第3話:目撃者。

元子もとこは公介に拾われてから、ふたりにツラれてすぐにタメグチ

で話すようになった。

三人の生活も落ち着いたところで公介と吉光は元子になにがあったのか聞いて

みることにした。


「あのさ、元子」

「なにかあったんだよな?・・・なにがあったか聞かせてくれる?」


「うん、分かった」

「私ね、ちょっと前まで「西園寺家さいおんじけ」ってお屋敷で

旦那様に大切にしてもらって家政婦をしてたの」


「ああ、それで元子は料理が上手いんだ」


そう言ったのは吉光だった。


「でね、西園寺家の奥様はもうとっくに他界しちゃってて家族は旦那様と

長男と次女と次男、三人のお子さんがいて、あとは私とふたりの家政婦に

運転手のアンドロイドがひとり・・・」


「ある日、旦那様の体調が急に悪くなって精密検査を受けたらなにか難しい

名前の難病にかかちゃってて、その病気の患者数が少ないために完全な治療法

が見つからないまま自室で寝込んじゃったの」

「旦那様の看病は私とあと二人の家政婦がお世話することになって」


「それで旦那様は自分の病気と寿命を心配して全事業と全財産は次男に譲る

って兄妹の前で宣言しちゃったの」


「旦那様は次男さんが可愛くてご寵愛なさっていたからね」

「私から見ても次男さんはよくお出来になられて優秀なお方だったの」


「その点、長男さんと次女さんは少し性格的に問題があったかな」

「で、そのうち兄妹は旦那様の財産のことで揉めるようになっちゃって」


「人って欲深い生き物だよな、とくに金持ちはな」


公介は金持ちに偏見を持っていた。


「でね、その日私は旦那様のお世話をしあと自分の部屋に戻ろうとして

長男さん・・・長男さんの名前は「洋太郎」」さんって言うんだけど

その洋太郎さんと廊下ですれ違って・・・洋太郎さんが旦那様の部屋に

入って行くところを見ちゃったの・・・」


しばらく様子を伺ってたら旦那様の怒鳴る声が聞こえてきて、ふたりは

なにか揉めてるみたいだった」

「あまりに激しく揉めてるもんだから私、旦那様の部屋に様子を見に入ったの」


「そしたら洋太郎さんが旦那様の首に何か巻きつけて首を絞めてたの」

「洋太郎さんは私を見て驚いて旦那様から離れたから、だから私すぐに旦那様の

ところに駆け寄って様子を伺ったら旦那様はすでに息をしてなくて・・・」


「私は洋太郎さんのほうに振り向こうとしたんだけど・・・そこまでしか

覚えてなくて・・・」

「・・・で気がついたら公介と吉光の前にいたの」

「以上だよ」


「なにそれ?・・・以上だよ、じゃなくてそれマズいじゃん」

「その西園寺っておっさん、長男に殺されたってことだろ?」

「長男はその現場をモロに元子に見られたわけだ」

「元子はそれが原因で長男に何か硬いもので後頭部を殴られたんだ」

「証拠を隠滅するためにさ・・・」


「で、元子が壊れたと思った長男がゴミ箱の前に元子を不法投棄したんだ」


「全部、長男のしわさか・・・ひどいことするやつだな洋太郎ってやつは」


吉光が言った。


「そんな話、聞いちゃったら見て見ぬ振りできねえよな」

「元子の敵討ちもしなきゃ・・・」

「さてどうすっかな・・・」


「俺たちがいきなり西園寺家に乗り込んだって門前払いがオチだよ」

「どころか不法侵入で訴えられるよ、公介」


「だな・・・じゃ〜ま、とりあえず・・・」

「警察に行くか・・・馬頭ばとう刑事部長に会うのも久しぶりだよな」


「つうか・・・元子・・・おっぱいデカいな・・・」


「公介のスケベ」


つづく。





  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る