第2話

「星宗さまー、星宗さまー。お客様ですよー」


 後ろの方からスタスタと歩きながら、老婆の呼び声が鳴り響く。

 一体。星宗さまはどこにいるのだろう?


 確か、星宗さまは聞くところによると、とても綺麗な妙齢の女性だということだった。


 あるいは、こうも聞いている。


 年端のいかない絶世の美少女だとも。


 もう一つ噂がある。


 絶世の美女だが、両目とも目が見えないのだそうだ。


 あとは、こうも言われている。


 本当は星宗という女は、存在すらしていないのでは……とも……。


 梶野が星降る神社の最奥に差し掛かると、辺りは急に薄暗くなった。


 と、その時。

 ポーンっと、ボールが高く跳ねる音がした。


 音の在処を探し当てようとすると……。

 軽い着地音の後に、コロコロと手鞠がこちらへ転がって来た。


 梶野は正直にそう思った。

 丁度、廊下に垂れ下がる紅い木の傍で、佇んでいる巫女装束の女がいた。

 きっと、彼女が噂の星宗だろう。

 

「あら? どちらさまで? ここへは神威しか入れないのですが?」

「神威?」

「ええ。そうですよ。ほら、あなたの後ろに……」

「え? ええと……ひっ! ひええええ!!」


 梶野の後ろには、目を大きく開けても、その全体が収まらないほどの恐ろしく巨大で、神々しい淡い光を纏った人がいた。だが、それと同時に、巨大な人が梶野を睨むと、その光がなんとも恐ろしいギラギラしとした照射へと変わり。


 やがて、光は梶野をゆっくりと包み込んでしまった……。

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