短編集

下横カルミア

2024.06

第1話 おばあちゃん家の麦茶

 なつやすみになったら、わたしたちは田舎いなかのおばあちゃんのいえく。

 ふくとか宿しゅくだいとかのもつぜんボストンバッグにれて、あとくるまるだけ。

 おばあちゃんのいえうみなしけんだから、とうぶんみずとはおわかれしないといけない。


 おとうさんがうんてんせきすわる。

 おかあさんがじょしゅせきすわる。

 わたしがうしろのなかせきすわる。

 おねえちゃんとおとうとがわたしのりょうどなりすわる。


 わたしはおとうさんのきなきょくきながらゆっくりたいのに、おねえちゃんはおかあさんとはなししててうるさいし、おとうとは3DSでうるさいからられない。

 でもいたらてて、おばあちゃんのいえいてる。


 それでおねえちゃんがわたしをこす。

 はらつ。



 おばあちゃんとおじいちゃんは、げんかんまえでわたしたちをむかえてくれる。

 わたしたちどもは、だれないだだっぴろしつもついて、あとはもうかくゆうにする。


 おばあちゃんはだいどころでスイカをりにった。

 おじいちゃんはながびすぎたくさりにった。

 おとうさんとおかあさんはぶつだんわせにった。

 おねえちゃんはスケッチブックをってそとた。

 おとうとむしあみってそとた。

 わたしはりたたみテーブルをひろげて宿しゅくだいをする。



 しょうける。

 かぜはいってくる。


 すずしい。

 いませんぷうがないから、これでまんしないと。


 えんがわふうりんけられてある。

 そらいっぱいにおおきなにゅうどうぐもめている。


 やまれいみどりいろ

 まばらにふるいええる。


 なつってかんじのするしき


 わたしはもどってけいさんドリルをひら いた。

 えんぴつって、カリカリちまちますうく。



 ふうりんがチリンチリンってる。

 セミがミンミンおおごえす。

 たまにけいトラックがはしる。





 おばあちゃんがわたしのまえぶ。

 く。



宿しゅく だいがんっててえらいね。むぎちゃあるけど、いるかい?」


「いる」




 おばあちゃんはだいどころもどった。


 おばあちゃんちかくはんぼとはたけしかない。

 どうはんばいすくない。


 コンビニはあるけど、とおい。

 くるまで30ぷんくらいはしらせないとない。

 だからペットボトルのおちゃえない。



 おばあちゃんはむぎちゃをやかんでかしてつくる。

 だからいえでいつもんでるむぎちゃいろちがう。


 おばあちゃんのむぎちゃほうが、いろい。

 でもどっちのむぎちゃしいのはほんとう


 おばあちゃんがつくむぎちゃは、なんか、ひとつくったってかんじがしてき。



 おばあちゃんがもどってきた。

 りょうでおぼんっている。


 コップのなかこおりが3はいったむぎちゃがある。

 やっぱりいろい。



 わたしはえんぴついた。

 おばあちゃんはゆっくりしゃがんで、コップをいた。



「ありがとう」


「はいよ」


「いただきます」



 わたしはコップをって、ごくごくんだ。

 くちなかいっぱいにキンキンのむぎちゃひろがる。


 しくてすずしくなるんだけど、でもつめたすぎてとりはだっちゃう。

 あとさむい。


 おばあちゃんはどっこいしょとこしげた。



「それはなん宿しゅくだいだい?」


さんすうぶんすうのたしざんしてる」


「そうかい。むずかしいかい?」


やくぶんがちょっとむずかしいけど、でもゆっくりやったらけるから、そこまでむずかしくない」


「そうかいそうかい。なにかあったらいつでもばあちゃんにおい。いいかい?」


「うん、いいよ。ありがとう」



 おばあちゃんはおぼんってもどっていった。


 コップのそとがわにあるみずく。

 れてわるくなる。

 ハンカチでく。


 おばあちゃんがもどってきた。



。さっきったスイカべるかい?」



 ちょっとまよった。

 ほんとうはキリがいいところまでわらせたかった。


 でもこのまえ、テレビでべんきょうからいったんはなれるときはちゅうはんわらせてからのほうがいいってっていたのをおもした。



べる」



 おばあちゃんはまただいどころった。


 おばあちゃんのおさらは、どれもおおきい。

 だからひろげたドリルやもんだいしゅういったんもどさないといけない。

 ついでにうと、コップもちょっとおおきい。


 宿しゅくだいいっしきをテーブルのすみっこにいた。


 おばあちゃんがおさらりょうってた。

 スイカがいっぱいある。

 やっぱりおさらおおきい。


 おばあちゃんはおさらをテーブルのうえいた。

 それからそうにわたしをた。



「おや、宿しゅくだいやめちゃったのかい? きゅうけいかい?」


きゅうけい。ものをべながらなにかするのってぎょうわるいから」


