのセーフティを解除して…」

「そして片手でグリップを押さえて引き金を…」

「撃つ時はこの銃弾を使え。もし数発で死なないような相手だったらこの"赤い銃弾"を使うんだ。」

「その金色のやつと赤いやつだとどう違うの?」

「金色の方は普通の鉛玉だ。だけど赤い方は少し特殊な作りをしててな、撃った相手の部位を破裂させる炸裂弾なんだよ。」

 東次郎はそんな物があるのかと最早感心の域にまで達していた。

 そして暫くの沈黙がリビング中を駆け巡る。

「…とりあえず分かったよ。もう暗いし晩御飯の支度するね。」

 東次郎は疲れた様子ながらもキッチンに移動した。例の錠剤を包んだパックと銃とその弾が、東次郎のポケットを膨らませていた。

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