第2話:目覚めたガイノイド。

公介は拾って来たガイノイドの体をさっそくチエックした。

体はどこも傷んでる箇所はないみたいだ。

だけど後頭部の一部が陥没かんぼつしていた。


「公介・・・どうだ?」


「おう、体は綺麗だけど、後頭部に損傷があるみたいだな」

「これってトンカチとかバールみたいな金属で殴られた後じゃないか?」

「ガイノイドの頭なんか素手じゃまずこんなに陥没しないだろ?」


「あ〜みたいだな・・・この子を捨てたオーナーがやったのかな?」


「だけど、よっぽどだぜ」

「つうことは、この子の脳を脳殻のうかくごと取っ替えたら直るかもな」

「俺、スクラップ工場に行って中古の脳が入った脳殻、買ってくるわ」


「入れ替えるつもりか?」


「それが一番てっとり早いだろ?・・・で、この子のデータだけ新しい脳に

移せばイケるだろ」

「そしたらこの子の記憶も人格も失われなくて済むからな」


「人じゃないのに人格って言い方はおかしかないか?」


「ガイノイドだってちゃんと生物として認知されてるんだぜ」

「一人って言わなきゃなんて言うんだよ、一体か?」

「俺はそんな言い方はしなくないな、メカ好きだけどな」


「俺はおまえほどガイノイドに執着はないからな・・・」


「まあ、いいわ・・・とにかく俺スクラップ工場まで行ってくるわ」


って訳で公介は近所の行きつけのスクラップ工場まで足を運んだ。

スクラップ工場にはアンドロイドやガイノイドの損傷してない中古の脳を脳殻ごと

保存在庫しているのだ。

公介はその在庫の中から拾ってきたガイノイドと同じ規格に合った脳殻を買って

帰った。


「ちょっと高くついたな・・・まあいいか」

「よ〜し、新しい脳だぞ〜・・・今、入れ替えてやるからな」


小一時間の作業でガイノイドの脳殻は入れ替えられた。

彼女は入れ替えられた新しい脳を認識するまで少し時間がかかった。


「大丈夫なのか?公介」


「慌てるなって、ダメなら拒否反応がでるから・・・」


「ほら、起動しろよ〜・・・」


「それにしても、おっぱいこんなにデカく作らなくてもいいのにな?」


「どこ観察してんだよ、吉光」


「そりゃおまえ、デカいほうが貧乳よりいいに決まってるだろ?」

「世間の男の大半は巨乳が好きって証拠だよ」

「人間と違ってガイノイドが売れるかどうかは男のスケベの度合いにかかってる

んだよ」


そんなことを言ってたらガイノイドがめでたく目を覚ました。


「お〜やったじゃん」

「公介・・・目覚めたぞ、この子・・・すげえ、すげえ」


目覚めたガイノイドは目を、ぱちくりさせて目をくるくる回した。

そして上半身だけ体を起こすと一番に公介と吉光を見た。


「こんにちは・・・」


「こんにちは、ガイノイドちゃん、調子どう?」


「私、どうなったんでしょう?」


「君は、ごみ捨て場に捨てられてたんだよ・・・覚えてないの?」


「今、脳のデータを再構築してますから、しばらく待ってくださいね」


「君、自分の名前くらい分からない?」


「名前は「元子もとこ」」

「元子」もとは元子げんしもとです」


「元子ちゃんね、俺、公介・・・こいつは吉光・・・よろしくね」


「よろしくお願いします、公介さん、吉光さん」


元子が直ってから一週間が経った。

元子は、脳にバグもなさそうだし普通に歩いて喋って特に問題はないようだった。

この分なら大丈夫だろうって公介は思った。


そして、元子は以前はどこかのメイドか家政婦をしていたのか家事が

ちゃんとできて公介と吉光のために料理を作ってくれるようになった。


「な、吉光・・・俺の言ったとおりだろ?重宝してるだろ、元子」


「本当だな、めっちゃ助かるな?」


「このまま俺たちと暮らしてくれたらいいんだけど、でもな〜」


「なんだよ、なんか問題でもあるのか?」


「元子がごみ捨て場に不法投棄されてたのが気になってな」

「この子を捨てるくらいの非情なやつだから探し出して元子を返すって気には

ならないけど・・・だけど、何かあるような気がするんだ」

「それにかなり固い元子の脳殻が陥没してたのも気になるしな・・・」


「まあそうだな、どう考えたってどこかに頭をぶつけたって様子じゃなさそう

だしな」


「吉光、事件の匂いがしないか?・・・」


「おまえ、なにかあるたび、そうやって事件の匂いがするするって・・・」

「はずれてる時のほうが多いじゃないかよ・・」


「いや、今度はまじで怪しい・・・」


つづく。




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