第10話 自分勝手で都合のいい女の独白(元カノ深雪視点)

くそ!!私は歯軋りをした。


なんでなんでなんでなんで!!あいつがオブシディアンの陽人と皆川朱莉の子供なのよ!!

失敗した。失敗した。失敗した!!


何事もなく、春斗の元に戻って恋人の鞘に戻ろうとしたのも、周りはあの三人がまとまってあいつを守ってるし。


レンが私とデートしてくれるっていうのが唯一の救いだわ。


「マジでざまあないわ。深雪って。」

朝方レンが私がデートを誘ってくれたことから発端する会私の発言でクラスの女子と思いっきり喧嘩をして、嫌われた。

クラスのモブ女が勝手に嘲りの声をあげるけど、知ったこっちゃない。


そんなことはどうでもいい。はっきり言ってクラスに嫌われたとて困ることはない。

それよりも、私の完璧な詰めの甘さに自分に嫌気が出てくる。




世の中。お金だと思う。お金があればなんでも思い通りにできる。

お金がなかったら、なんもできない。

自分を維持するためにどれだけのお金を自分に注ぎ込むことになるのだろう?

生まれて死ぬまで、息を吸ってるだけで、世の中どれだけのお金が消費されていくのだろう?

親ガチャで、お金持ちの元に生まれたら、そこまでお金のことに考え込まずに生きていける。外れたら悲惨だ。私みたいに。


私の家は貧乏だ。

一応言っておくが、曲がりなりにも私立のこの高校に通えるくらいの学費は払えるくらいは両親は稼いでる。

だがそれでも、うちは悲惨なくらいに貧乏だ。

大手商社の中間管理職には就いていて出世コースを順調に歩んでる父親。

そして、大手弁護士事務所で弁護士をしてる母親。

傍目から見たら、アッパーミドルクラスの生活ができる・・そんな家庭。


それなのに悲惨な貧乏な理由。

両親が自分勝手で自己愛モンスターだからだ。

自分を維持するために稼いだお金を全部自分に注ぎ込むからだ。

借金をして買った高級海外車。高級海外時計。ハイブランド品。

それを身につけることに稼いできたお金を注いでる。

子供の私にはそんなお金をかけていないのに・・。


ある日どうして自分にそんなにお金をかけてくれないのか?

って母親に聞いたことがある。


「え?なんで私たちが稼いだお金をあなたに使わないといけないの?

お金が欲しかったら、体を売るなりなんでもやってお金を稼げばいいじゃない?

冗談じゃないわ。なんであんたみたいなクソガキに自分のお金を使うの??

お前はいらない子なの。死なない程度にちゃんとご飯を与えて、惨めにならない程度に服も与えてるし、ちゃんと住まわせてあげてるんだからそれでいいじゃない。」


その時確信した。私には家族がいないんだって。

私はなんとかこの生活から抜け出さないと地獄を見るのだと。

こんな貧乏な家からさっさと抜け出さなければ!!


その時私は幾つだろうか?よく覚えてない。

そして、どうやってお金を稼げばいいのかわからなかった。

ただ、母親が体を売ればという言葉が蘇った。


流石にそれはできなかった。

私にだってプライドがある。

そのプライドがたとえ歪んでいるってわかっていても、それが私の最後の砦だ。

それが崩されたら、私は生きていけない。


幸か不幸か私は美人だった。

中学校からわけもなくモテた。

親に好かれてもいない私が学校に行けば好かれるという構図が不可思議だった。

だが、その経験が私のプライドの歪みをさらに歪ませた。



学校行っても味気がなく、私の生活はモノトーンだった。

そんな中ほんの少し、私の生活に色が差し込んだことがある。

それが春斗だった。

春斗はどういうわけか、私に話しかけてくる。

放っておいていいのに、私に話しかけるなんて物好きだなって思うくらいの関心しかなかった。


よくよく見たら春斗は小柄ながら顔かたち整っていたから付き合ってあげてもいいかな?と軽い気持ちで付き合った。飽きたらさっさと他の男と付き合えばいいし。

そこから約半月。春斗なりに頑張ったのだろうとはわかっていたけど、

本当につまらなかった。色がついたのは最初の一瞬。


春斗と一緒に散歩して東京のカフェへ行ったり、映画を見たり、水族館に行ったりのありきたりのデートコース。


そして何よりもイラついたのが門限。

いや、門限を律するほど春斗が愛されて育てられているっていう事実にイラついたのだ。


それを自覚した時自分が惨めに感じた。

こいつには戻る家があるんでしょ?

明るい家があって、美味しい手作りのご飯を食べて、

そして笑い合って暮らしてるんでしょ?

それに着ている服も持っているものもみんなブランド品で上等なもの。

そんなものを買い与えてくれる親がいるんでしょ??


自分と比較してだんだん惨めになっていくのが許さなかった。


そんなある日。街を歩いていたら、イケメンにナンパされてそのままホテル入って事をした。

今まで感じたことがないくらいに気持ちが良くって、その後も何回かやった後、

この男なら私付き合ってあげてもいいと思って、彼と付き合うようになった。


そして、春斗と別れたのに・・。

くそ!!失敗した失敗した失敗した!!


なんて浅はかだったんだろう??

私のモノトーンの毎日にでも、オブシディアンの音楽を聴いている時だけは幸せだった。

皆川朱莉が出ているドラマを見ている時は幸せだった。


私の生活に色を与えてくれる二人の子供がまさか春斗だったなんて!!!


私の歪みに歪んだプライドのせいで私は自分の中で何かを欠落したのを感じた。

元々欠落し続けている人生の中でもまだ何かを欠落するのだとわかって涙が出た。









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