第5話

 地面に、車体がめり込んだ近くの普通自動車から、取り付けられている後部座席のドアが勢いよく開いていった。中から、血塗れの得体の知れない生物が何十体と這い出てくる。


「う、うわ! なんだあれ?!」

「光太郎! 鈴姉はもう助からない! 逃げよう!」

「って、ふざけんなーーー!」


 光太郎はわけもわからず。その得体の知れない生物を殴った。けれど、血塗れのその生物は、微動だにしなかった。


「何やってるんだ! 光太郎!」


 佳山がそんな光太郎を見かねて、羽交い絞めにすると、ずるずると後ろに引っ張っていった。


「離せ! 鈴姉にまだ何も言ってないんだ!」

「そんなことは後で良いから! 逃げるぞ! うわっ! また降ってきた!」

「……鈴姉……が……」


 数十台の普通自動車が後からも、こっちに飛んできていた。

 空からカプセルが地上へと、まだ降ってきている。

 地面にめり込んだ車体からドアを開けて、得体の知れない生物が這い出てきた。


 光太郎と佳山は、しばらくすると、大勢の血塗れの生物に囲まれてしまった。どうやら、血塗れの得体が知れない生物は、元は人間なんじゃないだろうか? と、冷静さを取り戻してきた光太郎は、思った。


 何故なら、みんな血だらけで、それに、今まで降って来た車に乗っているからだ。それに、無残になった服のようなものを着ている。


 辺りは、地上へ降り続けるカプセルによって、地獄絵図だった。


「あ! あそこなら! 光太郎! 体当たりしながら全速力だ!」

「……くそっ!」


 佳山が率先して、血塗れの生物たちの囲みの弱い箇所を、光太郎と思いっ切り体当たりをしながら突っ走った。


 気がつくと、校舎全体が得体の知れない生物から、逃げ惑う生徒や教師たちで大パニックになっていた。

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