第5話 パパとママのこと
昨日はとても素敵な出会いがあった。
あの後も魁斗さんとラインで会話をしていたんだ。
普段はあんまりラインが好きではないんだけどね。
昨日雑司ヶ谷のカフェに行ってよかったなぁ。
「あらあら・・。春ちゃん。楽しそうね?」
「うん!あのねあのね。昨日ね。素敵な人と友達になったの。」
朝食の準備をしながらママがそう言ってきた。
「そうなのね!友達はとても大事よ。大事にしなさいね。」
「うん!」
「よかったな。ただ。春くんの元カノみたいな人間は別に大事にしなくて良いからな。」
パパがコーヒーを淹れながら僕の頭を撫でる。
「当たり前よ!!何が相応しくないよ!!そんな女、春咲の家を踏ます訳には行かないわ!!」
ママが僕が言ったことを思い出して怒ってる。
「パパもママも大丈夫だよ。僕全然気にしていないし。」
「そうそう。恋は新しい恋で上書きしちゃいなさい。」
うん!そうするよ。でもしばらく恋はいいかな?
僕にも悪いところはあったと思うけど、人の本性に当てられて少し疲れちゃった。
パパの淹れたコーヒはいつも美味しいなぁ。
ママが作るお料理はいつも美味しい。
ふわふわのオムレツなんて最高なんだ。
「そうだ。春ちゃん。ママ明日から撮影が入るから、帰りが遅くなるからちゃんと規則正しい生活をするのよ。」
「はーい」
「陽人さん。春ちゃんを甘やかさないでよ。」
「わかってるよ。朱莉(あかり)さんは撮影に専念して。」
ママはパパに注意を促すけど、パパは僕にウィンクをしてママに手をひらひらふる。
「んもう。陽人さんったら・・。春ちゃん。門限から遅れる時はちゃんとパパに連絡するのよ。」
「そうだ!今日パパ暇だから春くんの学校に遊びにいっちゃおうかな?」
僕とママはパパの発言を聞いてギョッとした顔になって
「「それだけはやめて(なさい)!!」」
「ええーーっ。」
「ええーーっ!!じゃないわよ!陽人さんは少しは自分の立場をわかって?
あなたが行くとみんな興奮しちゃうでしょ?」
「立場って春くんのパパだけど?」
うん。そうじゃなくって・・・・。僕とママはため息をつく。
だめだ。一旦決めたら絶対にくる。
「春くん。パパが遊びにいったら迷惑かな??」
ママがパパの頭を引っ叩く。
「迷惑に決まってるでしょ?いい?あなたは父親の前にオブシディアンのボーカルという立場があるでしょ?」
ママが言ったオブシディアン。
それはパパのバンドの名前だ。
類まれなるパパの作曲能力とそれを再現する卓越な腕を持つバンドメンバー。
そして、作詞能力がないメンバーの代わりに、影メンバーの専属作詞を担当するRei
で成り立ってる。
オブシディアンのデビュー曲「青紫」がママが主役のドラマの主題歌に選ばれて、それがドラマと相乗効果で大ヒット。しばらくは泣かず飛ばずだったのだけど、
ヒットしたお金を軍資金にロンドンにバンドで移住。
その時全員英語が喋られなかったみたい。
そして、現地でさまざまなバンドやアーティストと交流をすることなる。
なんていうか・・オブシディアンのメンバー。みんなコミュ力化け物なんだよね。
そして16年前。パパの友達がハリウッドの大作に主役で出るっていうことになって
その挿入歌をオブシディアンが担当。それが世界的にヒットを飛ばして。
日本で無名なバンドが世界で有名なバンドとなって日本で逆輸入される形で日本で知られるようになって現在に至る。
ママに殴られてシュンっとしてるけど、絶対にパパは諦めないだろうなぁ・・。
ピンポーンって玄関のベルがなる。
僕は誰だろ?とおもって玄関の映像を見る。あ!ママのマネージャさんだ。
「ママ。マネージャさんが来たよ!」
ママはえ?という顔をして慌てて撮影の用意をする。
「はぁ・・。朝から疲れちゃったわ。とにかくパパははるちゃんに迷惑はかけないでね。」
そう言ってママは慌ただしく家を出た。
大丈夫かな?ママ。
「大丈夫だよ春くん。彼女、皆川朱莉は家を出たらすぐに女優になるんだよ。心配することないない。」
そうだよね。ママは芸歴はながい。子役時代には天才子役の名を欲しいままに、そして今は日本を代表する演技派の女優として日本で知られている。誘拐事件が起こってからは仕事をセーブして、出ても脇役中心だったのだけど、ネトフリオリジナルのあるドラマの演技を見た、海外の有名監督ジョージ・オルダーマンが自分の映画に出てくれないか?とオファーがあって、迷いながらも僕とパパの後押しでオファーを受けて、その振り切った演技で受賞までしなかったけど海外の映画の賞に多数ノミネートをされたのをきっかけに、また日本で見直された・・というか第二のブームが来てるらしい・・。
ママのでた作品は全部見ているけど、本当に俳優って一種の職人だなって思う。
ジョージオルダーマン監督の映画の演技を見た瞬間鳥肌立ったもん。
最後に見せた泣きの演技に絶望狂気悔恨許し・・などなど役の人生を全て詰め込んだ泣きを見せた時・・。この人本当にすごい人なんだなって思ったんだ。
その映画の後海外の監督からオファーがたくさんあるけれど、どれも断ってるみたい。それが海外には幻の女優としてまことしやかな噂が流れているらしい。
ここまで来たら都市伝説じゃない??
僕はオレンジジュースを飲んで席をたった。
「僕学校行くけど、絶対にパパ来たらだめだからね?」
「パパ春くんまでに言われて悲しい・・。」
「いや。学校中が大騒ぎになるもん。僕大人しい学校生活したいもん。」
「つれないなあ・・。しょうがない。今日は諦めるか。
よし!学校帰りにパパとデートしよう!!」
「わかったわかったから!また連絡入れるね!じゃあいってきまーす。」
僕はパパと話していたら学校行く時間ギリギリになってしまった。
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