メカとミステリーとガイノイドと・・・。

猫野 尻尾

第1話:不法投棄されたガイノイド。

郊外の一角に築50年の古ぼけたテナントビルの二階に高校生の仲良し、

ふたりが探偵事務所を営んでいた。


ひとりはメカ好きの「都草 公介とぐさ こうすけ

もうひとりはミステリーオタクの「石河 吉光いしかわ よしみつ


公介と吉光は小学生の時から馬があって、それからずっと一緒に遊んできた。

ふたりとも他の同級生とはあまり馴染めない生徒だった。

まあ、協調性に欠けてる部分があるのはいなめない。


ふたりは中学を卒業すると自分たちの夢を叶えるため、お互いの家を出た。

ふたりの目指す夢は探偵になること・・・今時ハードボイルドに憧れていた。

そして郊外の一角に探偵事務所を構えた。


探偵をやってることはもちろん学校には内緒。

まあ、もし学校にバレても高校を中退してもいいと思っていた。


吉光の家はお金持ちだったから親からの多少の援助が見込まれたため

仕事がない時は仕送りとバイトだけで、なんとか生活ができていた。

バイトで稼いだ金も多少は溜まっていた。

さて探偵事務所は開いたけど、そんなに最初っから依頼が来るわけじゃない。


だから今は普通に学校に行ってバイトに明け暮れる毎日だった。

今のところ行方不明になった犬や猫の捜索とか、庭の手入れとか、お年寄りの

話相手とか、そんな仕事ばかりだった。


そんなある日、公介はバイトの帰り道、一般地区のゴミ捨て場に捨てられて

いたガイノイドを見つけた。

可哀想に服も脱がされた状態で裸で捨てられていた。


※ちなみに人間を模して造られたヒューマノイド「人造人間」は男性型を

アンドロイドと呼び、女性型はガイノイドと呼ばれた。


捨てられていたのはガイノイド・・・つまり女の子。

もし、アンドロイドだったら公介はそのまま素通りしてただろう。

男なんかには興味がないからね。


他のゴミは回収されたみたいだけど、収集車はそのガイノイドだけ持って

行かなかったみたいだ。


「そりゃそうだよな、一般ゴミにガイノイドを廃棄したって持ってって

くれるわけないだろ・・・完全に不法投棄じゃん」


公介は、ふと思いついてその捨てられてるガイノイドを持って帰ろうと思った。

で、事務所に帰るとバイトから帰ってきていた吉光を連れてガイノイドを

回収に行くことした。


「吉光・・・いい物見つけたぞ?」


「いい物って?」


「不法投棄されたガイノイドだよ」


「それ、ぶっ壊れてるから捨てられてるんだろ?」

「そうやってなんでも拾って来てたらガラクタが増えるだけじゃん」


「直すんだよ・・・直ったら、絶対重宝するから・・・」

「女の子だから飯作ってもらったり掃除に洗濯、家事全般やってもらえるぞ」


「万が一にも直ったらな・・・」


「俺を過小評価してんじゃねえよ・・・絶対、直す!!」


ってことで公介はガイノイドを運ぶのに自分ひとりじゃ無理だからと吉光に

手伝ってくれるよう頼んで、途中で近所の建築会社で一輪車を借りて捨て

られてるガイノイドの回収に向かった。


「光吉・・・あれ・・・見かけは痛んでないからイケると思うんだ」


「お〜案外、可愛いじゃん」


「そりゃ、ガイノイドはみんな可愛いよ・・・人間の可愛い子を模倣して

作ってんだからブスなガイノイドなんて聞いたことないし、いてもそんなの

誰が買うんだよ?・・・アイドルでも可愛いが基本だろ?・・・」


「公介、めっけもんかもな・・・ガイノイドなんて普通高くて買えないだろ?」


「この子は捨ててあるんだからタダだよ・・・持って帰っても誰も文句いう

ヤツなんかいないし・・・返せって言って来ても返さないからな」

「なんでも一度手放しちゃったらもうそいつには所有権ないから・・・」


「吉光・・・俺、頭持つから、お前、足な・・・」


「ほい・・・」


ガイノイドの太ももを抱えた吉光・・・目が一箇所に集中していた。


「おい、なに見てんだよ」


「いや・・・俺、はじめて見たけどガイノイドでもちゃんとなってるんだな

って思って?」


「なにが?、なにがちゃんとなってるって?」


「アソコ・・・女の子の大事なとこ」


「そんなのあたりまえだろ?・・・なところに釘付けになってないで、ちゃん

と足持って一輪車に乗せるの手伝え・・・スケベが」


で、公介と吉光は捨てられたガイノイドを一輪車に乗せてコケそうに

なりながら事務所に持って帰った。


服を脱がされた状態のガイノイド、顔も体もあちこち汚れていたから

公介はその子を綺麗に洗ってやった。


「ほい、綺麗になったぞ、洗ったらまじ可愛いじゃん・・こんな可愛い子

直しもせず壊れた家電みたいに無造作に捨てやがって・・・可哀想に」


「さ〜て、じゃ〜直してやるからな」


メカに詳しい公介・・・しばらくバイトを休んでガイノイドの修理をはじめた。


つづく。







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