第4話 同じ人に二回出会うっていう偶然って信じる??

昨日は失恋からの亮介と美花とお茶をして、ママと台本の読み合わせをして、

パパが帰ってきて、今度パパの新曲の歌あわせをして、なんだかんだ充実だった。


失恋の痛みっていうのは襲ってこないのはきっと充実の1日を過ごせたから。

でも、一人の時間が欲しい。今日は土曜日。

パパもママに散歩してくるね、と言って表に出た。


どこ行こうかな?そうだ!!あそこに行きたい!!

家から渋谷に出て、渋谷から副都心線に乗って、雑司ヶ谷で降りてそこから少しだけ歩いて、鬼子母神の欅並木にあるカフェ。


僕がカフェ巡りのきっかけになったカフェ。


オーナーさんが出迎えてくれて、僕はこのカフェのブレンドをいただく。

このカフェの雰囲気が好きで、のんびりしたいときは来てしまうんだ。


初めて来た時は5月くらいだったかな?欅並木の若葉が風にそよいで綺麗な音を奏でていて、それがこのカフェの雰囲気とあっていて、このカフェに一目惚れしてしまったんだ。

ただ難点は家から少し遠い。頻繁に来れないのが残念。


僕は愛用のカメラでコーヒーの写真を撮る。

映えを意識してるけど、映えってなかなか難しいよね?


コーヒーをのんびり味わおうと思っていたら、何故か隣の男性の人が気になってしまった。

ポロシャツから見える筋肉質の腕にタトゥー。長い黒髪を後ろで縛っていて、ウェリントン型の眼鏡をかけてるお兄さん。

お店の本棚から本を借りた本を真剣に読んでる。その雰囲気がとても静謐で一瞬目が離せなくなってしまった。


いけないけない。不審者に思われちゃうよ。

僕は少し冷めかけてきたコーヒーを口にして、しばらくしてからお店を出た。


さて、どうしようかな?ここまできたら足を伸ばして

東京カテドラル大聖堂にでも行こうかな?

丹下健三さんの建築が好きなんだよね。


僕はカテドラル大聖堂の中に入って、座って祈りを捧げる。

静謐な時間の中にある静謐な空間。

本当に落ち着くなぁ・・。この場所。


カテドラルを出てから目の前にあるカフェに入る。

ここのカフェのテラス席に座ってのんびりするのが特に好きなんだ。

運がいいとチャペルの音が聞こえてくるんだよ。


今日は晴天で気持ちいい風も通ってる。

まだ門限まで時間はある。

ここから、早稲田の方にまで出ちゃおう。

うん。そうしよう!!


早稲田にも大好きな建築がある。

日本のガウディと言われている建築家の作品。

僕はその建築を思い浮かべて、ワクワクしながらその場所に向かう。


いつ見ても最高なんだよなぁ。

僕が外壁の写真を撮りながら建築を堪能していたら、ぶつかってしまった。

「ごめんなさい。大丈夫ですか?あ!」

僕はぶつかった人の顔を見て思わず声を上げてしまった。


「大丈夫です。君こそ大丈夫かい?ごめんね。建築に夢中になってしまって。」

「いえいえ・・こちらこそすみません。あのう先ほど雑司ヶ谷のカフェにいませんでしたか?」

僕はさっき入った雑司ヶ谷のカフェの名前をあげる。

「え?いたけど・・。」

「僕隣の席に座っていたんですよ。」

「そうだったのか。あそこ好きなんだよ。」

「そうなんですね!あそこのカフェ落ち着いていていいですよね?僕も好きなんです!」

「「・・・。」」


あ・会話が終わってしまった。

食い気味に好きなんです!!って言わなきゃよかったよ。


「ふふ・・元気だなぁ。確かにあそこコーヒーも美味しいし、落ち着くからいいよな。君は建築が好きなのか?」

食い気味に言ったの笑って流してくれた。大人だ!

「はい好きです!お兄さんは好きなんですか?」

「ああ。見るのは好きだね。詳しいのはわからないけどね。」

そう言って肩をすくめながら笑うのが絵になる。


「あ・・あのう。もしよかったらもう少しお話ししませんか?」

僕はこの楽しい時間を少しだけ伸ばしたくて、お兄さんに声をかけた。

お兄さんはもちろんと言って、僕は近くの喫茶店へお兄さんを連れて行く。


「改めまして、こんにちは。僕は春咲春斗といいます。」

「こちらこそ改めましてこんにちは。俺の名前は宮下魁斗です。」

僕たちはコーヒーを飲みながら、先ほどの会話の続きをしていく。

建築の話や、お気に入りのカフェの話。好きな絵の話、好きな音楽の話

などなど・・時間があっという間に過ぎていってしまった。

僕が時計を見たら、そろそろ帰る時間だった。


「あ・・あのう。僕から誘ったのに申し訳ないのですが、そろそろ家に帰る時間でして・・。」

魁斗さんはそう言って僕を見て携帯を差し出す。

「連絡先交換しよう。また会ってお話ししよう。」

僕は嬉しくなってコクコクとうなづいてしまう。

携帯を出して連絡先を交換したんだ。


同じ人に二回出会う偶然って信じる?って聞かれたら、そんなドラマではあるまいしって経験していなかったら答えていたかもしないし、なんなら誰かがそうなるように仕組んだかもしれないっていうこともあるかもしれない。


でもそんなことが関係ないくらいに、魁斗さんと出会って会話した時間がとても楽しかったんだ。



思えば、これが僕と魁斗さんの始まりの出会い。

その時の僕は知らなかったんだ。魁斗さんに恋をするなんて・・。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る