第13話

「はい。ホット缶コーヒーよ。私のことを助けてくれたから、アイドルになったら必ず……そうねえ、特等席に座って観ていていいわよ。候補はたくさんいるんだからね。光栄なことよ……それにしても、校舎や友達が無事で良かったわ。ほんと、黒い物体を倒してくれた光太郎のお蔭ねえ」


 藍川がグラウンドの常緑樹の傍の光太郎と佳山に、ホット缶コーヒーをビニール袋から、渡した。4月。春といっても、まだ肌寒い日々が続いている。


 藍川の取り巻きも、光太郎に寄って来た。


「あ、そうだ。藍川? アレやってくれないか?」


 唐突に光太郎は、藍川にいつものヤツを頼んだ。


「え? いいけど?」


 藍川は頷くと、光太郎にゆっくりと手を差し伸べた。

 藍川の取り巻きが騒いだ。


「キャー、藍川さん。きっと、女神さまにその力を与えられたんですよ」

「そうですよ。藍川さんは、なんといっても特別ですからね」

「きっと、そうですわ」


 すると、光太郎の背に翼が生えた。

 それはあの時に、教室で光太郎を守った光り輝く黄金色の翼である。

 

 光太郎は、きっとこの翼のお蔭で身体能力が更に飛躍的に増大したのだろうと、考えていた。


「ふん!」


 そう考えていたので、光太郎は疑いもなしに空に向かって、思いっ切りジャンプした。やっぱり、身体が綿のように軽くなっている。翼をばたつかせて、ビュウビュウと緑色の空まで飛び上がると、下方を見た。


 遥か下には、小さくなった天台学校があった。


「おっと、ここから飲む缶コーヒーは、きっと美味いんだろうな」

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