第7話 やっぱりきてしまったパパ
レンが蒔いた種のおかげで、元カノのクラスの女子たちがキャットファイトをして
カオスにする・・という始まった学校の一日。
そんな日は平穏で終わらせてくれないらしい。
学食でご飯を食べて、教室で亮介と美花とレンと一緒にぼーっとして過ごしていたら、急にクラスの女子がクラスのベランダから校舎を見ていたら叫び声を上げたんだ。
「待って!待って待って!!え?あの人オブシディアンの陽人じゃない??」
「え?いやいやいや・・。そんなことないでしょ??」
その名前を聞いて僕はビクッとする。
亮介と美花とレンが急いでクラスのベランダに出る。
「「「うわぁ。きちゃった。」」」
待って待ってまって!!今その言葉は聞きたくない。
「嘘でしょ??」
「「「いや。いる。」」」
僕と三人の会話に最初に叫んだクラスの女子たちがクエスチョンを浮かべる。
そうだよね。うちの親、父親参観とか母親参観の時って完璧に変装するもん。
変装しないでくるなんてことは今までなかったのに・・。どうしたんだろう??
「やっぱりきちゃったんだ。パパ。」
僕は三人に小声で今日の朝のことを話す。
「とりあえず、春ママのところにライン入れておけ。」
「うん!」
僕は急いでママにラインを入れた。撮影だから誰も読まないと思うけど。
すぐに既読がついた。
ママ。パパ学校に来ちゃった。
え??え??どういうこと春ちゃん??
だから。パパがオブシディアンの陽人としてきちゃった。
あんのばかああああああっっっっっ!!!
⭐︎春咲陽人(パパ)視点。
春くんが学校に行ったあと、仕事をして家の掃除など家事をしながら時間を潰していた。
なんもないいつもと変わらない日常。その日常が戻ってきたことに安心したのがいけなかったのだろうか??
春くんが誘拐されたことがフラッシュバックとして蘇った。
今でもまざまざと思いだす。いくら記憶の淵に追いやっても消えてはくれない自分の罪。
なんであの時目を離してしまったんだろう?という激しい後悔。
そして、きっと迷子になってるんだろう?というあの時の自分の憎らしいほどの楽観的主観。
そして、誘拐されたとわかってからの、かけられるさまざまな言葉たち。
救われる言葉や傷つける言葉。
人間とは言葉ひとつでこんなにも救われたり地獄に落とされたりするものだとその時になってわかった。
それと同時に、朱莉さんが春くんを産んでくれた時のあの時の多幸感を思い出す。
あれが人生の中で一番ピークだったのかもしれない。
家族に恵まれなかった僕と、子役として大成しながらも、稼いだお金は全て両親に奪われていた朱莉。
そんな僕たちがふとしたことで出会って結婚して子供が生まれた時。
二人で絶対に誓ったことがある。
明るい家族を築くこと。子供をきちんと愛すること。
あれだけ手に入れたくてなかなか叶わなかった家族。
それがやっと手に入る。僕は絶対に春くんも朱莉さんも幸せにするとあの時かたく心に誓ったんだ。
それが6年で壊れるって誰が予想しただろう??
はっきり言って春くんが見つかる3年間は家からあかりがなかった。
一年目。春くんはまだ生きているって信じることができた。
二年目。希望をなんとか捨てないで生きるの限界だった。しかしその希望も
もしかしたらうっすらと投げかけていたかもしれない。
僕も朱莉さんも空気を吸って生きているだけ。
二人とも、自分を責め続けた。そしてお互いを責め続けて、
激しい喧嘩でお互いの憎しみをぶつかり合った。
でもあの時に何度もお互いの憎しみの言葉をぶつかり合わなかったら僕たちは
春くんが戻ってきてもお互いギクシャクしていただろう。
周りは別れたほうがいいと言ってくれたけど、別れるっていう選択肢はなかった。
お互い地獄だろ?とも言われたけど、僕たちはそんなことはないって言い切れた。
だって春くんの死体が出てこない限り春くんは生きているし、春くんが戻ってきたら
また家族としてやり直すのだから。
急転直下という言葉が身に染みたのは、ちょうど春くんが誘拐されて三年目の秋のことだった。
春くんが倒れているのを発見して警察に通報。警察が春くんを保護した。
春くんが警察に保護されたという時、僕はレコーディングを、朱莉さんは
ちょうど撮影が終わっていた時だと思う。
連絡が来て、僕たちは保護されてる警察に向かったんだ。
本当に春くんなのだろうか?不安だった。もしかしたら違う人かもしれない。
ちゃんと見るまで不安だった。同じ背格好の違う子なのかもしれないという不安を抱えながら・・部屋の扉を開いた。
春くんだった!!紛れもなく春くんだった!!
あの時の気持ちをどの様な言葉で言えばいいかわからない。
僕は春くんを力強く抱きしめる。
「パパ・・。」
「ママ・・。」
春くんが僕たちの顔を見て大声で泣いたことを見た時に、
僕たちは絶対に春くんをもう二度と手放さないって誓った。
春くんがちゃんと幸せになって、僕たちの元を離れるまでは
絶対に手放さないと誓ったんだ。
春くんが戻ってから徐々に前の幸せな日常へと戻っていった。
「やっぱり学校行こうかな?」
春くんの顔を見たら安心する。
ビデオ通話とかじゃなくってちゃんと自分の目で見ないと不安になる。
変装をして会いに行こうとしたけど、やめた。
春くんの父親として会いに行きたい。
その後付けにオブシディアンがついて回るなら別にいいじゃないか。
僕は春くんの父親なのだから。
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