第2話

入学式も終わり、1週間、、皆が探りながら、話が合いそうなやつを探し出し始め、部活をするやつらは、入部手続きを済ませ始めた。俺は、、半月前に、鈴ちゃんに話した通り、、“帰宅部”を選択している。苦渋の決断ではあったが。。親父は、俺には、何も言ってこないが、内心、ほっとしているんだろう、な。傍から見ても、表情が和らいでいる。とは言っても、親父の“和らぐ”表情は、世間一般で言ったら、硬直しているうちに入るんだろう、な。昔から、子供心に感じていた、、親父のいつも強張った顔、顔、顔、、きっと、いつも、誰かに見られていないか、、それは、自分と同じ顔を持つ男ではないとかと緊張しながら、生きてきたんだろうな。


1.


 田中正人は、K高1年3組で、高校生活をスタートさせた。クラスの中に知り合いは、ただ一人。元砂田中学野球部の金子和弘だ。元砂田中学野球部からK高に進学したのは、金子と古賀、、そして、正人の3人だ。金子は、野球部に入ることを既に決めていた。


(キンコンカンコン、キンコンカンコン)

「あー、、やっと、終わった!6限、物理、マジ無理!おい、正人、俺、野球部の入部手続きしに行くから、お前も一緒に来いよ!」

和弘が大きな声で、正人を誘った。

「・・・いや、俺は、、行かない。」

正人は、素っ気なく答えた。

「何で、だよ!中学じゃあ、一緒に、野球部だったじゃねぇか。今年から、K高野球部はあの伝説の古賀さんが監督だ。息子の健司もK高だし、俺、超ラッキーって思ってんだ。古賀さんについて行ったら、もしかしたら、夢の甲子園にも出られたりして、って。。お前だって、甲子園、出たいだろ?」

和弘が語気を強めて、正人に詰め寄った。

「いや、俺は、、」

「そんなこと、言うなよ。お前、中学のときは、肝心の試合ってときになるといつも家の用とか何とかで、結局、1試合も投げてないけど、いつも、健司と俺で話してたんだぜ、中学で対戦した投手の中で、お前以上のやつはいなかったって。。だから、お前となら、、さ、、」

「悪いな、和弘。俺、帰るから、、」

「おい、ちょっと、待てよ、正人!」

正人は、和弘を振り返ることなく、教室を後にした。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 K高の正面玄関前に、1人の少年が佇んでいる。K高の制服を着ているが、その体躯は、大学生と言ってもおかしくないほどだ。少年は、出口をじっと見つめている。

(来た!)

「おい、正人、ちょっと、付き合えよ!」

「何だ?あぁ、、健司か。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「お前、何で、野球部、入んないんだよ!」

健司が正人にのっけから喧嘩腰で詰め寄った。

「・・・野球は、、中学までだ。。」

正人は、視線を下に向けて、答えた。

「中学までって、、中学でだって、何の大会にも出てないじゃあないか。お前、他の部活、、すんのか?」

健司が正人に詰め寄った。

「・・いや、俺は、帰宅部さ。。」

 正人は、素っ気なく答えた。

「俺は、何人もの投手のボールを受けてきた。その中で、やっぱ、1番いいボールを投げていたのはお前だ。お前となら、このK高で、甲子園を目指せる、、そう思ってるんだ。K高史上、2度目の、な。なぁ、1回目の甲子園出場、、今から33年前、、俺の親父がK高野球部主将のときだ。知ってんだろ、俺の親父のこと。」

「あぁ、古賀竜司、、元K高野球部主将でキャッチャー、、甲子園準優勝。。その後、慶明大学に進学。。その後、慶明大学付属高校志木野球部のコーチ、監督を歴任し、慶明志木を甲子園常連校に育て上げた。50歳を機に、母校K高野球部の監督に就任。。K市内であれだけ大騒ぎをすれば、俺でも、そらんじられる。。」

 正人は、健司の視線を避けるように答えた。

「俺の親父の夢は、母校での甲子園初優勝だ。だから、俺もK高に進学することにしたんだ。お前もK高に進学するって聞いてたんで、な。なのに、待てど、暮らせ、ど、肝心のお前が野球部に入ってこない。。どういうことだよ。。」

