第6話もう一人の幼馴染。冬枝レン

僕はギリギリに学校に着いた。

亮介も美花もついていたみたい。

「「おはよー」」

「おはよう。亮介。美花。」

あれ?レンはまだきていないんだ??

でもカバンは置いてるよね??


「レンはまだきていないの??」

亮介と美花は顔を見合わしてため息をつく。

「春斗を送った後さ。レンに連絡したんだよ。」

うんうん。それで。

「レンくん。春斗くん至上主義のところあるじゃない?」

至上主義というかなんていうか・・レンの優しさというか・・。

「春斗を振ったやつの顔を見てくるって言って、出て行った。

あいつ。すごい悪い顔していたから、今どうなってるかわかんね。」

あー・・。元カノかわいそ(笑)

「レンくん。めっちゃ楽しそうに出て行ったわ。」


「とりあえず。レンを連れて来ないと・・。」

僕はレンがいる場所に向かう。


目的地に着いた時に女子たちの黄色い声の歓声があがってる。

僕はひょこっと教室を見ると、レンが元カノの顎をクイっとしてる。

そして耳元で囁いて、元カノは機械仕掛けのおもちゃみたいにコクコクとうなづいてる。

「あ!春斗!!」

レンは僕を見つけ僕に向かってきてぎゅーっとする。

「レン。レン。苦しいよ。離れて離れて・・。」

僕はレンの体をポンポンと叩く。

レンはごめんと言って力を緩める。


元カノは僕の顔を見て一瞬顔を顰めるけど、レンがいるからか、別れたことなんてないような感じで、僕に声をかけようとするタイミングでレンが元カノに向かって声を上げる。

「じゃあね。深雪ちゃん。明日デートしようね?」

レンは元カノに手を振って、教室を出て行った。


レンのその声に、元カノのクラスの女子の温度が一気に冷える。

男子たちがひぃって声上げてる。


「深雪さん。あんた春斗くんと付き合っていたんじゃないの?何でレンくんとデートする約束してるのよ?」

「は?春斗と一昨日別れたけど(笑)別れたんだから誰かと付き合おうが私の勝手じゃん(笑)」

「何その言い方。別れてすぐに付き合うなんてあんたって軽い女なのね?」

「は?そっちこそ何よ?その言い方。喧嘩売ってるの??」

元カノのクラスが一気にカオスになっていく。



「レン。やりすぎだよ・・。」

名前を言いたくないから元カノって言うけどさ。僕やっぱり見る目がなかったんだな。性格キツすぎでしょ?

「別に俺はただ、彼女の顎をくいっとしてデートの約束をしただけ。何も悪いことはしてないよ。ただ遊び人の俺が他の女に手を出しただけ。それだけだし・・。」





冬枝レンは、美しい。

十人中八人は彼がにっこり笑えば、男性女性限らず自分に恋をしてるのだと錯覚を起こさせる魔性がある。

レンはそれを小さい頃から自覚している。

そして、その美しさは呪いだった。

その呪いはレンの両親さえ徐々に蝕んでいった。

レンの両親は普通の顔の普通の人だったのだ。

そしてレンが成長すればするほど、美しさが増せば増すほど、両親はお互いを疑心暗鬼になっていった。いくらDNA検査して実の子供だとわかっていても抜け出すことができなかったのだ。

そして、レンをますます虐待するようになっていく。


その両親の状態を見た、レンの祖父母たちが、レンを末端に近い親戚の冬枝家に養子を出すことになった。

そして冬枝レンになった。

冬枝家は深い愛情を持ってレンを迎えた。


冬枝レンには自分を投げ打っても守りたい人間がいる。

自分が荒れに荒れまくっていた時にでも自分を見捨てなかった人たち。

冬枝家の人間。夏影亮介、秋穂美花、春咲春斗三人の幼馴染。


俺は中学生の時に自分の中に眠ってる暴力性を赴くまま暴れていた時期がある。

ムカつくやつは片っ端から殴った。

先輩に絡まれて何度も殴られた時もあった。

顔を殴られるのは気持ちよかった。

だって殴られれば自分の顔が傷つくからだ。

傷つくと言うことは醜くなると言うことだ。

醜い!!なんて素敵な言葉なんだろう?

醜くなりたかった。綺麗とは真反対の存在になりたかった。

成長期に重なったんだろう。体もデカくなり筋力もつくようになり、

気がついたら、「美しい野獣」と言われて周りに恐れられるようになってしまった。

違う違う違う!!美しくない!ちっとも美しくないんだ!!美しさなんていらない。

俺はただ、醜くなりたいだけ。やめてくれ美しい野獣なんていうな!!



その時は流石に亮介も美花も少しだけ俺のことを避けていたと思う。

俺も、大事な友人を傷つけたくなくって極力近寄らなかった。

そんな時でも春斗はずっとそばにいてくれた。

そして、ある日俺に向かって言ったんだ。


「ねえ?気が済んだ??レンが自分が思ってるふうに醜くなれた?

でもさ。周りを見てよ。レンが醜くなろうが美しかろうが、そんなの関係なく手を差し伸べてくれる人いるじゃん。その人間たちに対してレンはどう接するの?醜いレンのまま接するの?それってもったいなくない??レンは結果的に自分で自分に呪いをかけてるんだよ?もうさ・・。いいんじゃない?その呪い解き放っても?」


俺は春斗の言葉を聞いて最初は受け入れられなかった。

でも徐々に心に入ってきた。そして家の中で号泣してしまった。

俺は春斗に救われたんだ。


俺はそれ以来真面目に学校に行くようになった。

周りは最初怖がっていたけど、春斗や亮介や美花がいたおかげで徐々に周りに溶け込んでいった。


そして現在亮介と美花には春斗の忠犬と呼ばれている。

野獣から忠犬になれるとはな・・。さすがの俺も苦笑する。


「「あ!戻ってきた。」」

亮介と美花が俺の顔を見るなりに机にやってくる。

「お前やりすぎてないよな?」

「あのクソビッチのクラス。女子同士がキャットファイトしてるって・・。」

「え?別に。ただ俺はぁ帰りがけにあの女にデートしようね。と言ってきただけだよぅ〜。」


「お前・・それをやりすぎだっつーの。」

亮介は俺の頭を引っ叩く。

春斗と美花は俺の顔を見てため息をつく。


「ふふふ・・楽しみだなぁ。あの女どうなっていくんだろう??」

俺は春斗を振った女にこれからどんな仕返しをしていこうって考え始める。


俺の表情を見て察したのか、春斗が咎めるようにいう。

「もう本当に大丈夫だからね。レン。あとは放っておこう・・ね?」

「はーい。」

「「おおー。流石に春斗(くん)の忠犬。」」


まあ。今度はこのくらいにしておくよ。

ただ、春斗をまた傷つけようとしたら今度は地獄を見せてやる。













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