断章

バケツリスト


・裕典とふたりでカラオケに行きたい


 カラオケは超がつくくらい好きだけど、思い返すと裕典とふたりで行ったことはないかもしれない。高校のときはそもそも付き合う前だし、ただの先輩後輩だった私たちがわざわざふたりでカラオケに行く機会なんてあるはずもないから、当然かもしれないけど。


 ふたりでカラオケ行けたら、採点つけて勝負して(多分私が勝つだろうけど、きっと裕典は乗ってくれるはず)、勝ったらひとつお願い聞いてもらうゲームとかしたり、みんながいる前だったら恥ずかしくてできないかもしれないけど、好きなラブソングをふたりでデュエットしたり、そんなことが、できたらいいな、なんて。


 もし、叶ったなら、裕典に何をお願いしようかな。


 →八月八日、リスト達成。デュエットはうまくいかなかったけど、それ以外は概ね叶えられたんじゃないかと思う。


・裕典とアニメをマラソン視聴する


 もともと私と裕典が意気投合したのは、互いの読書の趣味が偶然にも重なったからだった。そんな私たちが、放課後の図書当番を通じて仲を深めるのはある意味時間の問題だったかもしれない。

 だから、同じ作品を一緒に見て、ああでもないこうでもないとリアルタイムで言い合えるそんな時間が、あったらいいな、って。それが自宅だったら、人の目も気にせずに裕典とベタベタできるだろうし。


 好きな人の体温を肌で感じながら、側でひとつのアニメを見る。ささやかな希望かもしれない。けど、いつか、そんな希望が現実になることを、諦めたくはない。


 →八月八日、リスト達成。今日一日だけで、結構な数のリストを叶えられたと思う。裕典も終始楽しそうにしてくれていた。こういうふうにデートすること、なかったから、私にとっても、思い出に残る一日になった。


 きっと、忘れたくても、忘れられない時間になってしまうんだと思う。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る