 健司が正人の顔を凝視して詰め寄った。

「健司の夢も健司の親父さんの夢も、分からんわけじゃあないが、俺を巻き込むな。俺には俺の事情がある。」

 正人が健司の視線を振り切って答えた。

「そんなこと言わないで、一度、練習、見て行けよ。おい!正人って、、」

「すまないな、健司。。俺は、、野球は、、辞めたんだよ。。」

正人は、健司の視線から逃れるようにして、帰宅の途に着いた。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・


健司を振り切った正人が自宅に向けて歩いていた。その正人を1人の少女が追いかけてきた。

「ちょっと、正人君!待ちなさいよ!」

「え?あぁ、美緒ちゃんか。。何?」

「何、じゃあないでしょ!今、健司君から聞いた。正人、何で、野球部入んないのよ!」

 美緒が語気を強めて話し掛けた。

「・・・俺は、、野球は、、辞めたんだよ。。」

 正人は、静かに答えた。

「何で?中学のときは、健司君と2人で、K高で甲子園を目指すって盛り上がっていたじゃない!私もマネージャーで甲子園、って思っていたのに!」

美緒が更に語気を強めて正人を問い詰めた。

「すまない。。そう、もいかなくなったんだ。。」

 正人は、俯きながら答えた。

「・・・そう、もいかないって、、正人、病気にでも掛かったっていうの?それとも、、ご家族に何かあったとか?」

 美緒が心配そうに正人の顔を伺った。

「・・・うーん、、病気、、じゃあない、な、、家族に何か、、か、、今は、、ない、、かな。。」

 正人は淡々と話した。

「もう、何、言ってるのか分かんないわよ。ねぇ、ほんとに野球、辞めちゃうわけ。。」

 美緒があきれ顔で話した。

「野球、、ね、、まぁ、、部活は、、ないな、、試合も、な。。美緒ちゃん、ごめん、この後、予定があるんだ。」

 正人は、静かに美緒に背を向けて歩き出した。


2.


 公園ってところは、不思議な場所だ。施設面では何も変わらないのに、曜日と時間帯によって、集まってくる人たちが全く違う。例えば、平日の朝、、天気が良ければ、公園のベンチは高齢の方が座って、気持ち良さそうに、日向ぼっこをしている。その周りを年の頃、2、3歳の子供たちが母親と一緒に遊んでいる。平日の午後になると、近所の小学生たちがワイワイと騒いでいる。休日の午後には、小さな子供とその両親が楽しそうに遊んでいたりする。

 そんな公園の平日の午後、、、公園ではあまり見掛けることがない年頃の少年がいる。ここ、K市第1公園には、市民のスポーツ振興を目的に、大きなボードが設置されている。そこには、サッカーゴールサイズの枠と野球のストライクゾーンサイズの枠がペイントされている。少年は、野球のストライクゾーンサイズの枠に向けて、何球も何球もボールを投げている。まるで、空想の中の打者と対戦しているように、真剣に、丹念に、1球、1球、投げている。


(シュ、バーン、、コロコロ。。シュ、バーン、コロコロ。。)

 古賀竜司は、勤め先のK高の野球部の練習を終え、家路についている。練習といっても、まだ、4月。この4月からK高野球部の監督になった竜司にしてみれば、野球部員たちと軽く挨拶を交わす程度の練習だ。竜司は、自転車で、K街道沿いを南に向かっている。

(シュ、バーン、、コロコロ。。シュ、バーン、コロコロ。。)

「ん?」

竜司は、音のする公園の中に視線を走らせる。竜司がこれまで何度も聞いてきた音、、ピッチャーがボールを指先から放つときの心地よい音、、しかし、、これほどの心地よい音を出せるピッチャーはそう多くない。。竜司は、公園脇に自転車を止めて、公園の大きなボードに向かって、ボールを投げ込む少年に近づいて行った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「君、どこの学生さんだね?」

 竜司が少年に話し掛けた。

「え?」

少年は、驚いて、声の方向に振り返った。

「あぁ、すまなかったな、突然、声を掛けてしまって。。私は、古賀っていうんだ。K高野球部の監督をこの4月からしていてね。この公園の傍を歩いていたら、君を見掛けたんで、ね。。君、いい球、放っていたから。。」

