新しい日常 その2

 午前十時の少し前、私は学校に到着した。教室の場所はわかっていたし、十時という時刻が遅刻なのもわかっていた。

 好奇心に任せて行動していたら、時間を過ぎてしまった。お陰でいくつかの確認もできたわけだが。

 そして、今日は遅刻を咎められるはずはないという確信があった。私には退院したてというアドバンテージがある。同情から有耶無耶になるだろう。

 案の定、私が教室に入ると、クラスメイトは騒然とし、教師は同情の言葉をかけた。

 私は礼儀正しく接すると、自分の席についた。右の一番奥、後ろから二番目の席に。

 私が席に着くと、後ろの席の関根が耳元で囁いた。

「イルマちゃん。来てくれてよかった。退屈で死にそうだったんだ」関根の粘っこい声が耳にこべりつく。

 私の隣、そして前の席に座る、浦山と山越が品のない顔で笑った。

「昼休み、いつものところに来いよ」

 私は黙って頷くと、身体を震わせた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る