えらいねえ、は」


えらくない。つう



 つよがって、えらくないってっちゃった。

 ほんとうはおばあちゃんにえらいってってもらえて、ちょっとうれしかった。


 でもできるだけかおさないようにした。

 められてがってるっておもわれるのが、ずかしいから。


 わたしはいただきますってってからスイカをべた。

 シャリっていういいおとがする。

 あまくてしい。



あまいものをべると、あたまかいてんはやくなるからねえ」



 かいがわにおばあちゃんがすわった。

 おばあちゃんもスイカをべた。



「ああ、あまくてしいねえ」


「そうだね」



 げんかんからドアがガラガラおとこえた。



「ただいまー」



 おねえちゃんのこえがした。

 こっちにちかづいてきている。

 あしおとがうるさいからすぐにかった。



「あ、スイカべてる。いいな。わたしもべたい」


「おかえり、あらってからべにおいで」


「もうあらったよ」


「おねえちゃん、みぎくろい。へんうそつかないで」



 おねえちゃんはギクリとかおをこわばらせた。

 マンガみたいにかたまっている。



「……はぁ~い」



 おねえちゃんはむぎわらぼうとスケッチブックをいて、しぶしぶせんめんじょった。

 おばあちゃんはそれをてふふとわらった。



はしっかりしてるね」


「おねえちゃんがあんなだから、わたしがしっかりしないとダメなの」


えらいねえ。なんだかがおねえちゃんみたいだね」



 わたしがおねえちゃん。


 おとうとのおねえちゃんならいつもそうだけど、おねえちゃんのおねえちゃんってわれると、なんだかわるはしなかった。

 そんなことじゃぜんぜんりない、すごくうれしかった。


 だんだんくちもとがにやけてくる。

 おばあちゃんにかれないように、スイカをガツガツべた。


 ひっべてるからしろいところもべてるし、たぶんたねんでる。

 なんならおばあちゃんはもういてるとおもう。


 こうからドタドタとおとがした。

 こっちにちかづいてきている。

 えんがわからおねえちゃんがてきた。



あらってきたよー!」



 かんからしてうがいをしていないことがかった。

 あらいうがいをセットでやってもそんなにかんかからないんだから、もっとにやればいいのに。


 でもこれじょうなにかをうのはめんどくさかったから、なにわないことにした。


 おねえちゃんはスイカを1ってえんがわすわった。

 わたしもスイカをおかわりした。



そとなにいてきたんだい?」


「んっとねー、はなとか、っぱとか、さかなとか、あ、すっごいれいなセミのがらあったよ!」



 おねえちゃんはポケットにんだ。

 スイカをかたったまま、それをしてせてきた。

 でもなかにあったのは、ただのちゃいろいカケラだった。



「あれ、ぐちゃぐちゃになっちゃった。でもほんとにれいだったんだよ!」


きたないからはやててよ」



 おねえちゃんはえんがわもどり、パッパッパッとそれをてた。

 おばあちゃんはなにいたそうにしていた。


 けっきょくなにもわずに、おばあちゃんはわったスイカのかわをおさらもどした。

 ティッシュでいた。



「あ、でもねでもね、はなれいけたんだよ。て」



 おねえちゃんはかわだけになったスイカをおさらうえいて、そのへんにほっぽいていたスケッチブックをおばあちゃんにせた。



「あらあ、じょうだねえ」


「ここのはなびらのとことかがんったよ!」



 こんはわたしにせた。

 おねえちゃんのしゃしんみたいにこまかい。

 えんぴついてるからしろくろで、むかしのテレビみたい。


 わたしはおねえちゃんのき。

 でもこれをうとからかってくるから、わないようにしてる。


 わたしもスイカをわった。

 てきたたねをティッシュにくるんでてた。


 またげんかんからドアをガラガラけるおとがした。



「ただいまー」



 おとうとかえってきた。


 おねえちゃんみたいにすぐこっちにないから、おとうとはちゃんとあらいうがいをしていることがかった。


 おとうとえんがわからた。



「あ、スイカ。オレもべる」



 おとうとからっぽのむしかごとむしあみえんがわいた。

 おねえちゃんががっておとうといた。



「あれー、かごのなかからっぽだよ。さっきあんなにむしたじゃん、ぜんがしちゃったの?」


「うん、ともだちがさ、かわいそうだからいえかえしてやれってってたから」


「ふふふ、やさしいねえ、は」


「えへへへ」



 おばあちゃんにめられて、おとうとれくさそうにわらった。

 ひとたおすゲームばっかやってるのに、こういうところはちゃんといのちだいにしてる。

 へんなの。



ねえ、オレえらい?」


「うん、えら いよ」


