第12話 前兆現象 バクテリア

 それから、数日が経った。

 そして、光太郎の周囲で異変が起きだした。


 今のところは、無害だが大気は何故かだんだんと緑色がかっていった。

 地上を照らす真っ赤な太陽も緑色で、交差点を歩く人々も、道路を走る車も、どこか緑がかっている。


 つくば市で、最初に生物に異変が起きたのは、野鳥たちだった。空を飛んでいる野鳥だちが、一斉に不気味な鳴き声をするようになった。


 その次は、つくば市の飼育頭数の103万の豚や、飼養されているホルスタイン。ブロイラーなどにも、鳴き声や姿形も変化していった。


 盛んな水稲栽培の水田面積4900ヘクタールも、全て緑色になってしまった。



 光太郎は、ここ天台学校のグラウンドにいた。


 幼馴染の鈴姉がいない今、実家に帰っても辛いだけだった。

 隣の家に住んでいた鈴姉は、もう帰ってこないという事実をいつまでも、光太郎は否定したかった。


「あのさあ。光太郎? 星宗さまは、下山したんじゃ、ないんじゃないかな?」

「ああーん?」

「いつもはどうしてるのか、さっぱりだけどな。きっと、逃げたわけじゃなくて。どこかに隠れてるんじゃないのか?」

「お前……なんで、よく知ってるんだよ? 星宗さまのこと」

「だって、きっと、美人だろ。その星宗さまわ。俺、美人のこととなると一日中考えてしまうんだよ」

「あぶないやつー」

 

 会ってもいない星宗という人物に、ありそうな推理をする佳山に光太郎は、呆れてせせら笑って……ひいた。

 

 佳山も実家が大変になったそうで、天台学校で寝泊まりしている。

 もともと、光太郎と佳山は天文学部で、学校での寝泊まりは苦ではなかった。


 校舎は至って、無事だった。

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