第2話 情報屋とハッカー

情報屋ーーー八百万やおよろず

女性か男性か分からないスタイルのプレイヤー。


〈リアルエクスペリエンス〉きっての暗部や裏社会を知る情報屋と言われ、望めば現れるという半分胡散臭いプレイヤー。


(ってか望めば現れる時点で黒確定なのよね)


八百万に誘導されていると知りながらカフェ、本屋、ゲーセンを巡る。


そして、最後に行き着いたのがバンドなどに使われる地下ステージ。


「やあ、君は誰だろう? いくら調べてもプレイヤー名が現れない」


目の前に現れた椅子にドカッとわざと音を立てて座る。


「むしろ聞きたい事があるんじゃないの」

「そうだね、僕が本物のハッカーなら特定出来たが生憎本物じゃないんだよ」

「しらばっくれなくて良いんだよ! 管理人! そうじゃなきゃ現れないんだよ!」

「••••••君たちが探している暗号兵器なんて物は存在しない」


八百万が人差し指を突き出す。

「これが分かるかい?」

(能力系のテストか私の【勘による分析力】デリュージョンが告げている)

「能力のテストだろ」


(半覚醒、ではないな。理解力が驚くほど高い。だがその能力を得ていない)


「また来ると良い。君は見込みがある」

「おい! ちゃんと答えただろう!」

「君には紹介しなくても向こうからやってくるさ、僕の勘がそう告げている」




気がつくとアパートの自身の家の扉の取手に手を掛けた状態だった。


ゾクリ


何故だか全身がゾワゾワと得体の知れない恐怖に覆われた。




ーーーー


ハッカーの居る家には膨大なまでの電力が居る。

奥に進むに連れ監視カメラの数も増えていく。


(ハッカーの居る家さえ特定できれば)



監視カメラが多い道を進む。


監視カメラから隠れての歩行には【目】の負担になるがゲームなら。


(このまま【縮地】で歩行し距離を詰める)


涼宮末彦 

コードネーム 【プルーデント・イェット・シャロウ】

能力名 魔眼ハーモニー・アジャストメント 


本野読のコードネームは【ハヴィング・プライド】


本野読は本来なら涼宮末彦の付属品でしか無い。


だが、涼宮末彦がそれを良しとしない。

彼自身が彼女を一個人の人間として尊重している。


勿論、本野読もそれを知って何かあれば代わりに死ぬ覚悟や盾になるのが当たり前だと思ってすらいる。


涼宮末彦の人格が本野読という組織に従うだけのロボットから解放し、結果見えない従属を産んでいる。


本野読はその生き方しか知らない。

それは涼宮末彦もーーー同じ。


(山奥まで続いているのか)


バレットバレル國の聖地と言われる不可侵領域の山。空間に赤い文字で『推奨Lv50』それを鼻で笑ってフェンスに手を掛け(地雷とかありませんように)と乗り越えーーー無事着地する。


(まあ地雷とかあっても魔眼で透視すれば問題は無い。問題なのは)


監視カメラを避けるために【縮地】を使う事。


(どうする? 引き返すか? 警備が厳重過ぎる一体何があるんだ?)


(だけどここまで来て手掛かり無しだとアイツに笑われる)


山奥に進む。


進んで猛スピードで引き返した。


ソレは追って来る。


キメラだ。



(なんちゅーもんを山で飼ってるんだよ!!)



フェンスを乗り越える頃には、威嚇だけし動かないキメラを見て(どうやらソコから先は進めない)と分かるととりあえずVRゲーム内にある『スクリーンショット』機能を使いハヴィングの元に転送する。



(急いで逃げたから監視カメラに映って無いと良いけど)



キメラは涼宮末彦を見つめ続け、威嚇しながら。


その視野に映った情報は山奥にある研究所に転送されている。現在進行形で。



シャロウは鈍感だが鈍いんだかかなりゆったりとした動作で逃げようとする。



山奥の林で枝に絡まりスナイパーライフルをシャロウに狙い定める人物が居た。



一瞬の光。一瞬の煌めきを山の林の方からしたのを涼宮末彦は見逃さなかった。


弾丸を躱すシャロウ。


スナイパーは(釣られた!? まさかこの距離で!?)その思考の隙を付いたようにーーーもし思考をしていなければシャロウの移動手段が分かっていたかもしれないが、そんな余裕相手には無く、数十キロ離れた山と民家の間に居た少年が目の前に現れるなんて誰が思うか。


「あ、」

ーーーお前は何者なんだ?


言いかけた言葉は喉元に喰らった手刀で、記憶の底に沈んだ。


狙撃手が着ていた服に着替えて研究所の方角を目指す。


(なんだ、近づけば近づくほど山の中に巨大な、それこそアウトレットモール並の広さ。地下に何がある? 高密度エネルギーが研究所の下からいくつものものが存在してーーー)


『止まりなさい』


(どうやら監視カメラにはアナウンス用の拡声器が備えられているらしい)


『武器を捨てなさい』


(スナイパーライフルを上に放り上げた所で監視カメラは固定されている)


スナイパーライフルを捨てるフリして監視カメラに向かって狙撃、監視カメラを破壊。


そのまま高い木に走り登り一望出来る場所で街に降り立つ。


どうやら森全体とはまだまだ距離が近い。


そのまま追跡を避けるためわざと入り組んだ道順を選ぶ。



自宅のアパート1LDKの一室に手を掛ける。


開いた瞬間何故か銃を構えたハヴィングが居た。いや、知ってはいたがなんで?


「ハヴィング?」


「あ、アンタなのね? シャロウーー」



そこから先は互いに起きた事の情報交換だった。



「やっぱり情報屋なんじゃない?」

シャロウはスナイパーライフルをタンスにしまいミリタリー服からラフな服に着替える。


ミリタリー服のポケットをひっくり返し鍵(恐らくロッカーの)とIDカードを手に入れた。



〈スナイパーライフルを【タンス】にしまいました〉


〈ロッカーの鍵とIDカードを入手しました〉



「なるほど視認して自覚するまで入手扱いにはならないと」


「楽しんでる?」

「そりゃあな」

「私なんてホラーよホラー、幻影掴まされた気分」

「ハヴィングの言う通り情報屋からあたるのが正しいだろう」

膝の上で頬杖付くハヴィング。

「でもそれには能力がいるみたい」

「それこそ向こうから来るんだろ? それより」


VR内の【念話】が頭にさっきから鳴り響いている。


((出勤の時間かあ〜))


本野読がキャバ嬢なら

涼宮末彦はホストである。










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