 少年が表情を和らげた。

「あぁ、古賀監督ですか。。初めまして、田中、田中正人です。息子さんの健司君とは、中学の時に、一緒に、野球をしていました。」

竜司が目を見開いて、正人に話し掛けた。

「た、田中、、もしかして、君のお父さんは、田中誠也さん、、かね?」

「えぇ、そうですけど。。それが何か?」

竜司は、感慨深げに、言葉を繋げた。

「私は、君のお父さんと一緒に野球をしていたことがあるんだ。中学の頃までだが、ね。」

「そうだったんですね。親父が野球をしていたなんて、、知りませんでした。。」

 正人が驚いたように話した。

「で、君はどこの学生さんなんだい?」

「健司君と同じK高です。」

「そうか、そうか。そりゃあいい。。でも、まだ、野球部の1年生に田中の名前はなかったが、な。」

 竜司が新入部員の名簿を思い出しながら、訝し気に話した。

「俺は、野球部には入りませんので。。」

 正人は、寂しそうに答えた。

「でも、こうやって、練習はしている?」

「・・・趣味です。。身体が鈍ってもいけないんで。。」

「そうか、、君は、、健司が中学のときに言っていた、、一度も試合に出たことがない、最高の投手、、だな。」

 竜司が確信を持って言った。

「最高の投手かどうかは知りませんけど、一度も試合に出たことがない、、は事実です。」

 正人は、力なく答えた。

「・・・なぁ、何で、野球、続けないんだ?」

 竜司が優しく問いかけた。

「・・・あぁ、、それ程、野球に執着していないんで。。」

正人は、うつむき加減で、小さな声で答えた。

「・・・そうか、、、そうも見えなかったけどな、投げているときの顔は。。」

 竜司は、訝し気に話した。

「・・・すみません、俺、帰るんで、、もう、いいですか?」

正人は、力なく答えた。

「・・・あぁ、すまなかったな。練習の邪魔をしてしまって。」

「・・・それは、、大丈夫です。単なる趣味、、なんで。。」

 竜司は、正人の後ろ姿を追った。正人が視界から消えてなくなるまで、ずっと、、追い続けた。


3.


 K市第一公園から南に下ること、800メートル、、左手に曲がると肩を寄せ合うように建っている1軒家が2棟。右の家には、山田という表札。そして、左の家には、田中という表札。男は、暫く、躊躇した後、意を決して、田中と書かれた表札のある家のインターフォンに手を掛ける。


(ピンポーン)

「・・・はい、どちら様ですか?」

 小さな声で応答があった。まるで、来客自体をできればなかったものとしたいかのような、か細い声だった。

「私、古賀と申します。ご主人とは随分前になりますが、交流がありまして。この4月から、この近くで仕事をすることになりまして、久し振りに、ご挨拶に上がりました。」

「・・・・・・・・・・」

「・・・誠也、いるんだろ?俺だ、古賀竜司だ。頼むから、話をさせてくれ。長い時間は取らさんよ。」

(ギー)

「・・・竜司、、、久し振り、、だな。。」

眉間に皺を寄せた、苦し気な表情の誠也がドア越しに顔を見せた。

「・・・誠也。。久し振りだ。。高校卒業以来だから、、33年振りか。。。元気にしてたか?」

 竜司が静かに話し掛けた。

「・・・あぁ、ぼちぼち、、な。。まぁ、立ち話もなんだから、、中、入れよ。」

 誠也は、迷惑な表情を隠しもせずに言った。

「あぁ、ありがとう。これ、つまらんもんだが、、皆で、食べてくれ。」

「・・・気を遣うなよ。。まぁ、ありがたく頂くが。。」

「・・・・・・・・」

「・・・で、突然に、、何の用なんだ。。」

 誠也が小さな声で聞いた。

「・・・先日な、、そこの公園で、、息子さん、、正人君に会ったよ。」

 竜司が穏やかな表情で話し始めた。

「・・・正人に、、公園で?」

「正人君、公園で何をしていたと思うよ?」

「さぁな。。」

「投球練習だよ。。1人きりで、な。。」

「正人が、、」

 誠也の目が少しだけ動いた。隠し続けてきた心の動揺がそのとき、少しだけ、垣間見られた。

「なぁ、誠也。。正人君にも、野球、諦めさせるのか?」

「・・・・・・・」

「36年前、、誠也、誠也が15歳のとき、お前は天才だった。。俺は、キャッチャーとして、多くの投手の球を受けてきた。あのときから今まで、な。でも、俺の生涯の中で、最高の球は、誠也、お前の球だ。今でも、な。」

