第一章 サンクチュアリのアルヴィエ男爵家①
──
精霊が支配する国、イスフェルク王国には重要な場所がふたつある。
ひとつは、王都サンク。
小高い
王都には、千年以上も前から精霊と人間の
精霊が支配するこの国で、
ふたつめの重要な場所は、辺境の町サンクチュアリ。
このサンクチュアリにも特別な家が存在した。
それが、この地の統治を任されている『アルヴィエ男爵家』である。
「ニネットー! お母様がおつかいに行ってきてほしいみたいなの。使用人の手がいっぱいで……。私はこれから家庭教師の先生が来る時間だし、
「もちろん! 私が行くわ」
「アレ、絶対わざとだぞ。初めからニネットに行かせるつもりだったんだろ? 大体、あの女がおつかいに行ったことなんてあるか?」
「またそんなこと言って。……ほらティル、
「……当然だろ」
(ふふっ。私の弟は口は悪いけれど、
「ニネット、ティル、それじゃあお願いねー!」
ティルの悪態が聞こえなかったらしいエッダは砂糖
それを
この生活をするようになってからはそろそろ三年。掃除も
初めは
十六年前、ニネット・アルヴィエはこの町の領主でもある、アルヴィエ男爵の長子として生まれた。
ニネットのゆるいウエーブを
けれど、その母親はニネットが五歳の時に
そこから一年も
三歳年下のエッダはニネットを実の姉のように
しかし、継母はそうはいかなかった。
ニネットの父親がいるところでは
それを幼いエッダが
家族の複雑な関係に気がつかない
それがティルだった。
(初めて会った時からティルはびっくりするほど
神秘的な銀色の髪に、深い青の
そして、ティルはいつの間にか自然とニネットの護衛として育てられることになった。
それだけではない。どういうことなのか、ニネットの父親はティルにたくさんの家庭教師をつけ英才教育を進めることにしたらしい。
そんな毎日を過ごすティルは、この家の
自分が跡継ぎのはずなのにティルの方が目をかけられて複雑な気持ちだったからではない。自分より三歳も年下の男の子なのに、どんなに勉強が大変でもちっとも弱音を吐かないことが不思議だったからだ。
まるでなにか特別な目標でもあるようにしか思えず、ニネットは何度も首を
あまりにも不思議で、何度か将来の夢を直接聞いてみたけれど、はぐらかされるばかりで教えてはくれなかった。
(ティルは運動神経も頭も要領もいいから、あのままだったらティルがアルヴィエ男爵家を継ぐことになっていたのかもしれない)
そんなことを考えることもある。
けれど、現実は
ニネットとティルの
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