「えへへへ」



 さっきおばあちゃんにめられてよろこんだばっかなのに、わたしにまたいてきてまたよろこんでる。


 おとうとはニコニコしながらわたしのとなりすわった。

 そしてわせた。



「いただきます!」



 それからスイカを1ってべた。

 ほんと、せいかくはおねえちゃんとそっくりなのに、こういうところはちゃんとしてる。

 ちゃんとしてるんだかしてないんだかかんない。




 おさらにあったスイカはぜんなくなった。

 おばあちゃんはおひるはんつくりにまただいどころもどった。


 おねえちゃんとおとうとえんがわで3DSであそんでいる。

 わたしは宿しゅくだいさいかいした。


 むぎちゃぜんなくなった。

 こおりがカランとおとてた。

 こおりもだいぶちいさくなった。


 おとうさんとおかあさんがきんじょあいさつめぐりからかえってきた。

 おじいちゃんもくさりからかえってきた。


 おばあちゃんがそうめんをつくった。

 わたしも宿しゅくだいさんすうドリルが1かたづいた。


 これからおひるはん


 わたしはみんなのおさらとおはしってきた。

 おねえちゃんがれいぞうからめんつゆをってきた。

 おとうとむぎちゃってきた。


 おじいちゃんがはたけれたなつさいってきた。

 今日きょうのおかず。

 トマトとかキュウリとかがったじょうたいでおさらならべられている。

 しんせんしいとおもう。


 めんつゆとむぎちゃいろているから、ちがえないようにしないと。


 おかあさんがさいばしでそうめんをけた。

 わたしたちはわせていただきますとった。




 おひるはんあまった。

 だからおかずふくめてぜん今日きょうゆうはんになる。

 たぶんスイカをさきべちゃったから、おなかいっぱいになっちゃったんだとおもう。


 お姉ちゃんがちがえてめんつゆをコップに、むぎちゃをそうめんにかけてしまった。

 おかげでわたしはむぎちゃ(めんつゆ)をもうとコップをってくちふくんだときにおもいきりし、テーブルをびしゃびしゃにした。



 おばあちゃんはおさいほうをしにぶんった。

 おとうさんとおかあさんはおじいちゃんといっしょはたけった。


 わたしはいまえんがわで、しょしつからりたほんんでいる。


 おねえちゃんとおとうといっしょえんがわる。

 でもほんんでるわけじゃなくて、タオルケットを2使つかっておひるしてる。


 ふうりんがチリリンっておとす。

 いいBGMになる。

 そろそろほんかくてきあつくなってきた。


 ほんにしおりをはさんでもどると、おじいちゃんがせんぷうってきていた。



「あ、おじいちゃんおかえり」


「ただいま、あついだら。せんぷうでもつけたらええがん」


「うん、つける」



 コンセントをし、でんげんをつけた。

 そとよりすずしいかぜがくる。

 ここでほんもう。



「あー、すずしいなあ。ああ、ケーキがあるんだった。うだか?」


べる」



 おじいちゃんはだいどころ った。

 わたしはからだやさないていきょほんんだ。

 おねえちゃんがふとがった。



「あれー、せんぷうある」


「ケーキもあるっておじいちゃんってたよ」


「えっ、ほんと!?」



 いまさっきまでねむそうにをこすっていたのに、ケーキといただけでおねえちゃんはきた。

 タオルケットをけ、おとうとをばしばしたたく。



! きて、! ケーキだって!」



 おとうとめいわくそうにかおゆがめ、ける。

 ゆっくりからだこす。

 ねむたそうにをこする。



「んん……なに? ケーキ?」


「そう、ケーキ! おじいちゃんがあるって!」


「オレいまケーキべるぶんじゃない」



 おじいちゃんがもどってきた。



、ケーキ……ああ、なんなん。2きたんか。ちょいちない、もう2ってくるけ」



 おじいちゃんはわたしにぼうアイスをわたして、まただいどころった。

 それをておねえちゃんはぜっした。



「え……なにそれ」


「アイス」


「そうじゃなくてさ」


「アイスっておじいちゃんでケーキじゃん」


「うわー! そうだった!」



 おねえちゃんはあたまかかえてよこになった。

 あしをばたつかせている。



「そうだったー! おじいちゃん、アイスのことケーキってうんだった!」


「あー、アイスならべる。いつものやつだよね。べたいべたい」



 おじいちゃんがもどってきた。

 ケーキことアイスをおとうとわたす。



、ほいケーキ」


「ありがと」


「あ、おじいちゃん、おねえちゃんケーキいらないんだって」


「いるいるいるぅ! おじいちゃん、ってることうそだから!」


「そうなん? じゃあほい、けるまえにはよいな」


「おじいちゃんありがとう」



 2はアイスをり、せんぷうまえじんった。

