少女の世界探し

@nekokoro

第1話 雨上がりの世界

少女が目を覚ます。空は晴れているが、地面にはところどころ水たまりができている。

少女はつぶやいた。


「あれ、ここは?…なんでこんな道の真ん中で寝ていたんだろう…?」


少女のつぶやく声に気が付き、少し先に居る、黄色いレインコートと傘をさした少年が歩み寄ってきた。


「目が冷めたんだね。大丈夫かい?」


少年は優しくほほえみながら話しかけてきた。


「はい…」


「君、ここの世界の人間じゃないよね  どこの世界から迷い込んだんだろうかな?」


「??…あの、ここはどこですか?

それに私はここの世界の人じゃないって…?」


知らない場所で目覚め、知らない人に話しかけられ、少女は戸惑っていた。


「あぁごめんごめん、話が急すぎたね。とりあえず自己紹介しようよ。僕はれい。」


「私は…えっと………」

(だめだ自分の名前が分からない…私って誰だっけ…そもそも、ここは?

分からない…)


この頃ようやく少女の頭が周り始め、色んな事に考えを巡らせることができるようになった。

考え込んでいる少女に怜は優しく話しかけた。


「名前分からないの? 記憶喪失かな…異世界を渡ってきたんだし、記憶を失っていてもおかしくないしね」


「い、異世界を渡ってきた? 私が、ですか…?」


「うん。歩きながら話そうか」


怜は少女に手を差し伸べ、少女は手を掴み、立ち上がった。


ビルが建ち並ぶ都会の大通りを歩きながら二人は話す。


「ここはどこなんですか?けっこう都会に見えますけど、人が1人もいませんね…」


「ここは雨上がりの世界。名前の通り雨が止んで晴れただけの世界。人は管理者である僕以外に誰もいない。」


「1人で寂しくないんですか?」


「まぁ、寂しと感じるときもあるけどね。ネコやイヌはここにも存在してるから、暇な時はその子たちと遊んでるから大丈夫。」


「なぜネコさん達はいるのに人はいないんでしょうか?」


「理由をつけるなら、この世界を作った人が手抜きしたから、かな。」


「世界を作った人…神様のことですか?」


「いや違うよ。普通の人間さ。手抜きなせいで時間も永遠に午後一時、この景色も変わることもなく人も誰もいない。良いところがあるとすれば、あの空にかかってる虹が綺麗なことかな。そんな美しくて寂しい世界、それがこの雨上がりの世界だよ」


「…雨上がりの世界」


「少し話しすぎたね、とりあえず君は今異世界で迷子になってるって事を分かってくれればいいよ」


「異世界……なんで私はここに来てしまったのでしょうか?」


「うーん、時空の歪み的な世界のバグで飛ばされたパターンか、魔法が使える世界から魔法を使ってここまで来ちゃったか、科学が発展した世界から空間移動中に何かの事故でここに飛ばされたか、色んな可能性があるから断定はできないかな。なにか元の世界の事について覚えてるかな?」


「えぇっと……まだよく思い出せないです…私はどこの世界からきたのでしょうか?」


「これは僕の推測だけど多分、文明が結構発展してる世界から来たんじゃないかな。」


「なんでそう思ったんですか?」


「君の服装を見ると、多分それは学校の制服だ。」


少女はまるで探偵服のような茶色の服を着ていた。少年が続けて言う。


「そしてビルについても知っているみたいだし。もしそこまで発展している世界でなければビルとか知らない筈だからね。」


「確かにそうですね!」


「でも詳しいことは分からないなけどね。元の世界に戻りたいなら異世界管理局に行くと良いよ」


「異世界管理局?」


「そう、異世界、平行世界なんかをまとめてる所さ。そこに行けば君の元いた世界を探してくれると思うよ」


「じゃあそこに行かないといけないんですね」


「うん。でもこの世界から直接は行けないんだよね。一つ隣の常夜とこよの世界を通らないと行けない。」


「常夜の世界…どうやって行けば良いんですか?」



少年は立ち止まった。すると二人の目の前に、まるで画面の明るさをマックスにしたテレビのように明るい縦長の扉がでてきた。


「これは?」


「この先が常夜の世界だよ」


「常夜なのに明るい…」


「ハハッ(笑)これは世界を繋ぐ扉だからね。」


「ここに入れば常夜の世界に行けるんですよね」


「そう。でも常夜の世界は危険だ。運よく世界の管理者に会えればいいんだけど。」


「危険ってどこらへんが危険なんですか?暗いだけじゃないんですか?」


「常夜の世界は常に真夜中で樹海が広がってる世界だ。そこには狼とか危険な動物もいる。………もしよければ、ここに残るのも悪くないんじゃないかな」


「ここに残る…」


「僕は迷惑することないし、それに景色ならどの世界よりも綺麗だと思うよ」


「私は…自分の世界に帰りたいです。たとえ危険な道であっても行ってみたい。」


「そう。まーた暇になっちゃうな(笑)…気おつけてね。」


「うん、ありがとう」


そうして少女は怜にお礼を言って真っ白な扉へ入って行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

少女の世界探し @nekokoro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