「・・・褒められて、嫌ではないが、な。大人になるにつれ、天才でなくなる子供なんて、ざら、、だろ。そういうの、消えた天才っていうんだろ、テレビでは。。」

「お前は、消えた天才じゃあないよ。自らの意思で消えることにした天才だ。。お前が自ら消えた理由は、分からんよ。分からんが、お前、正人君にまで、同じ想いをさせるのか?お前、消えちまって、後悔したことはないのか?・・・なぁ、黒沢清司、、覚えてる、、だろ?」

「・・・あぁ、K高甲子園準優勝のときのエース、、その後、東京メッツからドラフト1位指名され入団するも、右肩の故障が治らず、5年後に、自殺。。悲運のエース、、竜司、お前と黒沢清司は、K高でのバッテリー。。当時、あれだけ大騒ぎすれば、野球に興味がない俺でもそらんじられる。」

「・・・あのとき、K市には、2人の天才ピッチャーがいた。。一人は、黒沢清司、、そして、、もう一人は、田中誠也、、お前だ。。俺は、今でも、お前が、K高で野球をしていたら、K高の甲子園初出場、初優勝だったと、、思ってる、よ。。」

「・・・で、清司が肩を壊ししたのは、俺のせいだとでも、、言いたいのか?」

 誠也が語気を強めて言った。

「そんなことは、俺は言ってない。。清司の身体の変調に気付かなかったのは、俺の落ち度だ。今更、何を言っても、何にもなりゃしないが、俺の生涯最大の落ち度、、だよ。俺が言いたいのはそんなことじゃあない。。・・・清司は、1年の夏からK高のエースだった。。当時の監督は、背番号1をあいつに託そうとしたんだ。・・・でもな、あいつ、高校3年間、一度も、背番号1に袖を通そうとしなかった。。なぜだと思うよ。」

「・・・さぁ、、な。。」

「・・・K高のエースナンバー“1”を付けるのは、俺じゃない、田中誠也だと言って、断り続けたんだ。なぁ、誠也、俺に、正人君を預けてくれ。K高のエースナンバー“1”を付けさせてくれよ!」

 竜司が強い言葉で誠也に語り掛けた。

「・・・・・竜司、、話はそれだけか。。それだけなら、、悪いな、、話すことは、、ない、、帰ってくれないか。。」

誠也は、いつものような苦し気な表情で言った。その表情からは、さきほど垣間見られた心の動揺は消え去っていた。

「・・・誠也。。」


4.


 K街道沿い、K市第1公園から北に500メートルの場所のボーリング場ほどの敷地の緑色の店舗が早坂スポーツセンターだ。元々は、正に、ボーリング場だった場所だ。時代の趨勢ともに、ボーリング場は、ディスカウントストアになり、15年前から、この土地と建物の所有者の息子である、早坂宏がスポーツセンターを開業している。この店の売りは、スポーツ用品を売るだけではなく、店舗内で体験もできることだ。野球であれば、バッティングセンターがあるばかりではなく、ブルペンもある。K市は、地域のスポーツ振興に力を入れており、K市には独立リーグ、社会人、大学の野球部がある。このスポーツセンターは、彼らの恰好の練習場所になっている。


「いらっしゃいませ。あぁ、監督!ご無沙汰しています!」

 店主の早坂宏が大きな声で竜司に挨拶をした。

「宏、久し振りだな。元気か?」

「お陰様で。監督に野球を教えて頂いたお陰で、K市でスポーツセンターやらせてもらっているようなもんですから。。」

「そんなこともないだろ、、」

「いや、俺は、古賀先輩の後ろ姿を追って、慶明行って、その後、家の商売をスポーツセンターに替えて、15年。。古賀先輩に、地元の独立リーグやら、社会人やら、大学やらの選手を紹介してもらって、今があるんですから。。で、今日は、なんのご用です?」

「・・・宏、お前に頼みがあって、、な。。」

 竜司が内緒話をするかの如く声を潜めて話し始めた。

「何です?頼みって?」

 宏は、訝し気に、聞き返した。

「すぐそこに、公園、あるだろ。」

「えぇ、K市第1公園でしょ。」

「そう、、、そこでな、高校生が1人で投球練習しているんだ。」

「1人で?なんでまた1人?部活は?」

「・・・事情は分からんが、部活には入っていない。。でもな、、お前も一度見てみれば分かるが、いい球筋、なんだ。お前、うまく、ここで練習させるように誘導してやってくれないか。金が掛かるなら言ってくれ。俺が払うから。。」