 おかげでわたしのほうにはいっこうかぜがこなくなった。


 おじいちゃんとわたしはもくもくとアイスをべる。

 かぜまわってこないからじゃっかんあつい。


 わたしはアイスをべながら、くもながれていくところをている。

 かぜがないからうごくのもおそい。


 おじいちゃんはアイスをべながらしんぶんんでいる。


 おねえちゃんとおとうとせんぷうかおちかづけ、「ああぁぁぁああ」とこえした。

 まいとしまいにちよくきないなとおもう。



「ワレワレハウチュウジンダー」



 おねえちゃんだってうそついてるじゃん。



なかたいへんだなあ、


「そうだね。うえしたのおしないといけないから」


おなじことをばあさんもっとったわ」


「おばあちゃんも?」


「だーで」


「ふーん……」



 おばあちゃん、わたしとおななかだったんだ。

 おばあちゃんにちょっとだけしんきんかんいた。

 もとからちかかったけど。



「おじいちゃん、はたけいいの? おとうさんとおかあさんほっぽいて」


「あと5ふんもどるわいな」



 くつしたゆかにすれるようなおとがした。


 いまこのいえるのはわたしたちとおばあちゃんしかないから、おばあちゃんがこっちにたとかった。


 そうどおり、おばあちゃんがえんがわからかおのぞかせた。

 おばあちゃんはしずかにあるくから、たまにうしろにるとかなくてビクッとする。



「あらあ、じいさんかえってきてらしたの。おかえりなさい」


「ああ」



 おばあちゃんはせんぷうじんっている2た。



「これ。あんまりちかいとからだえるよ」


「はあぁぁいいぃ」



 2はおばあちゃんのほうずにった。

 てきとうへんされたのに、おばあちゃんはにこにこしたまま。



「スイカんときみたいにアイスべすぎてばんはんべられんくならんようにね」


「うん、かった」



 2いてないからわたしがこたえた。

 おばあちゃんはもどっていった。





 ゆうはん今日きょうのおひるはんのこり。

 そうめんとなつさい


 こんはおねえちゃんはむぎちゃとめんつゆをちがえなかった。

 わりにおとうとちがえた。


 だからわたしたちはコップにそうめんをれ、おちゃわんむぎちゃんだ。

 さすがに2かいとなるともうれた。





 ごはんべたあとにわはなをした。

 おねえちゃんとおとうといきおいよくはなりょうってまわした。


 わたしは大人おとなたちとせんこうはなをした。

 わたしがいちばんはやちた。


 ねずみはないかけられているおねえちゃんとおとうとが、2でキャッキャとわらっていた。

 またバカなことやってるってあきれたはんめん、ちょっとだけなかれてもらえばよかったっておもったのはないしょ



 るときはおねえちゃん、わたし、おとうとじゅんで、かわになってた。

 田舎いなかむしがすごいからひろげた。


 むしなかったけど、カエルがゲーゲーうるさかった。

「ケロケロ」かわいいなんてもんじゃない。

「ンゲゲゲゲゲゲゲゲ」ってごえだった。


 なつだからこわはなしでもしようとおねえちゃんがった。

 でもけっきょくなにかばなくて、すぐにた。


 ほしがすごくれいだった。

 あまがわがあった。

 ながぼしつけた。

 いえほしちてきたとおもったら、ホタルがんでいた。

 すっごくとってもれいだった。


 むしきらいだけど、ホタルはれいだからき。

 でもひかってないホタルはきらい。


 ながぼしあった、ホタルてるって、おねえちゃんとおとうとおうとした。

 でもそのころには2ともていた。


 ちょっとムスッとした。

 かたがないからわたしもた。





 どこかのいえのニワトリがいた。

 わたしはそれでめた。

 きてみがいてえた。


 おじいちゃんがにわでラジオたいそうをしていた。

 わたしもざった。


 ラジオたいそうのスタンプをしてとった。

 スタンプがなかったからいんかんしてもらった。


 あさしずか。

 むししずか。


 だいどころでおばあちゃんとおかあさんがあさはんつくっているおとしかこえない。

 ざかなしるにおいがした。



 おねえちゃんとおとうとはまだきていなかった。

 わたしよりはやたのに、わたしよりきるのがおそい。

 いつもかししてるから、そのはんどうがきたんだとおもう。


 わたしはぶんとんたたんだ。

 れにれようとしたけど、とどかなかった。

 おとうさんをんで、しまってもらった。


 ついでにおんどくいてもらった。

 がんってはきはきんだからめられた。

 うれしかった。


 おとうさんはこういうときのためのスタンプをっていたから(ほんとうはおかあさんが2つってきていたのを、おとうさんがかたほうっていた)、おんどくカードにスタンプをしてもらった。

