最終話:水の出ない噴水。
「は〜い・・・洋太郎様がお帰りなったようです」
「私、すぐ玄関に迎えに行ってきます」
「ようやく帰ってきやがったか・・・バカ長男が・・・」
洋太郎を訪ねて客が来てるってことをメイドの安ちゃんから聞いたんだろう。
やつは、すぐに応接間までやって来た。
「警察が私に用とは、なにかね?」
「どうも・・警視庁殺人課の
「さっそくですが、西園寺 善右衛門さんが行方不明だとか、そうお聞きしまして」
「ああ、そのことですか?」
「そのことなら、もう捜索願を出してるはずですが・・・」
「行方不明なんかじゃなくて、あんたが殺したからだろ?」
公介はきなり洋太郎を殺人者よばわりした。
「なんだね、君は、いきなり・・・」
「無作法で申し訳ない・・・こいつらは私の部下でして・・・」
「それにしても失礼な、人を人殺しみたいに・・・」
「だいいち、なんで私が実の父親を殺さなくちゃいけないんだ」
「証拠でもあるのかね?」
その時だった。
「お坊っちゃな・・・お久しぶりです」
「・・・・・」
「あ・・・おまえは・・・元子・・・なんで?」
「私を壊してゴミ捨て場に捨てたはずなのに、なんでここにいるんだって
顔してますよ」
すかさず罵倒さんが言った。
「洋太郎さん・・・この子が全部見てんだよ、あんたが善右衛門さんの
首を絞めてるところをな」
「殺人現場を見られたあんたは元子の頭を後ろから鈍器で殴っただろ」
「だけどな、人間と違ってガイノイドの脳はちょっとやそっとじゃ破壊
できないんだよ」
「毎日世話になってるメイドにひどいことしやがって」
今度は公介がくってかかった。
「殺人の検証をしなくても、こんなにはっきりした目撃者がいるんだ」
「観念したらどうかね」
「ガイノイドの言うことなんか信用できるか・・・」
「いやいや、たとえガイノイドであったとしてもこの子の証言はちゃん
と生きてる・・・むしろ人間の記憶より確かだ」
「私、旦那様の肢体が埋められてるとこ分かるよ」
「まじで?・・・元子ちゃん、分かるの?」
「うん、分かるよ吉光・・・私のゴーストがそう囁くの」
「元子・・・おまえが記憶してるのはこいつが善右衛門さんを殺す
ところだけだろ?」
公介は確かめるように言った。
「公介・・・あのね、私がこのお屋敷にいた時、あのお庭の噴水、水が
出てたんだよ」
「今見たら出てないよね・・・西園寺家が水道代なんか節約すると思う?」
「たしかにな・・・じゃ〜」
「そう、たぶんだけど、旦那様の肢体はあの噴水のそばのどこかだね」
「肢体を埋める時、きっと水道の配管を壊しちゃった・・・」
「だから水道の元栓を止めてるから噴水から水が出てないんだよ」
「元子・・・おまえ、鋭いな」
「ってことらしいですが・・・そのへんどうなんですかね、洋太郎さん」
そう言って罵倒さんがダメ押しした。
「くそ〜完全に破壊しておけばよかった」
「バカ野郎・・・人間じゃねえなおまえ・・・このクズが」
「おまえみたいなやつが社会の上に立って偉そうにしてるなんて間違ってるよ」
「公介・・・こんな人に腹をたてるだけ損だよ」
「そういうことなので捜査令状とって改めて、お邪魔させていただきますので」
「どこにも行かないように・・・」
結局、西園寺家の庭の噴水の脇からビニールに包まれた善右衛門の肢体が
発見された。
そして洋太郎は実父殺害の容疑で逮捕された。
元子の記憶から事件は一件落着した。
「あれ?元子・・・なんでメイド服なんか着てんだ?」
「今回の事件の功労者は元子だから、なんでも買ってやるって罵倒さんが
言ったからメイド服買ってもらっちゃった」
「今更なんでメイド服なんか・・・」
「元子ちゃんよく似合ってるよ・・・やっぱ本物は違うな」
「ありがと、吉光」
「だから、なんでメイド服なんだよ」
「公介が西園寺家で安ちゃんに俺の事務所に来ないかなんて口説いてたから
「探偵事務所には、もうちゃんとメイドさんがいるんだよって分からせる
ためだよ、公介」
「もし、公介が看護師さんを口説こうとしたら私、看護師さんになるから」
「これに懲りて女に色目使うのはやめろってことだな、公介」
「バカ野郎・・・俺は、元子だけだよ・・・」
「そうだからな、元子・・・だからさ、ほら・・・チューしろ・・・チュー」
「チューしてください、でしょ?」
「なんでもして欲しかったらお願いしなくちゃ」
「いいよもう・・・それにしたって・・・メイド服って、まいったよな
・・・俺、我慢できそうにないし・・・」
「なにが我慢できないの?」
「その格好がだよ・・・そのメイド服着せたまま元子としたい・・・」
「だから、なにを?」
「エッチ・・・」
「もう、スケベ、変態!!」
おしまい。
メカとミステリーとガイノイドと・・・。 猫野 尻尾 @amanotenshi
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