「・・・そりゃあ、古賀監督の頼み事を断ることなんてこと、できませんけど、、ね。」

「・・・でな、その子には、俺の名前は出さないで欲しいんだ。」

「・・・何か、足長叔父さんみたいな話ですね。。分かりました。今日にも、見に行きますよ。いつ頃なんです?いるの?」

「午後4時から6時ぐらい、なんだろうな。。」 


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 宏は、店を抜け出して、近くのK市第1公園に向かった。古賀に頼まれた少年とやらに会うために。K市第1公園までは、歩いて3分ほどの距離だ。

(シュ、バーン、、コロコロ。。シュ、バーン、コロコロ。。)

(うーん。。監督が肩入れしたくなる気持ち、、分かるわ。。いい球だ。。)

「おい、君。。」

 宏が大きな声で少年に声を掛けた。

「はい?」

正人が驚いて振り返る。

「1人で練習か?」

「・・・・・・・」

「なぁ、ピッチャーって、のは、マウンドから投げるんじゃないか?」

「・・・・・・・」

「よかったら、俺の店で、練習、、しないか?」

「店?」

 正人が不思議そうに聞いた。

「俺の店って、のは、な、スポーツセンターさ。俺、野球、やっていたから、俺の店には、なんと、ブルペンがある。地元の独立リーグやら、社会人のチームやら学生たちが使っている。雨でもできる施設だから、な。そこ、使えよ。」

「・・・俺、金、ないから。。」

 正人は、ぶっきらぼうに答えた。

「金?そんなもんいらねぇよ。。地元のスポーツ振興、、それも俺のスポーツセンターの役割さ。あぁ、挨拶してなかったな。俺は、早坂宏、早坂スポーツセンターってとこのオーナーだ。お前は?」

「・・・田中正人。。K高の1年です。」

「よっしゃ!正人、、これからうちに来いよ。すぐそこなんだ!」

 宏は、正人をまるで追い立てるかのように、公園から自分の店に連れて行った。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「どうよ、このブルペン。。投げ易そう、、だろ?」

 宏が自信満々に話し掛けた。

「あ、えぇ。。でも、本当に使わせてもらっていいんですか?」

 正人は少し嬉しそうに答えた。

「もちろん。」

「キャッチャー、俺にでも、うちのバイト連中にでも、声掛けてくれよ。うちのバイト、大抵、野球経験者だから。。投げてみないか?今日は、俺がキャッチャーするよ。俺、元K高野球部キャッチャーだから。。今、準備するからな。。」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


(シュ、パシン。。シュ、パシン。。)

「よし!いい球だ!」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


「・・・あの、、、ありがとうございました。俺、この後、少し走ってきます。」

 正人が嬉しそうに言った。

「ああ、明日も、、来いよな。。待っているぜ。」

 宏も嬉しそうに言った。

「あ、は、はい。。ありがとうございます。。」


////////////////////


美音がいつものモスで、光輝を待っている。

「美音、ごめん、遅くなった。」

「光輝の遅刻はいつものことよ。で、どうだったの?U倶楽部の件は?」

「もちろん、合格さ。これからは、倶楽部と部活の掛け持ちだよ。」

光輝は、誇らしげに答える。

「ほんと、羨ましわ。。光輝に掛かるとなに事も簡単に達成しちゃうんだもん。そのうち、パリに戻っちゃたりしてね。」

 美音は、嬉しそうに光輝を見つめながら話した。

「まぁ、パリになるのか、スペインなのか、、俺は、スペインがいいんだけどな。」

 光輝は、外の景色を眺めながら答えた。まるで、その空が、スペインに繋がっているかのように。

「光輝なら、希望通りのチームから声が掛かるわよ、きっと。。」


////////////////////


<C国ミサイル発射操作室>

「チフン、もしも、俺たちが、東京にミサイル打ち込んだら、どうなると思うよ。」

「だからさ、ソンホ。止めてくれよ、そういう物騒な話は。。」

「単なる思考実験、、だろ。」

「え、、あぁ、思考実験、、ね。。まあ、日米安保条約ってやつがあるから、米国がうちの国を攻撃すんだろ。」

「・・・俺は、、それはないと思うね、、何たって、うちには、米国本土に届く、核ミサイルがある。その上、中国の後ろ盾もある。日本如きのことで、米国がうちの国を攻撃したら、それこそ、中米が主役の第3次世界対戦、、だぜ。。そんな度胸が、今の米国にあるもんか。」

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