 すごくかわいいネコちゃんのスタンプだった。



 あさはんかんになって、やっと2きてきた。

 わたしたちはパクパクべたけど、2はまだねむくてとろとろべてた。


 わたしがわっても2ながらべてた。

 でも8ぎたらいつもどおりになってた。











 1にち、2、1しゅうかんと、つぎつぎなつやすみはぎていった。






 きょねんつくったみつった。




 かわさかなった。




 おはかまいりにった。




 もりたんけんした。




 どうくつたんけんした。




 とりいかけた。




 ねこいかけた。




 さるいかけられた。




 カブトムシとクワガタをたたかわせた。

 カブトムシがった。




 おとうとがヒルにまれた。

 おとうさんにカットバンをってもらった。




 じんじゃあそびにった。

 おにごっこやかくれんぼをした。




 いえにムカデがてきた。

 おばあちゃんがさっちゅうざいをドンってとしてつぶした。




 いえにゴキブリがてきた。

 おばあちゃんがしんぶんまるめてつぶした。




 かわおよいだ。

 さかなた。

 おとうとさかなきょうそうした。

 さかなあっしょうだった。




 ひまわりばたけった。

 かんしてるおじさんとおばさんからひまわりを3ぼんもらった。

 くつばこうえびんいて、そこにけた。

 おねえちゃんはそれをスケッチした。




 アライグマがはたけにいたずらをしていた。

 おおきなおとしてはらった。

 おじいちゃんからおづかいをもらった。

 いつものおづかいよりたくさんもらった。


 った。

 おづかいをって、おやおもちゃやアイスやラムネをいっぱいった。

 いつもべてるおはなかったけど、やすくてしそうなおがいっぱいあったからいっぱいった。


 みつでおべた。

 かぶうえでベーゴマをした。

 したでしゃぼんだまいた。

 えんがわでラムネをんだ。




 もりけっこうおくまでたんけんした。

 かえってくるころにはよるになっていた。

 かいちゅうでんとうってきていないからくらだった。


 フクロウのごえでもっとこわくなった。

 こんなかぎってほしが1つもない。


 田舎いなかよるかいよりすずしい。

 いままでもすずしかった。

 でもこのすずしさは、おばけがるからすずしいのだとしかおもえなかった。

 うしろにはなにないのに、だれかついてきてるんじゃないかとひやひやした。


 ないかいかえった。

 でもやっぱりなになかった。

 それでもこわかった。


 おとうとこわくなっていた。

 でもわたしはくのをまんした。

 のおねえちゃんだから。


 おねえちゃんのかおむしんできて、おねえちゃんはいた。

 わたしもきたかった。

 でもまんした。


 おじいちゃんがむかえにきてくれた。

 すっごくおこられた。


 わたしはあんしんしていた。

 たぶんわたしが1ばんいたとおもう。




 おばあちゃんのところは、田舎いなかすぎてなつまつりがない。

 わたしたちはちょっとしょんぼりしていた。


 おねえちゃんは浴衣ゆかたたがった。

 わたしはわたあめをべたがった。

 おとうとしゃてきをやりたがった。

 でもしょうがないからまんした。


 おじいちゃんとおとうさんが、くらからたいとかふえとかのがっそとしていた。

 おばあちゃんとおかあさんが、だいどころきそばとかからあげとかつくっていた。

 ときどきどこかにでんしていた。


 その大人おとなたちはこそこそしていた。

 おばあちゃんでさえもこそこそしていた。


 わたしたちはいつもどおりそとあそびにった。

 すいとうとおにぎりをたされた。

 すいとうなかむぎちゃで、おにぎりはしおむすびだった。

 今日きょうのおひるはんらしい。

 かえってきちゃダメなのかな。


 わたしたちはみんなでべたかったけど、でも大人おとなたちはみんないそがしそうだからまんした。


 かたがないからみつべた。

 なんだかピクニックみたいでたのしかった。



 ゆうがたになって、いつものかえかんになった。

 今日きょうかえっていいのかまよったけど、でもかえらないとしんぱいかけちゃうからかえった。


 いえいた。

 いえなかはどこもかりがいていない。


 おかあさんがげんかんからてきた。

 くられていかれた。

 なにわるいことしちゃったかなとあんになった。


 くらなかだけでんいていた。

 なかにおばあちゃんがた。

 かがみれい浴衣ゆかたがかけられていた。


 わたしたちはくらなか浴衣ゆかたえた。

 おばあちゃんとおかあさんがえさせてくれた。


 おねえちゃんはうれしそうだった。

 わたしとおとうとあつかった。


 くらからると、いえなかでんいていた。

 げんかんけた。


 おじいちゃんとおとうさんがハッピをむかえてくれた。

 おとうさんからおめんもらった。

 だんボールにいっしきって、たこいととおしただけのかんたんなものだった。


 それぞれがおみせになっていた。

 おばあちゃんのいえひろいからおおい。

 だからおみせおおかった。


 しつはだいたいものさんだった。

 きそばさんにけば、おじいちゃんがきそばをつくってくれた。


 わたあめさんにけば、おかあさんがわたあめをつくってくれた。

 すごくしい。

 わざわざわたあめりてきたらしい。

 わたあめってりれるんだ。

 はじめてった。


 きそば、からあげ、やきとり、りんごあめ、ほかにもいっぱいあった。

 たこきといかきもあった。

 うみなしけんなのに。



 にわながしそうめんをした。

 いつもべるそうめんよりもしかった。

 さすがにこんかいさいしょからめんつゆがはいっていた。


 もちろんたいものだけじゃなかった。

 ちゃんとおもちゃもあった。


 おにおもちゃのアヒルとスーパーボールがたくさんかんでいた。

 ほんものきんぎょようできなかったみたい。

 でもとてもたのしかった。


 おとうとははしゃぎすぎて、スーパーボールでしょうをぶちいてしまった。

 ボールはなくなった。

 おじいちゃんにしこたまおこられて、おとうといた。


 トイレにはクリスマスにかざるようなでんきゅうがいっぱいあった。

 すみっこにスピーカーがいてあって、そこからたいとかふえとかのがっえんそうされたきょくながれていた。


 しゃてきのおみせった。

 けいひんぜんっているものだった。

 おとうとじゅうって、たくさんてた。

 すごくうれしそうだった。

 スーパーボールのことはすっかりわすれているっぽかった。


 えんがわると、おじいちゃんとおとうさんがじょうはんしんはだかになって、おおきいたいまえでバチをってかまえていた。

 さっきまでたいなんていてなかったのに。

 そういえばいつのにか、おじいちゃんとおとうさんはなくなっていた。


 おじいちゃんが「そーれっ!」とうと、ドンドンたいらした。

 あとからおくれておとうさんもたいらした。


 こころそこれるようで、たいおとがとてもかっこよかった。

 それをたたいているおじいちゃんとおとうさんもかっこよかった。


 大人おとなたちは、わたしたちどものために、ないなつまつりをつくってくれた。


 とてもたのしかった。

 とてもうれしかった。




 8がつはじまってすぐ、わたしはおんどくにっがい宿しゅくだいぜんわらせた。

 としはアサガオのかんさつにっがなかった。


 おとうとはおじいちゃんにおしえてもらいながら宿しゅくだいをやっていたのをときどきた。

 おねえちゃんが宿しゅくだいをしているところをたことがなかった。


 そしてあんじょう、おねえちゃんはなつやすみがわる1しゅうかんまえに、わたしとおとうときついてきた。


 おねえちゃんは5ねんせい

 わたしは3ねんせい

 おとうとは2ねんせい


 5ねんせいはんをわたしたちがるわけがなかった。

 でもできるところはつだった。


 おとうとかんドリルをたんとうした。

 なぞってくだけだから2ねんせいでもできた。

 ちょっといびつだけど、でもおねえちゃんもたいがいきたないからべつたいしたことじゃなかった。


 わたしはゆうけんきゅうたんとうした。

 でもちゃんとぞうくのはおねえちゃん。

 わたしはけんきゅうをするだけ。


 えんぴつまるまる1ぽん使つかって、こくきょうしょにあるものがたりがどれくらいけるのかというけんきゅうをした。

 これはおねえちゃんがかんがえたのであって、わたしがこんなやるのないけんきゅうおもいついたんじゃない。


 だけどこれがなかなかにえらかった。

 わたしのどの宿しゅくだいよりもえらかった。

 はっきりって、なめてた。


 おねえちゃんのきょうしょはもちろん、わたしとおとうときょうしょ使つかった。

 たぶんきょうしょ使つかわないとおもっていたけど、ってきてよかった。


『ごんぎつね』と『だいぞうじいさんとガン』でけっこうかせげた。

『スイミー』とか『ちいちゃんのかげおくり』とか『サラダでげんき』とかちいさいはなしぜんんだ。


 わたしのノートがほぼぜんそれでまった。

 でもこれはおねえちゃんのきょうしょだけでいたほうがいいんじゃないかとあといたけど、もうかんがえないようにした。


 そんなことよりりっちゃんのサラダがべたくなった。


「ちゃんときゅうけいし」とおばあちゃんがむぎちゃれてくれた。

 ほんとうむぎちゃなのか、それともめんつゆなのかうたがった。

 おそるおそるんでみたら、つうむぎちゃだった。

 すごくあんしんした。


 ものがたりが1つわるごとに、けいえんぴつとノートのしゃしんる。

 これはおねえちゃんがかりやすくまとめられるようにとはいりょするため。

 いっぽう、わたしがおねえちゃんのわりにこんなにがんりましたよというせしめでもある。



 よるになってもなかなかわらなかった。

 あさの9にやって、よるの11にやっとわった。

 いつもだったらもうとっくにているかんだった。


 みぎくろになっていた。

 えんぴつがカッターでもけずれないくらいみじかくなった。

 くたびれて、わったとどうにすぐにた。

 とんいていない。


 でもあさきたらとんなかでわたしはてた。

 おかあさんがどうしてくれたとった。

 ありがとうとおれいった。

 うれしかった。


 おねえちゃんはきながらわたしにありがとうとおれいった。

 なぜかまったくうれしくなかった。


 わたしはつかれがまだれず、でゆっくりた。

 きたころにはもうゆうがたの4になっていた。

 テーブルのうえにはおにぎりとメモよういてあった。



『ごめんね。

 ほんとうにありがとう。

        



 ゆるしてあげた。

 おにぎりはしかった。



 わたしのラジオたいそうおんどくのカードにはいんかんとスタンプがたくさんされたけど、おねえちゃんとおとうとのカードにはなにされていない。

 とうぜんにっしろ


 2あわててなつやすぶんぜんのラジオたいそうをした。

 おじいちゃんはそれにわされてぎっくりごしになった。



 おねえちゃんはスケッチブックをペラペラめくりながら、なつやすちゅういたにっなかにまたいた。


 チラッとのぞいてみたら、

『8がつ)、れ、じんじゃいた。やっぱりわたしはじょう。しょうらいはマンガになるんだ。だってじょうだから。』

 みたいなことしかいてなかった。


しょうらい』ぐらいかんけよっておもった。

 じんじゃじょうなのはほんとうなのがくやしかった。

 おねえちゃんにとってにっじゃないっぽいのもくやしかった。


 おとうとなんにちなんようてんまったおぼえていなかったため、ほとんどがもうそうにっになっていた。

 でもさすがにづけよういっしょにしないとおこられるとおもったのか、カレンダーをかべからがしてにっいていた。


 おとうとのもチラッとのぞいてみたら、

『8がつ16にちもく)、れ、うみにった。2ばんのおねえちゃんがおよげなくておぼれた。おれがたすけてあげた。おれえらい。』

 みたいなことがかれていた。


 2ばんのおねえちゃんって、わたしのことだ。


 わたしはおとうとなかをぶった。

 おとうとはわたしのすねをぶった。

 わたしはおばあちゃんにきついた。

 おばあちゃんはおとうとしかってくれた。

 ざまあみろ。



 なつやすぶんぜんおんどくはおかあさんにしてもらっていた。

 おかあさんは8がつ10ごろからだんだんイライラしてきていた。

 もうすぐかみなりちるとさっして、わたしはおばあちゃんとおとうさんといっしょはたけのおつだいをした。

 つちまみれのかおかえってくると、おねえちゃんとおとうといていた。


 どちらのカードにも、ちゃんとなつやすぶんぜんいんかんとスタンプがされていた。





 わたしのにっも、もうぜんわった。

 明日あしたからまたがっこうはじまる。


 としなつやすみもいろいろあったけど、すごくたのしかった。

 らいねんもここにるのがたのしみ。


 もつぜんくるませて、おばあちゃんとおじいちゃんにった。

 くるまってもった。

 おばあちゃんのいええなくなるまで、つづけた。


 かえりもうるさかった。

 おねえちゃんはおかあさんとはなししててうるさかった。

 おとうとは3DSのおとでうるさかった。

 わたしはねむたいのにねむれなかった。


 でもくとていて、もういえいていた。

 おねえちゃんがこしてくれた。

 ほんとうはらった。



 いえれいぞうけた。

 スーパーでったつうのペットボトルのむぎちゃはいっていた。


 ふとおばあちゃんのむぎちゃみたくなった。

 おかあさんにやかんでむぎちゃつくってもらったけど、おばあちゃんのほうしかったがする。


 まあいっか。

 またらいねんおばあちゃんにつくってもらお。











 それから20ねんわたししゃかいじんになった。

 りょうけいかいしゃしゅうしょくし、20だいというわかさでちょうしょうかくした。


 だれわたしのことを「」とばなくなった。

さかぐちさん」、「ちょう」としかばなくなった。


 わたしじょうかれるたいしんじんになった。

 これでじんせいあんたいだとおもった。



 でもごくでしかなかった。



 そのかいしゃはとてもブラックだった。

 ねんじゅうごとぼうさつされていた。

 しゅどくしょろくにできなかった。


 1しゅうかんいえかえれなかったことなんてなんもある。

 にゅうしゃから今日きょうまでのかいしゃまりをしたにっすうぜんわせれば、4ねんぐらいかえれていないとおもう。

 それがきっかけで、どうせいしていたかれわかれをされた。



 それと。





 おばあちゃんとおじいちゃんがんだ。



 おばあちゃんのいえはいきょになった。



 はたけかんしゃなくなったからぜんれた。



 つぶれた。



 わたしたちのみつこわされていた。



 おとうさんはしょくぶつにんげんになり、おかあさんはカルトしゅうきょうはいった。


 わたしたちがどくりつしたあと、おとうさんはいんしゅうんてんをしていたくるまかれたのだ。

 さいわいにもいのちたすかったけど、のうじょうがあるようで、かれこれ5ねんましていない。


 それからおかねこころもなくなって、おかあさんはよわっていった。

 それはでんしでもすごくよくかった。


 そこをおかあさんはへんひとたちにつけまれ、おとうさんがいちにちでもはやめるようにと"かみさま"にいのるためにカルトしゅうきょうにゅうかいした。


 たしまえに、しゃっきんが2000まんあるってってた。

 それがけっこうまえのことだったから、いまはもっとあるとおもう。



 あねまんになった。

 おとうとはゲームがいしゃしゅうしょくした。

 でも2使つかものにならなかった。


 あねはノイローゼになった。

 1しゅうかんまずわずずのせいかつで、げんざいびょういんはこばれて2きていない。


 おとうとはうつびょうになってにゅういんしている。

 なにべられず、てもあさすいみんしかできず、だれともはなせなくなってしまった。



 わたしはみんなよりマシなだけ。

 まだうごける。


 だけどすいみんしょうがいになってしまった。

 いまくすりがないとねむれないからだになっている。


 おはいっているときかみがごっそりけた。

 たいじゅういっった。

 なにかをべてもすぐにすようになった。


 いっそおとうさんがんじゃったほうが、まだらくだったんじゃないかとおもってしまった。



 ごしているとき、とつぜんふとしたくなってしまうときがある。


 でもそんなのできない。


 みんなきたいくらいたいへんなんだから、わたしだけけない。

 ごとなんてえるわけがない。


 わたしまんしないといけない。


 ちょうだから。


 むかしちがって、たちせきにんもあるから。




 こんなとき、おばあちゃんがかしてくれたむぎちゃみたくなる。


 あのむぎ茶《ちゃ》をんで、ほっとひといききたくなる。





 かえりたい。





 かえりたい。





 むかしかえりたい。





 おばあちゃんのむぎちゃみたい。

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短編集 下横カルミア @shitayoko_kalmia

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